2026年7月15日 午後4時00分

福井に残る人だけ応援? 県内進学支援に感じた違和感【ゆるパブ】

一時期「福井県内に進学する人を応援します」という音声と共に「県内大学等への進学者応援事業制度」のCMが、テレビだったか広告ビジョンだったかで流れているのを見かけた。ナレーションもうろ覚えだが、その内容に、福井県「外」だと応援してもらえないんだ、へぇ?、という違和感と一緒に、学生時代を思い出した。

高校時代、私は成績が悪かった。授業中は寝てばかり、課題は出さずなので当たり前である。しょっちゅう先生に呼び出され、「赤ん坊じゃないんだから…」と言われるくらいだった。こんなやる気がない生徒を、毎回怒ってくれて本当に先生ごめんなさい。(ありがとうだろうが、申し訳なさが勝ってしまう。)

当たり前だが、ずっとそんな感じなので、志望していた大学には行けず。(志だけは高かったのだ。)滑り止めにも落ちて、全然知らない大学へ進学した。親は私を、県外のたいしたことない偏差値の大学に進学させてくれただけでなく、一人暮らしまでさせてくれた。

受験するだけでもお金がかかるのに、出来の悪い私に、親は手あたり次第に受験をさせてくれた。受かる可能性のほぼない大学へは、交通費と宿泊費もプラスで。耳が痛い。そこまでさせてもらった私と違い、クラスメイトの中には「女なんだから大学行く必要ないって親に言われている」とか「受験するのは福井県内だけって言われている」とか、そういう制限がある子もいた。

進学先を親から制限されている子は、思い返せば結構いたな、と思う。そして、そういう子たちは、私よりずっと成績がよかった。きっと大阪や愛知、首都圏なんかに住んでいたら、もっと選択肢があって、変なプレッシャーや、希望していない学部に進学しなければいけない、というようなことがなかっただろうと思う。勉強するふりをして寝たり漫画ばっかり読んでいた私の横で、クラスメイトたちは真面目に勉強していた。私はなんて浅はかで愚かだったんだろうと、今思い返しても、頭と気持ちが重たくなる。私はたいした努力もせずに、それでいて選択肢を与えてもらっていたのに、クラスメイトは、努力をしていたのに、進路の選択肢が制限されていた。なんて不公平なんだと思った。とてもおこがましいのだが。

家庭内でいろんな事情や考え方があることは、重々承知している。それでも、個人の努力ではどうしようもない事を、他人は「個人の責任問題」として残酷に扱うときがある。様々な事情があることを分かっていながら、やはり分かりやすい学歴を評価基準にする人はまだまだ多い。そうやって、狭い範囲の価値観で相手を値踏みしてくるやつは、性格が特別に悪いのだと思っていたら、意外とそうではなく、日常に、近くに存在している。そういう人から物理的に距離をとる選択肢も、私は与えてもらっていた。

福井県内から若者が流出しないように。福井県に若者が残ってくれるように。そういう流れがあることは十分理解しているし、その必要性があることも分かっている。でも、縛り付けるようなことがないようにしたいのだ。もし、私が今高校生で、「県内大学等への進学者応援事業制度」を見つけたとしても、おそらく、進路に影響はなかったと思う。親は県外の大学へ進学する選択肢を与えてくれただろうし、補助金の有無で進学先を指定することもなかっただろう。だから私はきっと、県外の大学に進学できたと思う。でも、違う環境だったら。行きたい大学、行きたい学部、それらは県外にあるけれど、補助があるなら、福井県内の学校に進学してほしい、と親から言われていたら。自分の希望していた進路は、大袈裟に言えば未来の可能性ごと、選択肢から消えてしまっていたかもしれない。

前述したクラスメイトを見ても、県外進学を希望している学生にこそ、援助が必要なのでは、と、何も分からないペーペーの素人は思うのである。分かっています、自分より賢い人たちが作った制度なんだから、もっと色んな考えがあってのことだという事ぐらい、分かりますよ。でも、あの時彼ら彼女らに必要だったのは、「行きたい学校へ進学できる」という選択肢だったのではないか、とどうしても思ってしまう。

そして、真逆のことを言って大変恐縮ですが、私は、機会と意志があるなら、一度育った土地を出て生活することを、個人的にお勧めします。私を狭い価値観から解放してくれたのは、申し訳ないのだが、福井県外へ進学し、就職して出会った人々だから。今でも自分のことを、しょーもない価値観で縛られているなと感じる時があるが、それでも、自分の物差しでは測れないものがたくさんあることは、ずっと地元にいたら、私は分からなかったと思う。頭では分かっているけど、実感ができなかっただろう。

もちろん、ずっと福井にいても、とてもしなやかで自由に、それこそ「狭い価値観」ではないもので生きている人がいることは知っている。いろんな大人が、福井県も面白いよ!と、若者のために頑張っていることも知っている。でも、福井県にもおもしろくて色んな人がいるし、外も楽しいよ、どっちでも好きな方選んでいいよ、じゃダメなのだろうか。福井に留まらせることに執着するのではなく、もっと柵を低くしてもいいんじゃないか。その方が、外からだって入りやすいし、戻ってきやすい。それに、自分を尊重してもらった、応援してもらった、という経験は、その土地への愛着となって巡ってくるはずだ。

世界に羽ばたいている人が、福井県出身だったら、鼻高々じゃないですか。そんな素晴らしい人をどんどん出している福井県って、一体どんな場所なんだ?って、気になって移住者も増えるかもしれないし、なんて、甘いことを言いたい放題言って終わります。

⇒ゆるパブコラムをもっと読む

 ×  ×  ×

【ゆるパブコラム】一般社団法人ゆるパブリック(略称:ゆるパブ、2015年福井に設立)の発信の場として始まったコラムコーナー。福井の若者や学生、公務員、起業家、経営者、研究者などあらゆる立場の人が、さまざまな視点から福井のまちの「パブリック」に迫ります。

Share.