2026
7/07

2026年6月6日に韮崎市中央公園陸上競技場で開催された「ふじざくらダイバシティフットボールカップ」は、サッカーのまちとして知られる韮崎市で2024年にスタートした、新しいフットボールイベントだ。

これは、なでしこリーグ2部に所属するFCふじざくら山梨と、そのパートナー企業である東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社と、旭陽電気株式会社の3社の共創で立ち上がったものだ。

クラブと協賛企業が対等な立場で新たな価値を創出する──。これは理想的なようで、多くのスポーツ団体が実現できていないことでもある。FCふじざくら山梨はなぜ、企業と共創できるのか。

今大会に携わった東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社 総務部 業務推進Gr 山口千明さんと、旭陽電気株式会社 総務部 韮崎総務グループ サブリーダー 吉岡亜望さんに話を聞いた。

そこには、女子サッカー、あるいはあらゆる競技のスポーツクラブへの提言となるような、各地のロールモデルとなるような、メッセージと実例が詰まっていた──。

取材・写真・文=本田好伸

※写真左:東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社・山口千明さん、写真右:旭陽電気株式会社・吉岡亜望さん

【潜入レポート】女子サッカークラブと地域企業が創造する“サッカーのまち”韮崎の情熱的な大会/ふじざくらダイバシティフットボールカップ

目次

関わりのない社員がつながれる場所

超WORLDサッカー! 山梨県・韮崎市から始まる新たな価値創造。女子クラブと企業が共創イベントを開催するワケ「価値観や熱量が全部マッチしている」|FCふじざくら山梨/パートナー企業対談

──今年のふじざくらダイバシティフットボールカップを終えてみていかがですか?

山口 私は今年はサポート専門でピッチには立っていないですが、私たちの会社は5チームで参加しました。中には岩手から出張で来ていたメンバーも参加してくれて、交流が深まりました。

私たちのチームは5つくらいの部署からメンバーを募っており、業務も異なり普段から顔を合わせないような社員同士の仲も深まりました。その時点で、すでに参加して本当に良かったなって。それに、旭陽(きょくよう)電気さんとイベントを通して一緒にお仕事をして、すごくありがたい機会となりました。

──初めましての方々もいらっしゃるんですね。

山口 各部署に対して興味のある方に広げてもらうので、実は半分以上は普段、関わりが少ない社員同士だと思います。ここで初めて会ったり、数年ぶりに会ったという人もいたりするくらいですね。

──普段の仕事ではわからない一面も見られたり?

山口 それもありますね。例えば昨年は入社して1週間くらいの社員が緊張しながらも参加してくれました。でも、彼からしたら自分が得意なことを発揮できる場所がうれしかったようです。社内のメンバーもそこで一気に近づくことができるので、本当にこの機会があって良かったなって。

超WORLDサッカー! 山梨県・韮崎市から始まる新たな価値創造。女子クラブと企業が共創イベントを開催するワケ「価値観や熱量が全部マッチしている」|FCふじざくら山梨/パートナー企業対談

──吉岡さんはいかがですか?

吉岡 うちは、普段は東京エレクトロン テクノロジーソリューションズさんで働いている社員もいるのですが、山口さんと同じように、部署や異なる工場で働いているメンバーがこの日をすごく楽しみにしています。3年連続で参加させてもらうなかで、年々、大会への士気が上がっていて。今年も2回ほど練習をして臨んでいたくらいです(笑)。社員が一緒に集まって交流が深まる機会となっていますね。

新入社員は入社から2カ月が経ち、仕事に慣れ始めた時期に、上司や違う工場の方々と関わる機会が自然とできているので、すごくありがたいと感じています。こういう場所がなければ、なかなか交流できないですけど、練習して大会に出て、ご飯に行って……それだけで距離が近くなっていきますね。

山口 他社さんとの交流ができるのもすごくありがたいですね。FCふじざくら山梨のパートナー企業として関わらせていただいているものの、普段から交流が多いわけではありません。でも、こういう場所で話してみると、実は業種的につながりがもてたり、有意義な機会です。

試合チケットは社内で抽選に

超WORLDサッカー! 山梨県・韮崎市から始まる新たな価値創造。女子クラブと企業が共創イベントを開催するワケ「価値観や熱量が全部マッチしている」|FCふじざくら山梨/パートナー企業対談

