ネタニヤフ首相の肖像画を焼いて抗議するイスタンブール市民(3月13日、写真:ロイター/アフロ)

(英フィナンシャル・タイムズ紙 2026年6月9日付)

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフにとって、イランとの戦争は30年越しの夢の成就だった。首相は何十年も前から、イランがイスラエルに対して国の存亡にかかわる脅威を突き付けていると警告してきた。

 そして今年2月28日、ついにイランへの全面攻撃に踏み切った。ネタニヤフにとって願ったりかなったりだったのは、対イラン戦争が米国との共同作戦だったことだ。

 ネタニヤフは、戦争がイランのレジームチェンジ(体制転換)をもたらすとドナルド・トランプを説得した。少なくとも、自国へのイランの脅威に終止符を打つ決意だった。

 だが、ネタニヤフのイラン作戦は大きく狂った。

 イランの指導体制はまだ盤石で、まだイスラエルにミサイルを発射できることを示した。

 イランが後ろ盾になっているレバノンの武装組織ヒズボラはイスラエル北部に砲弾を撃ち込み、レバノン国内でイスラエル軍と戦闘を繰り広げている。

 そして今、ネタニヤフとトランプとの緊密な同盟関係に激しいストレスがかかっている。

 7日夜のイランによるミサイル攻撃は、イスラエルがベイルート南部を空爆したことへの報復だった。今度はイスラエルがイランを爆撃することで応戦した。

 だが、トランプはこれ以上の戦闘激化は阻止する決意を固めているようだ。大統領はフィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、「すべての決定権を握るのは私だ。決めるのは彼(ネタニヤフ)ではない」と語った。

イスラエル首相が迫られる究極の選択

 ネタニヤフは極めて困難な選択を迫られている。

 イランとヒズボラに対する攻撃を中止し、イランの体制とイスラエル国民の両方の目に弱腰に映るリスクを冒すのか。それともトランプに逆らい、米国との同盟関係を危険にさらすのか。

 イスラエルの政治家は盛んに、イスラエルは自国を防衛する方法について自ら決断を下す主権国家であることを世に示すと勇敢な言葉を発しているが、同国は依然として米国の兵器と防空に大きく依存しているのが現実だ。

 このジレンマをなおさら深刻にするのが、トランプが仲介に取り組んでいる和平合意は恐らく、財政状態が以前より強くなり、まだ多少の核開発能力を持ったイランを後に残すことだ。

 ホルムズ海峡を成功裏に封鎖したことは、新しく強力な手段をイランに与えた。

 イランの体制が湾岸諸国の米軍基地とインフラを攻撃できること、かつ報復で倒されないことを示したことにより、イランの抑止力も強まった。

 ネタニヤフは、イスラエルはヒズボラを攻撃するフリーハンドを得なければならないと主張している。

 ヒズボラは過去にイスラエル北部で数千人の住民に避難を強いた。そのヒズボラに対するイスラエルの攻撃は100万人以上のレバノン人に避難を強いている。

 だが、トランプは先週、ネタニヤフに電話し、どうやら罵り言葉を使ってレバノンでのイスラエルの軍事作戦を縮小するよう指示した。

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