仕事、家事、介護にと、忙しい大人世代。新しい学びを通じて自分のライフステージを切り替えたい人も多い。プチ海外留学へのチャレンジも一つの手だ。今回、紹介するのはニュージーランドでのプチ留学。45歳からの大人のプチ留学 ニュージーランド編 <前編>https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/71b2420aca341050140e496488b90b8bba1e4385から続く。
◆ニュージーランドの時給はおよそ2150円 ワーホリの若者たちが目指す場所
ニュージーランドのオークランドで通っていた語学学校Worldwide School of Englishでは、午後のスピーキングの代わりに、キャビンクルー、初級医療英語、履歴書の書き方、発音、NZ文化、ビジネス英語、TOEICなどを追加料金なしで学べた。キャビンクルーのコースでは、飛行機の機内を模した教室を使った授業があった。
午後の選択授業で選べるキャビンクルーコースが使うのは、飛行機の機内を模した教室だ。(撮影:WWSE)
また、金曜日の放課後にはバリスタの体験クラス(90ドル・2026年4月現在)もあった。学生の多くは、ワーキングホリデーできている20代。彼らは最初の3ヶ月程度、語学学校で過ごし、そのあと仕事を探す。職探しのために、こうした専門分野の授業や、履歴書の書き方などが提供されていた。
朝マックのソーセージマックマフィンのセットは12NZドル(およそ1200円)。日本経済の衰退をまた実感。(撮影:海南友子)
ニュージーランドの最低時給はNZ$23.95(約2,155円・2026年4月現在)で、日本は全国平均の最低賃金は1,121円(2025年現在)なのでおよそ倍だ。ちなみにマクドナルドの朝マックも日本円で1200円。物価は高いのだが、こちらで2000円越えの時給できちんと稼げれば貯金を持って帰国することも可能だ。私が20代だった1990年代は、ワーホリは黎明期で対象国も少なく、メジャーではなかったが、今はカナダや豪州など人気の目的地が色々ある。ニュージーランドは少し地味だが治安もいいし、オークランドは多民族都市なので働きやすそうだと感じた。
オークランドの中心部には素敵な路地がたくさんあった(撮影:海南友子)
◆せっかくだから勉強漬けになってみた 仕事のつもりで連日8時間の勉強
4週間と滞在期間が短く、ワーホリでも無い私は選択コースはとらずに、とにかく愚直に勉強漬けになってみた。中学受験をしたとき以来の勉強量だ。朝7時に家を出て、8時からカフェで自習。9時から1430まで学校の授業。放課後は図書館かおしゃれなフードコートで1730まで勉強した。ランチの時間を除くと毎日8時間以上になった。もってきた分厚いノートはたちまちいっぱいになり、あわてて文房具店で新しいノートを買った。
毎朝自習していたカフェのお姉さん。途中からオーダーしなくてもアールグレイが出てくるようになった。ちなみに価格は1杯600円(撮影:海南友子)
日本にいると「歳をとって単語も覚えられない」と勝手に思い込んでいたが、お金を払ってきているので、日本でダラダラやる何百倍ものスピードで勉強が楽しめた。大人がコストをかける良さはここにあるのかもしれない。仕事だと思えば8時間の勉強などなんでも無い。ちなみに4週間で合計160時間の勉強をした。日本で週1の英会話スクールに通うと換算すると3年半に当たる。だからなんだと言われたらそれまでなのだが、短期集中はコスパ、タイパ的に自分的にはとてもあっていた。毎朝、自習していたカフェでは、途中から何もオーダーしなくてもアールグレイのストレートが出てくるようになった。プチ常連体験だ。最終日には、毎朝、丁寧に対応してくれた女性スタッフに、感謝を込めて日本のお菓子を渡した。こんな出会いもプチ留学の楽しみの一つだ。
◆大人のプチ留学成功の秘訣とは?
