笑顔を見せる奈緒
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 【過去と未来の交差点】三十路に入り、さらに演技に磨きがかかる女優の奈緒(31)。2018年放送のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」で見せた爽やかなキャラクターから、翌年放送の日本テレビ「あなたの番です」では怪しい笑みをたたえたストーカー気質の女。さらに婚約破棄をきっかけにプロボクサーを目指す役を演じたり、父親思いの優しい娘に扮したり…境界線のない彼女の演技はどこで培われたのか。(高原 俊太)

 午前から7、8件のインタビュー、映画の完成披露試写会登壇と多忙な一日。そんな中でも、奈緒は姿を現すと「撮影の方が朝早いですから」と笑い、現場を和ませた。撮影していたカメラマンが高校の後輩だと分かると「校舎がキレイになったの知ってますか!?」と声が弾み、スタジオ中が明るくなった。

 高校時代に地元・福岡でスカウトされ、モデルとして活動を始めた。参加した芝居のワークショップで普段の自分ではない一面を引き出され、演技の楽しさを知った。さらに追求しようと女優を目指して20歳で上京した。

 その時、大きな転機となったのが、フジテレビドラマ「101回目のプロポーズ」や「ひとつ屋根の下」などを手がけた脚本家の野島伸司氏(63)との出会いだ。野島氏が総合監修を務める俳優養成スクール「ポーラスター東京アカデミー」で基礎から学んだ。「野島さんは私にとって師匠のような存在。指導の中で厳しい言葉を頂きましたが、お芝居を仕事とする上での覚悟を伝えてくれる優しさがあった」

 1年間みっちりと指導を受け、芝居の技術だけではなく、役者を職業とする覚悟を学んだ。「それまでは“お芝居をすることが好き”という気持ちだけでした。そんな中で“役者として自分の力で歩んでほしい”と言われて意識は変わり始めました」と振り返る。

 口酸っぱく言われたのは「限界を決めないこと」。自分に自信がなく、オーディションに落ちることを恐れ続けていた心を見透かされた。「“奈緒はお利口さんで限界を決めるところがあるけど、自信を持って挑んでみなさい”って。そこからは失敗におびえるんじゃなくて、挑戦して傷ついて強くなろうと思えました」

 意識の変化が大きな結果として実ったのは上京から2年たったときに参加した朝ドラ「半分、青い。」のオーディション。「これまでだったら自分の少ない引き出しで挑んでいたけど、“ヒロインを目指す”という強い気持ちだった」と明かす。ヒロイン役の最終審査では落選したが、存在感と演技力が制作陣を動かし、ヒロインの親友役のオファーを受けた。「不安定な職業を選んだからには身近な人たちを安心させたい気持ちがあった。結果が出たことで周りの人たちが私以上に喜んでくれてホッとしました」。役者を職業としてやっていく手応えをつかんだ。

 将来は「自分が想像できない役者になりたいな」という。「未来も大事ですけど、今が一番大事。何かを一生懸命やり続ける将来と何もしない将来では全然違う。だから、今の自分にとって一番いい選択を続けていったら役者として想像していないところに行けると思っています」

 芝居の面白さに引かれた上京前の気持ちに、野島氏から教わった「限界を決めないこと」が加わり、限界突破を続ける。

 「インタビューでは作品や現在の話をすることも多いけど、こうやって昔のことを振り返るのは楽しい」と原点を思い出し、柔らかく笑った。「野島さんに“出来の良い娘を持った”と言ってもらえたんですよ。少しは恩返しできたのかな」。取材の最後に出てきた言葉には、心の底からの恩人への感謝と自身の成長の実感がこもっていた。

 《映画「死ねばいいのに」主演「刺激的」な会話劇》3日に公開された主演映画「死ねばいいのに」(監督金井純一)では、亡くなった知人女性について周囲の人に訪ね歩く主人公を演じる。京極夏彦氏(63)の原作では主人公は男性だったが「性別よりも一人の人間と、大きな変更点だと捉えないようにした」。作中では1対1で会話をする場面が多く、背景が室内や自然の中などさまざまに切り替わるのが印象的。「会話だけで深く2人の空間に入れることが刺激的で楽しかったし、自然の中で撮影したことでより見応えのある形になっています」と話した。

 ○…奈緒は4日、都内で「死ねばいいのに」の公開記念舞台あいさつに登壇。初日の3日に映画館で改めて観賞し「少し客観的に見られたし、皆が集中していて、見終わった後はそれぞれがかみしめてくださっていると感じられた幸せな時間でした」と話した。そして、タイトルとは裏腹に「演じている中でどんどんつらくなっていく日々だったけれど、皆さんはどうか生きてください。それが携わった者としての祈りです」と訴えた。

 ◇奈緒(なお)1995年(平7)2月10日生まれ、福岡県出身の31歳。高校在学中に街中でスカウトを受けて、芸能活動開始。20歳で上京し、16年公開の映画「雨女」で映画初出演。19年には「のの湯」でドラマ初主演、「終わりのない」で初舞台、「ハルカの陶」で初主演映画といった“初”ものを経験。母親とともに吉田拓郎(80)の大ファン。趣味はイラストを描くこと。身長1メートル57。血液型A。

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