ワールドカップ(W杯)北中米大会はスペイン代表の16年ぶり2度目の優勝で幕を閉じ、休む間もなく26-27年シーズンが幕を開ける。
例年同様、今夏も多くのクラブに財政的余裕はなく、1000万ユーロ(約18億5000万円)超えの補強は、昨年の同時期に比べて4件少ない9件のみ。ビッグ3以外では、ベティスがウルグアイ人MFファクンド・ベルナル(フルミネンセ)を1050万ユーロ(約19億4250万円)で獲得しただけだ。
そして、チーム強化に1000万ユーロ(約18億5000万円)以上費やしているのは、前述の4クラブに加え、アラベス、エルチェ、ヘタフェ、9シーズンぶりに1部復帰したデポルティボだけとなる。
これらの状況を踏まえ、ビッグ3や日本人所属クラブを中心に、開幕2週間前の補強状況を探っていきたい。
2026年6月11日、練習中のスペイン代表ククレジャ(ロイター)
■レアルはククレジャら大補強
最も活発な動きを見せているのは、2季連続メジャータイトル無冠のレアル・マドリード。W杯期間中にスペイン代表DFククレジャ(チェルシー)を5500万ユーロ(約101億7500万円)、オランダ代表DFダンフリース(インテル)を2000万ユーロ(約37億円)、フランス代表DFコナテ(リバプール)とポルトガル代表MFベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティー)をフリーで獲得。さらに、空中戦の大きな武器になり得るU-20スペイン代表FWカルロス・エスピ(レバンテ)が2500万ユーロ(約46億2500万円)で電撃加入した。
補強はこれにとどまらず、クラブ史上最高額の移籍金1億2000万ユーロ(約222億円)前後でコートジボワール代表FWディオマンデ(ライプチヒ)の入団が決定的であるほか、W杯のゴールデンボール賞(最優秀選手賞)に輝いたロドリ(マンチェスター・シティー)に4000万ユーロ(約74億円)~5000万ユーロ(約92億5000万円)を準備し、新たなセンターバックとしてイタリア代表DFバストーニ(インテル)が候補に挙がる。
一方で、ここまでカルバハル、アラバ、フラン・ガルシア、セバージョスが退団したが、フルハム移籍内定のゴンサロ、期限付き移籍濃厚のマスタントゥオーノに加え、アセンシオ、カマビンガ、エンドリッキがチームを離れる可能性がある。
■バルサはゴードン、アデイェミ獲得
リーグ戦2連覇中のバルセロナはここまで、スペインリーグで補強額が最も多いクラブになっている。まずサイドアタッカーに重点を置き、退団したラッシュフォードの代役にイングランド代表FWゴードン(ニューカッスル)を今夏ここまでの移籍金最高額となる8000万ユーロ(約148億円)、ドイツ代表FWアデイェミ(ドルトムント)を2200万ユーロ(約40億7000万円)、将来性豊かな18歳のU-19ベルギー代表FWジェシー・ビシウ(クラブ・ブルージュ)を850万ユーロ(約15億7500万円)でそれぞれ獲得した。
一方、4年間エースとして君臨したレバンドフスキの退団を受け、センターフォワードの補強が必須の状況だ。その最有力候補としてアルゼンチン代表FWフリアン・アルバレスが挙がるが、規定違反の接触によりアトレチコ・マドリードから訴えられ、スペインサッカー連盟が懲戒手続きを開始する事態に発展し、泥沼化している。さらにクラブは、昨季半年間の期限付き移籍で所属したポルトガル代表DFカンセロ(アル・ヒラル)を狙っている。
イ・ガンイン(2024年撮影)
■グリーズマンの穴埋めにイ・ガンイン
Aマドリードも1億ユーロ(約185億円)超えの投資を実施。デンマーク代表MFヒュルマンド(スポルティング)と通算10年所属したグリーズマンの代役として大いに期待されているイ・ガンイン(パリ・サンジェルマン)をそれぞれ4000万ユーロ(約74億円)、スペイン代表DFグリマルド(レバークーゼン)を2200万ユーロ(約40億7000万円)で補強した。
退団する選手次第となるが、センターバックとセンターフォワードの補強が必要と考えられる他、昨季期限付き移籍で所属したアルゼンチン代表FWニコ・ゴンサレス(ユベントス)の完全移籍が検討されている。
■久保は調整不足からベンチ外続く