大人のプチ留学を成功させる秘訣は一体なんだろう。日本人ステューデントサポートのTakafumiさんに伺った。
左が日本人ステューデントサポートのTakafumiさん。右のダニエルさんも日本への留学経験があり日本語が流暢だ。(提供:Worldwide School of English)
「大人の留学の成功の秘訣は、心を開いてオープンな方、なんでも体験してみたいというチャレンジ精神がある方がより楽しめると思います。日本の習慣や常識にとらわれていると、ニュージーランドの生活や、若いクラスメイトと馴染むのが大変に感じる時もあります。新しい自分になって年齢のことはあまり考えず、心のリミッターを外すことも大切です。また、年齢に関わらずなのですが、日本人の傾向で、困り事があっても遠慮して言い出せず、後で問題が大きくなることがあります。特にホームステイは、受け入れ家庭の人種や習慣もさまざまで、家族として生活する中で必ず課題が生じます。自分が難しいと感じたときには、早めにコーディネーターなどに相談して解決策を見つけることが、楽しい留学にするには大切です。」
ワーキングホリデーで留学していた学校のクラスメイトとステーキ店へ。現役の大学生、専門職の社会人など色々な人がいた。(撮影:海南友子)
ワーキングホリデーのクラスメイトと。老舗のステーキ店の価格は一人4500円程度。意外とリーズナブルだった。(撮影:海南友子)
私自身も、積極的に話しかけることで、南米やアジア各国に新しい友達がたくさんできた。クラスの日本人女子と、ベトナムの甘味やアイスを食べに行き、ワーホリビザの子たちとステーキを食べに行き、別れの日にはみんなとインスタやメアドの交換をして、とにかく自由で楽しい日々だったと噛み締めながら帰国した。自分の中にある「年齢」というバリアを取り払い、誰とでも仲良くすることが成功の秘訣なのだろう。
Takafumiさんは「私自身も10年以上ニュージーランドに住んでいますが、気候が温暖で治安が良く、人も穏やか。ストレスがあまりなくのんびりと勉強できることが、大人の方におすすめできる理由です。特にオークランドは多民族都市なので、差別もあまりなく、日本食のレストランもたくさんあります。日本と季節が真逆なので、ニュージーランドの秋冬(日本の春夏)に渡航すると気候になじみやすいです。冬は厳しく寒くならないため、8月など日本の真夏を避けた『避暑地』としての滞在にもおすすめです。」と付け加えた。
雨上がりのオークランドには連日、虹がたくさん出た。こちらは貴重なダブルレインボー。大人のプチ留学を応援してくれていると勝手に感じて嬉しくなった。(撮影:海南友子)
◆半年の準備期間と資金計画
最後に、準備期間と料金の概要について。準備開始はプチ留学の5ヶ月前。学校選択の相談は、留学エージェント大手のISS留学ライフさんにお願いした。たまたま仕事でニュージーランドに行くことになり、それに休暇をくっつけて留学先を探すことになった。学生向けの留学サイトを見て、ISS留学ライフさんに思い切って相談したら、大人の留学にも対応可能と説明を受け、行き先の都市や学校について複数の提案をしてもらった。大学生や中高生の留学をメインに扱っているため、出発前の説明や資料はとても丁寧で、特にホームステイの心得はかなり参考になった。また、渡航前に無料でオンライン英会話が受け放題だったのも魅力だった。
(提供:ISS留学ライフ)
(提供:ISS留学ライフ)
かかった代金は学校とホームステイを合わせて4週間でおよそ50万円(2026年1月現在)。滞在都市やコース、扱う代理店によって値段は変わるため、あくまでも参考価格だ。ビザは90日までは不要だが、ニュージーランドの簡易ビザNZeTA(アメリカのESTAと似た事前審査)は必要になる。飛行機代はカンタス航空で燃料費込み19万円。時期によるがフィジー航空で最安値は10万円程度のチケットもあった。合計およそ70万円の支払いの原資になったのは積立貯金。毎月2.5万円づつ貯めていた積立が1年半で45万円あった。足りない分は貯金から出したので70万円が高いか安いかは難しい。しかし、ホテルに泊まると1泊2万円で30日なら宿泊だけで60万円かかる。今回、語学学校とホームステイ代金(朝夕の食事つき)で50万円はコスパとしてはかなり良かった。2026年4月現在のニュージーランドの物価は日本の1.5から2倍程度。例えばバス代は初乗り3NZドル (およそ280円)、一般的なランチは2000円程度。ただし、食事に関しては何を選択するかでかなり変わる。学校の食堂ならボリューム満点のサンドイッチが600円、日本食スーパーでセール品のカップ麺なら300円程度で買える時もある。工夫すればコストを抑える方法は色々あった。ホストファミリーの許可を得れば、簡単なサンドイッチをランチ用に持参することもできるため、その意味でもホームステイのコスパは高かった。
(撮影:海南友子)
◆人生の時間に限りがあることを知っている大人だからこそ
コスパのことを書きながら、大人の余裕というといやらしいが、最後の1週間は、午後にプライベート授業を数時間追加で発注し、さらに貪欲に勉強した。コロンビア人のセバスチャン先生がとても丁寧に、私がオーダーした単元を全て満たす授業をしてくれた。追加課金で、大人買い的な発注ができるのも、大人のプチ留学の醍醐味だと思うことにする。
「若いからなんでもチャレンジできるよ」と昔、よく大人に言われた。
50代の大人になった自分が思うことは、「楽しく元気に生きているのなら、なんでもチャレンジできる」だ。そして、人生の時間が限りあるものだということを、真実味を持って知っている年代だからこそ、今、この瞬間を大切にできると言える。人生のライフステージの変わり目がきたら、どこか遠くの空の下で、プチ留学をぜひ!
◆海南友子(かなともこ):ドキュメンタリー監督
71年東京生まれ。19歳で是枝裕和のドキュメンタリーに出演し映像の世界へ。NHK報道ディレクターを経て独立。代表作は世界を3周し気候変動に揺れる島々を描いた『ビューティフルアイランズ〜気候変動 沈む島の記憶』(EP:是枝裕和)、『いわさきちひろ〜27歳の旅立ち』(EP:山田洋次)、3.11後の出産をめぐるセルフドキュメンタリー『抱く{HUG}』(15) ほか。サンダンス映画祭や釜山国際映画祭など海外映画祭での受賞多数。黒田清・日本ジャーナリスト会議新人賞受賞。2022年フルブライトジャーナリストプログラムで米国コロンビア大学に研究留学。ライフワークは環境問題。京都在住、一児の母。
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