穏やかな瀬戸内海に瀬戸内しまなみ海道が伸び、周囲には豊かな山々が広がる。森と海がともに近く、産業も盛んな愛媛県今治市は、近年、移住者が増えているのだそう。新たな暮らしを求めてこの地に移り住んだ人たちを訪ねた。
愛媛県今治市
愛媛県の北部に位置する人口約15万人の市。造船などの海事産業やタオルを中心とする繊維産業が盛んで、県では松山市に次ぐ第2の経済圏になっている。また陸地部のほかに島嶼部も。大島、伯方島、大三島の3つの島とはしまなみ海道でつながっており、車での行き来が可能だ。
広々とした古民家で森と海と身近に暮らす
埼玉県→今治市陸地部
〈企画百貨〉
小林友紀さん、祐太さん
市街地からは車で15分ほど。小林友紀さん、祐太さんご夫婦は、みかん畑に囲まれた山間部の一角で、5歳と7歳の息子さんとともに4人家族で日々を送っている。
オフィススペースも広々。子供部屋とは階段でつながり、声がいつでも届く造りに。
住まいとしたのは、広々とした庭に立つ築70年超の日本家屋。昔ながらの趣を残してリノベーションし、床面積180㎡の中にはゆったりとしたリビングや子供部屋、2人が立ち上げたPR会社〈企画百貨〉の事務所も確保。公私にわたる暮らしの拠点としている。
フルリノベーションした古民家のリビングにて。趣ある建具などは既存のもの。この日次男は保育園へ。
「重視したのは広さです。やんちゃ盛りの子供たちがいると、遊ぶにも荷物の整理にも、スペースが必要で。都会ではできないようなのびのびとした子育て環境を求めて今治に移住したので、譲れない点でした。そのうえで、私自身が学生時代に建築を学んでいたこともあり、木と漆喰の伝統的な家への憧れがあったんです。10軒以上を見て回り、ようやく見つけたのが今の場所です」(友紀)
玄関土間の天井は抜き、古民家特有の薄暗さを解消。
友紀さんは今治、祐太さんは岡山・倉敷の出身。瀬戸内エリアにはかねて縁があった2人だが、移住前はともに都内のPR会社に勤務。埼玉に住み、都心にラッシュ通勤する日々だった。変化したのはコロナ禍。2020年の第2子出産がターニングポイントになった。
緑豊かな庭で子供たちは木登りを習得。
「里帰り出産をして埼玉に戻ると、すぐに緊急事態宣言が発令されました。保育園も休みになり、どこへも出かけられない状況のなかで、狭い家や不自由な環境で0歳と1歳の子供を抱えることに不安を感じたんです。
結婚当初から夫婦では、子育てがひと段落した後やリタイア後に瀬戸内に戻りたいねと話していたんですが、冷静に考えると、むしろ子育て期間中に地方に身を置くことでプラスになることも多いのかもしれないなと。自然と移住に心が決まっていきました。リモートワークが定着したことも、首都圏を離れる決心を後押ししましたね」(友紀)
ボルダリングパネルに小窓にと仕掛けが満載の子供部屋。
