拡散する性的ディープフェイクと規制なきネット社会の危険性

伊東 乾

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2026.6.2(火)

イタリアのメローニ首相に握手して何か囁く米国のトランプ大統領(2025年10月13日エジプトで、写真:代表撮影/AP/アフロ)

 連休中の2026年5月5日のことでした。イタリアの女性首相、ジョルジャ・メローニ氏が、自身の顔にランジェリー姿の体を合成した「ディープフェイク・ポルノ」を自らのX(旧ツイッター)に添付して公開、こうしたメディア濫用を非難しました。

 リンクのご本人の弁を抜粋して紹介してみましょう。

「最近、AIを使って生成された私の偽写真がいくつか出回って、熱心な反対派によって本物であるかのように流布されています」

「添付写真に限っては、作成者が私をかなり魅力的に仕上げてくれたことは認めざるを得ませんが、攻撃したり虚偽をでっち上げたりするためなら、もはや何でもあり、という事実に変わりはありません」

「ディープフェイクは、誰をも欺き、操作し、傷つける可能性がある危険なツールです。私には身を守る手段がありますが、多くの人はそうではありません」

「だからこそ、常に守るべきルールがあります。『信じる前に確認し、共有する前によく考える』ということです。今日は私が標的ですが、明日は誰にでも起こり得ることだから」

 今年5月、私は大学に着任して以来28年間で初めて「旧・東京大学新聞研究所・教育部」(現・学際情報学府)のインカレ学部学生、社会人学生のオムニバス講義を担当し、AI濫用と表現の問題を取り扱いました。

 今回はこの「イタリア女性首相のランジェリー姿」を起点に、背景と課題とを考えてみましょう。

「盗撮フェイク」半数は同級生の仕業

 同じ「性的ディープフェイク」でも、日本国内では小中高校生が密かに顔を盗撮され「性的画像」に加工されるケースが報道されています。

 しかも、加害者の約半数が同じ学校の生徒や同級生、つまりローティーンやミドルティーンが犯人として特定されるという、直視せざるを得ない現代の地獄絵図が報じられています。

 イタリアのメローニ首相の場合も、日本の女子学生のケースでも、こうしたネット上の濫用行為は、捜査が進めば犯人が特定される可能性が高い。

 ネットワーク上にはありとあらゆるフットプリントやデジタル痕跡が残っているからです。

 こうした悪戯は、すでに悪戯の域を脱して犯罪が成立している可能性が高いので、もし犯罪の認識がないとすれば、かなり幼稚な犯人ということになります。

 もちろん、情報ネットワークのメカニズムに不案内な、ITリテラシーが十分ではない層である可能性が高いのです。

 実際、メローニ首相の肖像を用いたディープフェイクの犯人は、サルディニア島在住の40歳の男とその父親である73歳の男性がすでに捜査・訴追の対象となっています。

 しかし、一度ネット上に流布されたコンテンツを回収することは困難というより不可能です。覆水盆に返らずの状態になります。

 メローニ首相のケースでも、いったん拡散してしまったフェイクポルノは彼女自身のデジタルタトゥーとして水面下に定着、政治的反対勢力による濫用が懸念されています。

 ただ、実はここには、やや皮肉なブーメラン現象を指摘することもできます。

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