──第1回から東京エレクトロン テクノロジーソリューションズさんと旭陽電気さんがクラブと一緒に創ってきたそうですね。

山口 最初は、FCふじざくら山梨さんから、韮崎に試合を誘致したいというお話でした。そこで一緒にイベントができないですか?とご相談いただき、日曜に試合があるのでそれなら土曜日を使おうって。

土曜にパートナー企業さんが盛り上がって、翌日に試合を見に行く社員も増えるだろうな、と。普段はサッカーのことをあまり気にしていない方たちでも、こうしてサッカーで交流して、FCふじざくら山梨の選手たちとも触れ合える時間があれば「明日試合があるなら行こうかな」となりやすいですよね。

吉岡 それで実際に試合に行くと、選手との距離もすごく近くて、また応援したいという気持ちになります。協賛企業にはチケットもご提供いただいているので、それを社内でもお渡ししています。

最初はイベントがメインだったところから、「明日も行く」と言ってくださる社員もいますし、3年間で日曜のホームゲームにつながるくらい盛り上がるイベントになってきました。年々、社内の関心や熱量も高まっていますね。わかりやすく、イベントに参加するチーム数も増えてきました。

うちは2チームで出場していますが、毎年なかなか勝てなくて、悔しいと練習をして、来年はこうしようと団結力が深まっています。それで、今年はようやく1チームが勝ち上がることができて、さっきも「来年こそは(優勝しよう)」って。解散する時に「来年もお願いします」と言ってもらいました(笑)。

山口 翌日のホームゲームも、社内で抽選になるくらいです。韮崎だけではなく、小瀬スポーツ公園の試合のチケットも社内で欲しい方を募っているのですが、けっこう取り合いに(笑)。多い時だと、倍率3倍とか。それに、チケットを買って行く方や、ファンクラブに入っている社員もいますよ。

超WORLDサッカー! 山梨県・韮崎市から始まる新たな価値創造。女子クラブと企業が共創イベントを開催するワケ「価値観や熱量が全部マッチしている」|FCふじざくら山梨/パートナー企業対談

──それはすごいですね。両企業ともヴァンフォーレ甲府のスポンサーもされていますが、男子と女子ではその認知や興味などの違いを感じることはありますか?

吉岡 イベントを始める前は、サッカー好きな社員はもちろん知っていますけど、富士北麓が拠点ですし、なかなか知る機会がありませんでした。でも、イベントを通して社内の認知は広がっています。

山口 私自身、このイベントの担当になる前はほとんど把握できていませんでした。でも、年々関心が高まっていますし、社員が楽しんでくれていると感じています。社員とそのご家族を含めて、1日中ワクワクできます。FCふじざくら山梨さんは、高齢者の方も、お子様も、女性も、全員が楽しめるイベントを企画してくださるので、ご家族やご友人など、本当に年齢も性別も関係なく楽しまれていますね。

こういったイベントやホームゲームを社内にご案内できることはすごくうれしいですね。企業とクラブの双方にいい関係を築ける試みですし、年々、本当に関心が高まっていることを実感しています。

──イベント開催までは毎月のように打ち合わせをされてきたそうですね。

山口 FCふじざくら山梨さんと旭陽電気さんと一緒に複数回の打ち合わせを重ねています。だいたい、3月くらいにFCふじざくら山梨さんからお声がけをいただき、ベースとなる企画案をご提示いただいています。それに対して、こんなこともしたいですよねとか、こういうことができそうですよねといった形で参加させていただいています。

去年は開会式の挨拶を「韮崎出身の社員」という縛りにしたり。参加される企業さんへのお声がけをこちらからすることもありますし、毎年、どれくらい増やせるかなと楽しみながら創っています。

吉岡 キッチンカーも、FCふじざくら山梨さんだけではなく、私たちでお声がけして来てもらうこともあります。お互いに案や意見を出し合って、それぞれが分担して準備を進めていく流れですね。

私たちは、社員食堂でもあるレストランの「KYOKUYO KITCHEN」を地域の方に開放しているので、そのPRにもなりますし、今回のイベントでも出店させていただき、すごく貴重な機会となりました。

クラブと協賛企業の対等な関係

超WORLDサッカー! 山梨県・韮崎市から始まる新たな価値創造。女子クラブと企業が共創イベントを開催するワケ「価値観や熱量が全部マッチしている」|FCふじざくら山梨/パートナー企業対談

──素朴な疑問ですが、クラブは、パートナー企業に対してイベントへの参加をお声がけをする構図が一般的です。ただ、そこから発展して、一緒に創るというのはどうして実現できたのでしょうか?

