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前回は隈研吾氏の展覧会と記念講演会をリポートした(こちら)。夏休み隈研吾スペシャルの後編は、栃木県内の隈建築9件=「とちぎ隈ナイン」(勝手に命名)を紹介する。
「とちぎ隈ナイン」の近作「ライトキューブ宇都宮」(左)と名作「石の美術館」(写真:宮沢洋)
この企画のきっかけは、上記の展覧会の図録だ。これに「隈研吾栃木県建築集」というのが載っていて、講演会の日の午後、急きょ予定を変えて、栃木県内の隈建築を車で巡った。同書には下記の10件が載っている。
・那珂川町馬頭広重美術館
・石の美術館
・那須歴史探訪館
・ちょっ蔵広場
・宝積寺駅グリーンシェルター
・宝積寺駅
・ライトキューブ宇都宮
・AOYAカンパーニュ
・佐野SA上り
・那須塩原市庁舎
展覧会の図録。500円とリーズナブル。前から読むと、展覧会の図録、後ろから読むと「隈研吾栃木県建築集」というつくり
これを見て、なるほど栃木県には数ある隈建築の中でも「一度は見るべき」と思うものが、かなり集まっていると気づいた。“隈建築の聖地”としては高知県の梼原町が有名だが、「西の梼原、東の栃木」くらいに言っていいかもしれない(栃木の場合、範囲は広くなるが、その分東京からの移動距離は短いのでいい勝負)。
上の10件のうち、「那須塩原市庁舎」は現在、工事入札を準備中の段階でまだ見ることができない。なので、それを除く9件を東京方面から見て回りやすい順に紹介していく。さすがに半日ですべてを巡ることはできなかったので、以前撮った写真も混ぜて紹介する。全制覇したい人は那須あたりで1泊していただきたい。では、出発!
1)佐野SA上り

2026年3月にオープンしたばかりの東北自動車道のサービスエリア。正式名は「ドラマチックエリア佐野(上り線)」。隈研吾建築都市設計事務所が商業施設の内外装のデザインを監修。
なぜ「上り」のサービスエリアを、東北に向かう「下り」ルートで紹介するかというと、このサービスエリアは上りと下りで人が行き来ができるからだ。これってたぶん珍しい。それを言いたかったので、最初に紹介した。
赤で囲った部分が当該施設。右は下りの施設
以下は隈事務所公式サイトからの引用(太字部)。
木の質感を持つ庇を用いて、人々が集い交流する「風」のSAをデザインした。庇の角度をリズミカルに変えることで風にたなびくような大庇をデザインし、建築ボリュームをヒューマンスケールに分節した。跳ねだし3.5mの大庇で、明るく開放的な軒下空間を作り、多様な活動の場をコミュニティに提供した。

佐野と言えばラーメン。この立体木組みは「ラーメンウォール」と言うそう

一部まだ外構工事中だった。思ったより小さくて、デザインもシンプルだったが(最近、こんな「道の駅」を見たこともあり…)、それでも、一般の人が見て「これは隈さんだ!」とわかるメッセージ力はさすが。
2)ライトキューブ宇都宮

JR宇都宮駅東口に直結するコンベンション施設だ。まだコロナ禍を引きずっていた2022年11月にオープン。時間がなくて広場しか見ていないのだが、これは思っていたよりずっとよかった。
以下は隈事務所公式サイトより(太字部)。
宇都宮駅の東⼝に、スマートシティのコアとなる、劇場型⽴体広場を中⼼とする複合再開発ビルをデザインした。従来のハコ指向・容積指向の再開発とは対極的な、広場を中⼼とする文化施設、コンベンション施設を含む多機能型の再開発は、コロナ後の新しい流れであるリアルコミュニケーションの復活、環境志向の街づくりのひとつのモデルとなるであろう。

