
中国税関総署の貿易統計で、日本向けレアアース(希土類)磁石の輸出が大きく落ち込んでいると分かりました。2026年5月の対日輸出量は123トンと前月比34.6%減。規制強化の影響で、輸出が縮んだ2025年5月の水準まで落ち込みました。
磁石向けレアアースは電気自動車(EV)や産業用モーターなど、日本の製造業の中核分野で広く使われており、供給不安が長期化すれば生産計画やコスト構造への影響も懸念されます。
中国政府は今年1月6日、日本の軍事用途や軍事力強化につながる利用を念頭に、軍民両用(デュアルユース)品目の対日輸出管理を強化しました。レアアース磁石に使われるジスプロシウムなど一部元素が輸出管理の対象に入ったため、高性能品ほど許可が下りにくい状態が続いています。
中国商務省は、民生品への影響はなく、日本の再軍備や核開発の抑制が目的だと説明。実務面では審査に3カ月以上かかるケースが多いなど、運用の不透明さを指摘する声が日本企業から上がっています。
レアアース磁石の輸出量が200トンを下回るのは3カ月連続です。世界全体向けの5月輸出量も前月比7.7%減りましたが、日本向けの落ち込みはそれを大きく上回りました。米国向けも7.7%減ったものの、対中依存度が高い日本ではより直接的に影響が表れやすい構図です。
2025年11月、台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁に中国側が反発しました。これが今回の輸出規制強化の政治的背景になったとの見方も出ています。
タングステン停止と企業の危機感、規制透明化を求める声
レアメタル(希少金属)のタングステンでも、日本向け供給の急ブレーキが鮮明です。中国税関総署のデータによると、炭化タングステンとタングステン粉末の対日輸出は2026年2〜4月にゼロとなり、5月以降も停止が続いているとみられています。
自動車部品や工作機械の切削工具などタングステンを多用するメーカーにとって、代替調達は急務です。三菱マテリアルは超硬素材の価格を3倍以上に、住友電気工業も製品価格を最大6割引き上げるなど、コスト転嫁の動きが広がっています。
在中日系企業でつくる中国日本商会は6月11日発表の年次白書で、軍民両用品目の輸出管理について明確な基準の提示や十分な説明、円滑な運用を中国政府に要望しました。日本企業の間では「中国リスク」を前提とした長期的なサプライチェーン再構築が避けられないとの見方が広がっています。
代替供給源の多様化やリサイクル強化、材料置き換え技術の開発など中長期の対応が急務となっており、日本の製造業や政策当局は、外交・通商政策と産業戦略を一体で考える局面に差し掛かっているといえるでしょう。