山口 FCふじざくら山梨さんが“相談”という形で持ちかけてくださったことが大きいと思います。私たちの会社もイベントは好きですから、自然と「一緒にやりましょう!」と、自然と始まっていきました。

吉岡 そうですね。本当に自然とスタートできましたし、うちもこういうことができそうと話せたので、(FCふじざくら山梨のGMの)五十嵐(雅彦)さんに声をかけてもらったことが大きいと思います。

山口 FCふじざくら山梨さんは、なんというか、巻き込んでくれる。参加だけでなく、一緒にやりましょうと対等な話ができる。私たちとしても、協賛企業としてお金を出したり、企業ロゴを掲出したりして終わりではなく、もっと何かをしましょうというのはFCふじざくら山梨さんの企画力の強さに便乗させてもらっています。想いの強さやイベント設計はすごく勉強になっています。

吉岡 私たちも一緒に創ることが楽しいですし、新しいことが始まるとワクワクします。それに、地域活性やCSRをすごく考えているので、お互いにWin-Winになる価値観や熱量が全部マッチしているからこそ成り立っていると思います。根っこにある想いがすごく通じ合っているように感じています。

山口 なので、ホームゲームを含めて2日間の成果を考えています。私たち企業の認知も上げたいですし、同時に、FCふじざくら山梨さんの入場者数にも貢献したい。だから、終わった後にも集まって反省会をしています。イベントの参加者や試合の入場者数がこうだったから、次はもっとこうできるよね、と。

超WORLDサッカー! 山梨県・韮崎市から始まる新たな価値創造。女子クラブと企業が共創イベントを開催するワケ「価値観や熱量が全部マッチしている」|FCふじざくら山梨/パートナー企業対談

吉岡 試合日には、女の子限定のサッカー教室も開催していますが、限定にしたことで年齢層や経験の有無に制限がかかる部分もあります。だから、次はどうしたらもっと集まるのか、関心を寄せてもらえるのか、そのためにどんな対象に絞ったらいいのかなど、気軽に相談しやすい関係性があると思います。

山口 この3年間ですごく信頼関係が築かれましたし、お互いにより良いものを創るために相談しやすい。イベントに関しても、社内で次はもっと良いものにしていこうという気持ちがあって、社内でも機運が高まっていくことで、今年もまた参加企業が増えたことにもつながっていると思います。

吉岡 とにかく楽しいイベントにしたいと話をさせてもらっていて、そのためにどうするかが最初にあって、そこを一緒に考えることができます。やっぱり、私たちとしても他社さんと関われることがすごくうれしいですから、この3年間は本当に楽しみながらイベントを創れました。

──社内でもどんどんやっていこうという雰囲気が?

吉岡 会社としても地域に開いていく工場ですから、先ほどお話しした食堂などを含めて一般の方が入れたりもします。やはり、会社は会社だけで成り立っているものではなく、地域を含めた「人」で成り立っているものなので、社員も含めて、みんなが幸せじゃないとつながっていきません。そうした想いがあるので、地域や社員に対して開いていくイベントには労を惜しまない考えがありますね。

私たちは、韮崎に会社を置かせていただいていますから、地域の方々にご迷惑をおかけしないで、貢献していきたい。ですから、こうしたスポーツに協賛することでお返しできることもあります。

山口 韮崎文化ホールや韮崎アリーナなど、弊社はネーミングライツで名前を出させていただいています。そこで開催する記念イベントなども、近隣の方をお招きして「この地域に東京エレクトロンがあって良かった」と思っていただけたらうれしいすね。でも、そうしたことは私たちから発信するものではないですから、やはりこのようなイベントはすごく大事なことだと感じています。

吉岡 純粋に、おもしろいことが好きですね。こうした企画やクラブの試みを通して、韮崎が活性化して盛り上がるのであれば、やれることをまずは考えます。会社として、社長を筆頭にそうした考えがあるからこそ、一般の方とも関わったり、地域に開いていくことが自然な流れだと思います。

