訪中し紫禁城を視察したドイツのフリードリッヒ・メルツ首相(2月26日、写真:AP/アフロ)
(英エコノミスト誌 2026年6月13日号)
欧州は中国の補助金に注目し、中国は欧州の弱点を見て取っている。
古代ギリシャの歴史家トゥキュディデスは、新興の大国は紛争を引き起こすことが多いと考えていた。
もしそのトゥキュディデスが現代の経済学者として中国による欧州への輸出の爆発的拡大を目にしたら、貿易戦争が始まると予想したかもしれない。
近ごろは、そう予想するアナリストが少なくない。
問題はもはや、欧州が一部の跳ね橋を吊り上げるか否かではなく、何本の跳ね橋をどれほど急いで吊り上げるか、そしてその結果にどう対処するかに移っている。
欧州の経済問題の原因は本当に中国なのか
何が危険にさらされているかは明らかだ。欧州連合(EU)では企業の破綻が2015年以来の水準に増加している。
ドイツでは2025年、工業部門で14万3000人の職が失われた。欧州諸国のほとんどは経済成長が滞り、工業生産が減少している。
フランスとドイツでは極右政党が世論調査で第1位の支持を得ている。
6月18日開催のEU首脳会議では、ますます苦しくなる世界経済において中国からの挑戦にどう対処するかを話し合うことになる。
欧州の経済問題の原因は本当に中国なのか。
中国に対するEUのモノの貿易赤字は2025年、1日当たり約10億ユーロに達し、パンデミック前のおよそ2倍の水準に上っている。
特にドイツでは、中国からの輸入が着実に増加する一方で中国への輸出が急減している。
これについては、インチキがまかり通っていると見る人もいる。
主に豊かな国々で構成される経済協力開発機構(OECD)の調べによれば、2005年から2024年にかけて中国企業が受け取った補助金はOECD諸国の企業が受け取ったそれの3~8倍に達していた。
そうした中国企業のなかには、補助金がなければ破綻していたところもあるだろう。工業を営む中国企業の32%は赤字だからだ。
中国のせいだとする見方に懐疑的な人は、欧州のエネルギーコストの高さ、手続きに時間がかかる官僚制、イノベーション(技術革新)やインテグレーション(垂直統合)ができないことが真の原因だと主張する。
さらに悪いことに、中国からの材料・部品の輸入を妨害すれば、川下に位置する欧州企業が打撃を受け、欧州の競争力をかえって削いでしまいかねない。保護されている「戦略的」セクターはすでにかなりの数に上る。
