ミイラ化したペルービアン・ヘアレス・ドッグの頭蓋骨に、赤い顔料が塗られたものも見つかった。第一前臼歯と第三後臼歯がないという特徴が犬種の特定につながった。(WERONIKA TOMCZYK)

ミイラ化したペルービアン・ヘアレス・ドッグの頭蓋骨に、赤い顔料が塗られたものも見つかった。第一前臼歯と第三後臼歯がないという特徴が犬種の特定につながった。(WERONIKA TOMCZYK)

 ペルービアン・ヘアレス・ドッグ(ペロ・ペルアノ・シン・ペロ)という少し変わったイヌがいる。毛がなく、しわだらけの姿をしているが、ペルーでは国の象徴として親しまれている。2001年には、このイヌが国家遺産であり、「守るべき犬種」だとする法律がペルー議会を通過したほどだ。

 そして今回初めて、古代ペルーにいたワリ族と呼ばれる人々が、このイヌを伴侶として暮らしていた証拠が見つかった。インカ文明が登場する数世紀前のことだ。(参考記事:「インカ以前、ワリ帝国「ビール外交」の謎を解明」)

「人間のそばに埋葬されたのですから、何らかの結びつきがあったはずです」。米ダートマス大学の考古学者で、この発見を報告した論文の著者であるベロニカ・トムチク氏はそう話す。

 今から10年ほど前、ペルーの首都リマから300キロほど北の海岸近くにあるエル・カスティーリョ・デ・ウアルメイ遺跡の発掘調査で、ポーランド人、ペルー人、米国人の考古学者による合同チームが、20頭以上のイヌのものとみられる340個ほどの骨を発見した。そして、そのうち3頭が古代のペルービアン・ヘアレス・ドッグであることがわかった。(参考記事:「58人の女性が埋葬された謎の墓、インカ以前のワリ帝国」)

ペルーのエル・カスティーリョ・デ・ウアルメイ遺跡から、20頭以上のイヌのものとみられる340個ほどの骨が発見された。(MILOSZ GIERSZ)

ペルーのエル・カスティーリョ・デ・ウアルメイ遺跡から、20頭以上のイヌのものとみられる340個ほどの骨が発見された。(MILOSZ GIERSZ)

「発掘の目的は別のものだったので、イヌの骨が見つかるとは思っていませんでした」とトムチク氏は話す。「しかし、これが見つかって、絶対に詳しく調べなければと思いました」

 この遺跡は、アンデス最初の帝国を築いたとされるワリ族の墓地であり、霊廟だった。ワリ族は、紀元600年から1050年ごろまで、約400年にわたってペルーを支配していた。有名なインカ帝国が登場したのは、そのあとだ。(参考記事:「姿を見せ始めたインカ帝国 幻の城塞都市「アンコカグア」か」)

「ワリ族は文字を残しませんでした。たとえば、私たちのインカに関する知識のほとんどは、スペイン人による接触記録など、初期の植民地の記録がもとになっています」と、米イリノイ大学シカゴ校の考古学者で、今回の研究には関与していないデビッド・リード氏は述べる。

「さらに、インカはワリ族の道の上に新しい道を作りました。インカの大きな遺跡に埋もれてしまった場所もあります」

 エル・カスティーリョ・デ・ウアルメイ遺跡からイヌの骨が見つかったことは、謎の多いワリ族の実像や、ワリ族と動物の関係、埋葬の儀式などを解き明かす小さな手がかりのひとつとなる。

次ページ:食べていたものまで判明、イヌが特別扱いされていた証拠が続々(有料記事)

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
定期購読者*のみ、ご利用いただけます。

*定期購読者:年間購読、電子版月ぎめ、
 日経読者割引サービスをご利用中の方になります。

おすすめ関連書籍

おすすめ関連書籍

古代史マップ

世界を変えた帝国と文明の興亡

古代エジプト、共和制ローマ、漢などの世界を変えた強国から、カルタゴ、クレタ、オルメカなどの謎が残る文明まで、古代世界の勢力の変遷や時間の流れを視覚的に理解できる!
〔電子版あり〕

定価:1,540円(税込)

Share.