神戸を拠点に、日々の光や、誰かのおまもりになるように絵を描けたらと思ったりしてます。

画家・イラストレーターの みしまあきひろ です。

まち歩きや散歩は、アイデアの原点。

この連載では、絵を描く手前にある視点を綴っていきます。

 

ちょっと力を抜いて、神戸を歩いてみませんか。「ゆるりらと」。

自分の中では、そんな言葉がしっくりくる歩き方です。

今回も兵庫区へ、バスにのって寄り道するように。

「ゆるりらと」まちを歩いてみました。

【取材・文・詩・絵】みしま あきひろ

神戸在住の画家、イラストレーター。絵を通して様々なコミュニケーションを介して作品を制作活動をしています。何気ない目線、人やまちとのふとした出会い、自然に文化と出会える心地の良い風が吹く、神戸をお届けいたします。

 

 

今回は、兵庫をゆるりらと歩きます。

元町から7系統のバスにゆられて目的の場所へ。

知らない路地の坂道の先に、五宮神社が神戸の海を見守る様に鎮座しています。

「三宮」があるように、神戸には、「一宮から八宮」までの神社があります。

 

 

五宮神社の近く、兵庫区梅元町。

この一帯は近年「梅の村(通称バイソン)」と呼ばれているそうです。

朽ちゆく空き家を買い取り、あるものを活かしながらアップサイクルしていく取り組みが進められており、西村周治氏が率いる設計施工集団「西村組」が、この地区のさまざまな家を手がけています。

 

本とお茶 ほとり(兵庫区)

 

何かがはじまりそうな風が吹くこのまちに、

少し前に訪れて以来、また行きたくなるお店があります。

 

薬膳茶と本に出会える場所、「本とお茶 ほとり」さん。

 

本も選びながら茶葉の香りと空気を楽しめる場所です。

 

何故、薬膳茶と本のお店をしようと思ったのか、

店主の坂下麻子さんに聞いてみました。

 

 

 

三重県四日市にある、子どもの本専門店の「メリーゴーランド」で働いていた時代。

 

そこでは、子どもの本を子どもだけのものとして捉えるのではなく、

大人も子どももそれぞれに本と向き合い、

本を通して世界を見る眼差しを大切にしてきたそうです。

 

仕事を続けるなかで、立ち止まって自分自身を見つめ直す時期があったそうです。

 

できること、できないこと。

 

本屋という仕事の体力勝負な側面が見えてくるなかで、

身体との付き合い方や食事についても考えるようになりました。

 

自分という軸を大切にする時間は、やがて学びの時間へ。

 

西洋医学だけでなく、鍼灸などの東洋医学にも関心を持ち、

働きながらオンラインで2年間学校に通い、薬膳の知識を深めていったそうです。

 

お店を開くことが目的だったわけではなく、

暮らしや身体と向き合うための学びの時間だったそうです。

 

当時は、お店というものは選ばれた人や特別な人が営むものだと思っていて、

自分がお店を持つ未来は想像もしていなかったんだとか。

 

 

今回、私は薬膳茶の「おぎない」を頼んでみました。

 

やさしい湯気と本の並び。まるで赤外線が出ているかのように、

本棚からもじんわりと温もりが伝わってきます。

 

 

坂下さんは、お店について少し照れながら話してくださいました。

 

「本は自分の内側で、薬膳は外側。


心を支えるもの、身体を支えるもの。


自分のことがわからなくなるときや、気持ちや身体が追いつかないときこそ、

立ち止まって自分を大切にしてほしい。」

 

どんなお店ですかと尋ねると、少し考えながら、

「息ができる場所。」

 

という言葉が印象的でした。

 

 

お湯をたしてもらいゆっくりとした時間。

 

「薬膳茶の茶葉のお豆も食べれますよ。」

そう言って、お箸をそっと渡してくださいました。

 

ホクホクとしたお豆と香りがこころも美味しいよと言ってるみたいです。

 

豊かな空気と身体を開いて、ほっと息づく場所。

 

 

 

Information

本とお茶 ほとり




住所
神戸市兵庫区梅元町14-16


アクセス
市バス7系統「五宮町」下車徒歩5分

(三宮駅、神戸駅、高速神戸駅からバスに乗車できます。)


営業時間
11:00~16:00


Closed
月・火・水曜日


Instagram
https://www.instagram.com/hotori_book_tea

 

おくば洋書店 okuba(兵庫区)