久保建英が所属する国王杯王者のレアル・ソシエダードはビッグ3と真逆の状態にある。欧州リーグ、スペインリーグ、国王杯、スペイン・スーパーカップの4大会に臨む激しいシーズンとなるが、ビルバオ、ビリャレアルと並び、7月中の補強がないクラブとなった。昨夏同様、新戦力不在のまま8月を迎えたことは大いに懸念される点だ。
ブライス・メンデス、エルストンド、チャレタ=ツァルが退団した状況下、左利きのセンターバック、左サイドバック、ゲデスのようにウイングやトップ下でプレーできる万能型の選手を探しているとのことで、ポルトガル人DFディオゴ・レイテ(無所属)、U-21スペイン代表DFオブラドール(ベンフィカ)、チャド代表FWムアンディルマジ(サムスンスポル)などの名前が挙がるも、現時点で何ひとつ具体化できていない。契約延長前には鎌田大地(クリスタル・パレス)への興味が報じられたこともあった。
プレシーズンマッチ4試合の成績は2勝1分け1敗。久保はW杯オランダ戦での左膝負傷の影響で調整不足が続き、チーム合流後3試合連続でベンチ外。この後、ケルンとの2連戦、チェルシーとのテストマッチを経て、21日のスペインリーグ初戦でベティスと対戦する。
■佐藤龍之介を7億4000万円で獲得
19-20年シーズン以来の欧州カップ戦復帰を目指すバレンシアは今夏、キュマルト、コレイア、サンタマリアなどが退団。さらにアルメイダ、ディアカビ、フルキエに移籍の可能性が出ている。
一方、デビュー戦でいきなりゴールを決め、早くもサポーターのハートをつかむことに成功した佐藤龍之介(FC東京)を移籍金400万ユーロ(約7億4000万円)で獲得し、オランダ人DFデ・ハース(ファマリカン)とマリ代表MFディエング(アル・アハリ)をフリーで手に入れた。
現在補強が必要なポジションはGK、右サイドバック、サイドアタッカーで、その候補の1人にウクライナ人GKオレクサンドル・サプチン(ゾリャ・ルハーンシク)が挙がっている。プレシーズンマッチ4戦2勝2敗のチームはこの後、ストーク・シティ、ニューカッスルと対戦し、22日のセルタ戦で26-27年シーズンを開始する。
ピエール・エメリク・オーバメヤン(2017年12月6日撮影)
■元バルサのオーバメヤンがスペイン復帰
その他のクラブに目を向けると、ドルトムント、アーセナル、バルセロナなどのビッグクラブを渡り歩いた37歳のガボン代表FWオーバメヤン(デポルティボ)のスペインリーグ復帰や、元スペイン代表MFカナーレス(ラシン・サンタンデール)が16年ぶりに古巣へ戻ったことが話題となっている。
一方、今夏もプレミアリーグへの移籍があり、スペイン代表FWビクトル・ムニョスがオサスナからリバプールに4000万ユーロ(約74億円)、ウルグアイ人FWアルバロ・ロドリゲスがエルチェからボーンマスに2500万ユーロ(約46億2500万円)で加入し、Aマドリードやチェルシーなどのビッグクラブに所属した元スペイン代表DFアスピリクエタ(セビリア)が36歳、ビルバオ一筋でプレーしてきたスペイン人DFレクエが33歳で引退した。
■サラリーキャップに苦しむ各クラブ
これまでリーグ全体で60人以上の補強が行われているものの、この1カ月間で登録できた選手は、Rマドリード(3人)、エスパニョール、デポルティボ(各2人)、バルセロナ、Aマドリード、セビリア、ラシン・サンタンデール(各1人)のわずか11人のみ。これ以外のクラブは新戦力をまだ1人も登録できていない。これは、多くのクラブが今夏もサラリーキャップ(選手の契約年数に合わせて分割された移籍金や選手年俸などの限度額)や財政面で苦しんでいることを意味している。
また、ヘタフェは全体の登録者がわずか7人と、現時点で最も少ないクラブになっており、トップチームの登録選手わずか11人で臨んだ昨季の開幕戦をほうふつとさせる状況だ。昨季の収入でスポーツ組織として過去最多の12億2100万ユーロ(約2258億8500万円)を記録したRマドリードは最も多い23人。バルセロナの登録者は18人だが、GKおよび新戦力の登録が1人もできておらず、今夏も多くのクラブが締め切り間近での調整を必要とすることになるだろう。
シーズン開幕は2週間後に迫るが、今夏の移籍市場終了となる9月1日までは1カ月残されている。W杯イヤーで主力選手を欠いた状態でスタートした特異なプレシーズンを過ごす中、各クラブがどのようにチームを仕上げてくるかに注目が集まる。【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)