著:James Dwyer(タスマニア大学、Lecturer, Public Safety)
アメリカとイスラエルによるイラン攻撃、そしてそれに続くイランの報復攻撃によって対立が激化する中、イスラエルがレバノンからヒズボラが発射したロケット弾の迎撃にレーザー兵器を使用した可能性があるとの報道が浮上している。
この報道は未確認だが、ソーシャルメディア上で拡散されている動画では、ロケット弾が目に見える迎撃なしに発射直後に破壊されているように見える。これはレーザーなどの「指向性エネルギー兵器」による効果と一致している。
イスラエルが最新鋭のレーザー防空システム「アイアンビーム(Iron Beam)」を使用したのは今回が初めてではないとみられるが、この出来事は、小型ロケット弾の集中攻撃や、低価格ながら性能が向上しているドローンへの対応に各国軍が追われている現状を浮き彫りにしている。
⚡HISTORIC: For the first time ever, Israel used the Iron Beam to intercept rockets fired by Hezbollah. pic.twitter.com/DU63REU22k
— Israel War Room (@IsraelWarRoom) March 2, 2026
◆アイアンビームとは何か
多くの防衛システムは、飛来する脅威に対してロケット推進式のミサイルを使用する。一方、アイアンビームは、指向性エネルギー兵器とも呼ばれるレーザーを用いる。
通常のミサイルは、ドローンや砲弾、ロケット弾に衝突したり、その近くで爆発したりすることで対象を破壊する。これに対し、アイアンビームは極めて強力なレーザーを照射し、標的を焼き切ることで破壊する。
「イスラエルの高エネルギーレーザー国家中核拠点および国家致死性研究所として機能している」とするラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズが製造した小型版アイアンビームは、2022年に初めて実験に成功した。このシステムは昨年、ヒズボラが発射したドローンを撃墜するため、初めて実戦投入された。
アイアンビームは、移動式トレーラーに搭載された100キロワット級の固体レーザーを使用する。脅威の方向に応じて柔軟に配置や移動が可能で、イスラエルの既存の多層防空システムに新たな防衛層を加える役割を担う。
◆アイアンドーム、ダビデのスリング、アロー防空システムとの違いは何か
レーザー兵器がミサイルより優れている最大の点はコストだ。アイアンドームの迎撃ミサイル1発の価格は約5万ドルとされ、大規模あるいは頻繁な攻撃への対処では費用が急速に膨らむ。
これに対し、アイアンビームの発射コストははるかに低い。2022年、当時のイスラエル首相ナフタリ・ベネット氏は、1回の発射コストは約3.5ドルと説明した。さらに最近の推定では、現在では1回あたり2.5ドル程度まで低下している可能性も指摘されている。

高出力レーザー兵器によるドローン迎撃試験|Office of Naval Research / Wikimedia Commons
この経済性だけでも、各国軍がこうした兵器の開発や配備を進める大きな動機となっている。
アイアンビームを含む指向性エネルギー兵器のもう一つの大きな利点は、弾薬切れが起きない点にある。ミサイル砲台は使用後に再装填が必要だが、エネルギー兵器は電力さえ確保できれば運用を継続できる。
発射回数を制限する最大の要因は、大量のエネルギー消費による過熱だ。レーザー兵器は最終的に冷却のため発射を停止する必要があり、そうしなければ熱によって損傷する恐れがある。
過熱するまでに何回発射できるのか、またどの程度の頻度で連続使用できるのかについて公表されている情報は少ない。ただ、それでも従来型兵器の多くを上回る連射能力を持つと広く考えられている。
もちろん、アイアンビームが単独で運用されるわけではない。イスラエルは他にも複数の防衛システムを保有しており、比較的安価なアイアンビームを優先的に使用し、必要に応じて他システムで補完することが可能だ。
指向性エネルギー兵器のもう一つの制約は射程距離にある。ダビデのスリングやアローのようなミサイルほど遠距離には届かず、主にドローンや砲撃、短距離ミサイルへの対処に限られる。
また、地上配備型の指向性エネルギー兵器では、高高度を飛行する長距離弾道ミサイルには対応できない。さらに、雨や湿気、曇天などの環境では性能が低下する。
◆現在の紛争においてアイアンビームはどのような役割を果たしているのか
アイアンビームや、他国が開発・配備を進めている指向性エネルギー兵器は、既存の防衛システムを置き換えることを目的としているわけではない。あくまで補完的な役割を担うものだ。発射コストが大幅に低いため、自爆型ドローンや砲弾といった「低コストの脅威」への対応能力を大きく高められる。
昨年のイランとの紛争では、アメリカ、イギリス、イスラエルは、比較的安価なイラン製ミサイルやロケット弾、ドローンへの対処のために、極めて高価なミサイルを大量消費している現実を早い段階で認識した。
アメリカはこれを受け、戦闘機により安価な対ドローン用ロケット弾を大量搭載するための緊急プログラムを進めている。
指向性エネルギー兵器は、地上防衛や海上防衛においても、同等あるいはそれ以上の利点をもたらす可能性がある。
アメリカとイスラエルの双方は、2025年の前回のイランとの紛争で防衛用ミサイルの大部分を消費したと報じられている。指向性エネルギー兵器の導入は、こうした弾薬備蓄の温存にもつながる。
ミサイル備蓄は短期間で容易に補充できるものではない。仮に補充できたとしても、大規模あるいは長期的な攻撃を受ければ再び急速に枯渇する可能性がある。
短距離または低速の脅威への対処手段を確保できれば、より高価なミサイルを温存することが可能になる。
◆今後の展開は
戦闘用レーザーはいまだにSFのような存在に聞こえるかもしれない。しかし、こうした兵器を開発・配備しているのはイスラエルだけではない。
アメリカは、海軍艦艇における対ドローン・対ミサイル用レーザー防衛システムの実験を行っている。中国や日本も、海上および地上配備型の指向性エネルギー兵器を試験している。
特に海軍艦艇にとって、指向性エネルギー兵器の利点は極めて大きい。海上で防衛用ミサイルを再装填することは難しく、多くの場合は帰港を余儀なくされる。
高強度の紛争、あるいは低強度でも長期化する紛争では、これは重大な問題となり得る。また、ミサイル備蓄を使い果たした場合や、再武装のため港に停泊している際には、艦艇が脆弱な状態に置かれる恐れもある。
弾薬切れは、防衛システムにとって深刻な懸念事項となることが多い。指向性エネルギー兵器はこの問題を軽減できるため、技術の進展とともに、今後こうした兵器がさらに普及していく可能性が高い。
※本記事は2026年3月4日に公開された英文記事を翻訳・編集したものです。
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
Translated by NewSphere newsroom
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