湊山温泉周辺の風景


 

 

川を越え、湊山温泉の西へ向かった路地に、

洋書とリソグラフのお店、「おくば洋書店」があります。

 

 

木の看板と不思議な模様のロゴ。

 

 

洋書だけでなく、古い置物や2000年代のMacintoshなども並び、

少し大人でありながら、どこか幼な心をくすぐられる空間です。

 

 

おくば洋書店のリソグラフ印刷機


リソグラフは、日本の理想科学工業が開発した印刷機で、

コピー機と印刷機の間のような存在。

 

スーパーの特売チラシを思い浮かべてもらうと、

少し身近に感じられるかもしれません。

 

近年、個人の表現の場はますます広がっています。

 

商業出版ではなく、

「まず作ってみる」

「小さく届ける」

という思いが先行して表現ができるZINE(個人出版物)。

 

店主のひとりでもある岡田孝之介さんは、「ZINEは、SNSの前のSNS」と、話してくれました。

 

おくば洋書店は、リソグラフ印刷を軸に3人のユニットで運営されていて、

始まりは「バイソン」での出会いだったそうです。

 

音楽をしたい人、英語を教える人、本をつくる人。

 

さまざまな興味や活動が重なり合い、今のお店の形へとたどり着いたんだとか。

 

 

 

岡田さんは洋書についても語ってくれました。

 

日本語で文学に触れることと英語で触れるのでは全然違うそうで、

国によって太陽や海の色や感覚が違う様に、

そこから生まれる本や手触りの感覚そして、言語感覚も違うというお話に、

素直に納得しました。確かに瀬戸内海と日本海でも海の感じ方が違うよなと。

 

他の文化を知ることは、

自分や地域のアイデンティティに出会い直すことでもあるのかもしれません。

 

話はつづき「ATTENTION(集中)」へ。

 

一人ひとりの注意力が失われつつある、というお話。

 

グローバル社会だからこそ情報が広がる一方で、情報が多すぎて、

違いに気付けないという機会も増えているのかもしれません。

 

周辺の地域についても調べているそうで、良い部分も悪い部分も集中しながら、

プロセスも大事にしつつ、異文化に触れる機会をここから作っていきたいと。

 

「はじまりって難しいね、でも輪がどんどんひろがる、それがちょうどいいんですよ。」

 

そんな言葉を交わしながら、ゆったりと流れる時間の中で、岡田さんとリラックスして語りあえました。

 

 

ちょうどお話した日、私は奥歯が痛かったこともあり、

「OKUBA」という名前が妙に気になりました。

 

由来を聞いてみると、この場所がまちの奥にあり、

もともと物置だったことから付けられた名前なのだそうです。

 

そしてロゴは、鍵と奥歯を組み合わせたデザイン。

 

そう聞くと、この場所には洋書や印刷を通して、

まちの「かみあわせ」を開く鍵が隠れているようにも思えてきます。

 

飲み物を飲みながら過ごしたり、

本を自分でつくったり、

音楽イベントやDJイベントが開かれたり。

 

何気ない風景を広げる鍵が見つかるのかもしれません。

Information

おくば洋書店 okuba




住所
神戸市兵庫区湊山町25-11


アクセス
市バス7系統「平野」下車徒歩5分

(三宮駅、神戸駅、高速神戸駅からバスに乗車できます。)


営業時間
12:00~18:00


Closed
月・火・木・土曜日


Instagram
https://www.instagram.com/okuba.store/

 

後から知ったのですが、五宮神社のご神徳は、何か新しいことをやりたいなと思ったとき、

新しい自分を発見したいと思ったときにお参りするといいそうです。

 

行ってみないとわからない、

ものの手触りや香り。

 

人は頭で考えて納得すると思いきや、

全身に様々な感覚で思考し、判断していくのかもしれません。

 

意味のなさの豊かさ。

 

理由のない心地よさ。

 

特別だと思うことも、

案外身近に潜んでいるのやもしれません。

 

まちを歩き、少し集中してみる。

 

そして、ひと呼吸置いてみる。

 

特別だと思っていたことも、案外すぐそばに潜んでいるのかもしれません。

 

私もまた、ゆるりらと歩いてみようと思います。

 

 

 

歩んだ道と出会いから、

新たに描いた絵と詩をお届けしております。

それぞれの感じたままの神戸と出会えますように。

※今回の取材を元に絵と詩を毎回制作します。

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