輸出規模年間350億ユーロを超え、今やヨーロッパ屈指のファッション大国となったスペイン。ラグジュアリーからアクセシブルまで、幅広いレンジのブランドが世界で存在感を放っている。そんなスペインファッションの懐の深さは、他都市にはない、大きな魅力の一つだ。

「バレンシアガ」を生み、「ZARA」を世界に広め、そして今、「パロモ スペイン」がビヨンセやハリー・スタイルズを虜(とりこ)にしている。スペインのファッションは、いつの時代も控えめながら確実に力強く世界を動かしてきた。その輸出規模は年間350億ユーロを超え、2年連続で過去最高を更新。ヨーロッパの主要国と並び、ファッション革新国の一つとして、いま改めてその存在感を世界に示している。

1846年創業の「ロエベ」は、今もマドリードに工房を持ち、精緻なレザーワークを守り続けている。リアーナがスーパーボウルの華やかなステージの衣装として選んだのも、このブランドだった。「バレンシアガ」や「マノロ・ブラニク」がパリやロンドンで才能を開花させた一方、「ロエベ」はスペインに根を張りながら世界のラグジュアリー市場の頂点へと上り詰めている。クワイエット・ラグジュアリーへの関心が高まる昨今、何世紀にもわたって受け継がれてきたクラフツマンシップの価値が再び、称賛を集めている。

靴もまた、スペインが世界に誇る産業の一つ。職人技と素材への敬意が今も生きる産地で丁寧に作られた靴は、快適さとデザイン性を兼ね備え、世界の厳しい市場で高い評価を得ている。モデルのカイア ガーバー、BLACKPINKのリサが愛用する「アロハス」や、モナコのアレクサンドラ王女などのロイヤルたちも好む「フラベルス」などの人気ぶりは、スペインの靴づくりが持つ底力の表れだ。

日本とスペインの縁も深い。1990年代から日本で一大ブームを巻き起こした「シビラ」も、スペイン・マドリード出身のデザイナーが生み出したブランドだ。さらに「ZARA」や「MANGO」は、「ファッションを誰もが楽しめるものへ」という哲学で日本のみならず世界を席巻。スペインの繊維産業の生産力を背景に、流行を素早く、手が届く価格で提供することを可能にしている。同時に、衣料業界が抱える環境問題に向き合いながら、循環型ファッションへの取り組みを進めていることでも知られている。ラグジュアリーとコンテンポラリー​、伝統と革新、デザイン性と技術……異なる要素をすべて網羅しながら、どれも疎かにはしない、それがスペインファッションのDNAだ。

そしていま、最も目が離せないのが「フアン ヴィダル」や「パロモ スペイン」「デ・ドゥエ」を始めとした多様な新世代デザイナーの台頭だ。彼らはそれぞれまったく異なるアプローチで、世界へクリエーションの発信を続け、スペインファッションの「今」を雄弁に語っている。

ヨーロッパの多様なファッション文化の中で、スペインは、振り幅の広い誠実なもの作りと、確かな技術に裏打ちされた創造性によってその存在感を増している。

レザーから生まれたスペインの至高「ロエベ」

1846年、マドリードで革職人たちの工房として誕生した「ロエベ」。180年以上にわたり受け継がれてきた精緻なレザーワークを核として常に進化を続けている。現代アートとクラフツマンシップを融合させた独自の世界観で、いまや世界中が注目するラグジュアリーハウスの一つに。2025年からは、ニューヨーク発のデュオ、「プロエンザ スクーラー」の創設者ジャック・マッコローとラザロ・へルナンデスを新たなクリエイティブ ディレクターに迎え、新章へと歩みを進めている。

革新的なクラフトとレザーの技芸を駆使して、可能性の限界を追求した2026FWコレクション

革新的なクラフトとレザーの技芸を駆使して、可能性の限界を追求したロエベの2026秋冬コレクション

モード史を彩る、スペイン生まれの天才たち

20世紀最高のデザイナーと称されるクリストバル・バレンシアガは、スペイン・バスク地方の生まれ。パリに渡り、建築的なシルエットと革新的なカッティングでオートクチュールの頂点を極めた。「私たち全員のマスター」とクリスチャン・ディオールに言わしめたその功績は、今も世界中のデザイナーに受け継がれている。

©Bettmann/Getty Images

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©Horst P. Horst/Getty Images

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カナリア諸島出身のマノロ・ブラニクもまた、ロンドンを拠点に靴の概念を塗り替えた存在。スペインという豊かな土壌が育てた美意識が、世界のファッション史を動かした。

©The Chronicle Collection/Getty Images

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スペインと日本を繋ぐファッションの架け橋

マドリード出身のデザイナー、シビラ・ソロンドが1983年にスタートしたブランド「シビラ」。有機的なラインと上質な素材使いで、日本では1990年代から社会現象とも言えるほどのブームを巻き起こした。ライセンスビジネスでも大きな成功を収め、今も根強いファンを持つ。トレンドに左右されない普遍的なデザインと、着る人の個性を引き立てるシルエットは、スペインのファッションが持つ本質的な魅力そのもの。日本とスペインのファッションを繋ぐ架け橋について語るには欠かせないブランドだ。


ビヨンセも虜に、スペイン新世代の存在感

スペインの今を体現するブランドに世界中から熱い視線が集まっている。

アリカンテ出身のデザイナーが手掛ける「フアン・ヴィダル」は、女性の強さと官能性を精緻な技術で表現。ヴォーグ誌「Who’s On Next」賞などを受賞し、国内外で高い評価を受ける。


コルドバ出身のデザイナー、アレハンドロ・ゴメス・パロモ。彼が2016年に立ち上げたブランド「パロモ スペイン」は、アンダルシアのバロック的叙情性とロンドン仕込みの前衛性が混ざり合う唯一無二の存在。ビヨンセ、ハリー・スタイルズ、ロザリアが着用し、2024年にはスペイン国家ファッションデザイン賞も受賞。

©Carlos Alvarez/Getty Images

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©︎marie claire/text: Tomoko Kawakami

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