──そうは言っても、クラブと企業が“対等”な関係であったり、気軽に相談できる関係性は稀有なものだと思います。ただ、だからこそこれだけ熱量があるイベントを共創できるんだなと。

山口 FCふじざくら山梨さんに関係があるイベントだけではなく、私たちが開催した文化ホールでの催しの時も相談させていただいたことがあります。FCふじざくら山梨さんの培ってきたイベントのノウハウなど、知恵をお借りして実現していったこともあるので、これからも共創していきたいですね。

地域に、全国に広がっていく大会に

超WORLDサッカー! 山梨県・韮崎市から始まる新たな価値創造。女子クラブと企業が共創イベントを開催するワケ「価値観や熱量が全部マッチしている」|FCふじざくら山梨/パートナー企業対談

──今回は「多様性を力に変える」というテーマがありました。

山口 もちろん、決勝戦など勝ち上がると真剣勝負の様相が強まりますけど、大人と子ども、女性が入り交じって、一つのボールを追いかけてゴールを目指しながらも、そこにフェアプレーがありますよね。企画した私たちも、試合を眺めながら、ああいいなぁってすごく感じることができました。

吉岡 1年目はチームが集まるかも心配していましたよね。社員に声をかけても「え、サッカー?ルールは?」って、特殊なルールなので、キャプテンたちに理解していただくことから始めました。でも今では、もうそれに応じた作戦を練っていたりして、そういうのも見ていておもしろいですよね。

──この地域から新しいモノが生まれていく感じがしますね。

山口 そうですね。せっかく同じ地域に拠点を置いている企業さん同士ですし、「サッカーのまち」ですから、サッカーやそれ以外のイベントでも、企業が盛り上がって、若い方々がたくさん関わって、韮崎市も盛り上がっていくことにつながっていったらそれは一番素晴らしいことだと思います。

吉岡 それで、また他の地域のクラブも真似をして、広がっていったら素敵ですよね。やっぱり、こうして自分で体感してみて思いますけど、すごく楽しいイベントだなって。社内のみなさんと仲良くなることって、そんなに簡単ではないと思いますけど、ここならそれができますから。

山口 本当にサッカーボール一つとゴールがあれば、こうやってみんなで盛り上がれますよね。私たちのチームも年長者は60歳を超えていますし、お子さんもたくさんいたので年齢層はすごいですよ。新卒の社員であっても、ピッチに入れば立場が逆になったりもしますし、そういう若い方が年配の上司に「行けー!」って応援していたり「もっと走って!」と鼓舞していたりしておもしろいですよね。

吉岡 そうやってここで培った関係性は、仕事に戻ってもすごく生きています。信頼関係が生まれたり、声をかけやすくなったり、業務的な関係性も築かれていると思います。もちろん、最初から築かれていた関係性がもっと深まる、強まることもあります。遠慮がなくなって、もっと率直なコミュニケーションが取れるようになったり、業務的にも良い方向につながっていると感じています。

──ここまでお伺いしてきて、お二人の掛け合いが淀みないと言いますか“阿吽の呼吸”を感じるのですが、普段からお仕事でも関わりがあるんですか?

山口 実はこのイベントだけなんです(笑)。

吉岡 そうなんですよね。でも、そうとは思えないくらい気さくにお話ができますし、イベントを一緒に創ってくるなかで、友人のようでもあり、一緒に頑張ろうという仲間でもあります。

山口 業務で最初に出会った人とは通常、名刺交換をして互いに堅い挨拶から始まりますけど、このイベントから始まったので、距離感にも慣れて、いつもこの時期には楽しくやらせてもらっています。

吉岡 そうですね。うちは社長と一緒に社員が複数名、東京エレクトロン テクノロジーソリューションズさんも山口さんと上司の方が参加し、FCふじざくら山梨のGMの五十嵐さんを含めて毎回の打ち合わせがすごく盛り上がっています。上司がいても気兼ねなく、みんなが話しやすい空間でこうしたイベントを創ることができています。

山口 本当にこのメンバーがいて、そもそも、FCふじざくら山梨さんがつないでくださったご縁から始まったイベントをこれからも続けていきたいですし、韮崎を盛り上げることもそうですし、クラブを知ってもらい、パートナー企業を知ってもらえる取り組みをこれからも続けていけたらと思います。

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