シークエンシャルに連続する広場は、1階で宇都宮の新しいコミュニティインフラとなるLRT と直接に接続され、2 階では、JR 宇都宮駅とシームレスにつながる。さらに3 階の緑の広場は、遠くの⼭々と広場をつなぎ都市と⾃然が再結合される。


夏なのに絵に描いたように若者たちが階段に座っているのがすごい。夏でこれだと、春秋は大変なことになっているのではないか。筆者はひそかに「人が座りたくなる大階段」の研究をしているので、また様子を見に来てみよう。
3)ちょっ蔵広場




これは2006年の傑作。JR宝積寺駅前にある「ちょっ蔵広場」だ。以下、『隈研吾建築図鑑』に載っているものは説明をはしょる。いい本なので、そちらで見てほしい(アマゾンはこちら)。


4)宝積寺駅

JRの駅も隈氏。ちょっ蔵広場の2年後に完成。、これもすごい。


5)宝積寺駅グリーンシェルター

これは宝積寺駅から100mほど離れた線路沿いにある。2005年。現存していることを知らなくて、今回初めて見た。
東北本線宝積寺駅の駅本体とちょっ蔵広場に隣接して、緑とステンレスメッシュのからみあう、やわらかで開かれたパブリックなトンネル空間をデザインした。
太い鉄骨のフレームを用いることなく、ステンレスメッシュをアーク溶接でつなぎあわせて、折板(折り紙)状の構造体を組み立てていく操作によって、植物と融け合うような、透明で繊細なトンネルができあがった。
雑誌発表時はステンレスメッシュだけだったが、20年たって、本当に「グリーンシェルター」になっていた。

6)那珂川町馬頭広重美術館

ご存じ馬頭広重美術館。2000年竣工。2026年のリニューアルについてはこちらの記事を。


7)石の美術館

「石の美術館」は筆者が個人的に大好きな建築。“勝手に隈建築ベストスリー”に入れたい。




8)那須歴史探訪館

これは「石の美術館」から徒歩数分のところにある。2000年に完成した“那須自然素材三部作”の1つ。伝説の左官、久住章氏と「ワラパネル」を考案した。


9)AOYAカンパーニュ

ラストは帰り道に小山市でお土産を買う。「AOYA CAMPAGNE(アオヤカンパーニュ)」は2023年7月にオープンしたダイニングカフェ。小山市の国道50号線・岩舟小山バイパス沿いにある( 栃木県小山市萩島116−1)。この店は、前述の佐野SA上りにも出店しているそう。

北関東で展開する和菓子の老舗が、素材をテーマにスタートした新しいブランドのフラックシップ・ショップ。和菓子の基本素材であるアンに注目し、その場所場所の恵みの素材をテーマにしたアンを味わうことができる。


勾配屋根の木造建築に、軽やかで明るい印象を与えるために屋根をめくりあげ、その下にガラスの全面大開口を設け、ストリートと一体化した、巨大な屋台をめざした。そのオープンな一室空間の中に、和紙のフィレット状の照明でリズムとフローとを与えた。

閉店ぎりぎり(18時少し前I)に行ったので、喫茶利用は終わっており、お土産だけ物色。物販エリアを見ていてびっくり。

えーっ、隈さん、スイーツの監修もやってたの!?

隈氏が監修した最中(もなか)の商品名は、『謹製栗最中『隈(くま)』。自称「隈研吾ウオッチャー」なのに、これは知らなかった。
お土産に「隈」も買いました! 「ぐるなび」による、秘書が選ぶ「接待の手土産セレクション2025」の20点のうちの1つに選ばれたという
以上、これから栃木方面に行く方は、隈研吾ファンもそうでない方もぜひ参考にしていただきたい。(宮沢洋)
前編の「隈研吾展」@馬頭広重美術館(2026年9月13日まで)はこちら↓を。
馬頭広重美術館の「隈研吾建築展」と再出発講演会を見た! 雨降って地固まる?
改めて、『隈研吾建築図鑑』はいい本なので、そちらもぜひ!!(アマゾンはこちら)

