
県高校総体の開幕が、いよいよ目前に迫ってきた。前哨戦となる南九州四県対抗バスケットボール選手権(南九対抗)県予選を制したのは大分。1月の県高校新人大会王者・明豊とともに、優勝争いの軸は固まりつつある。だが、その構図は決して盤石ではない。頂点を見据えるライバルたちも力を伸ばしている。本特集では、県総体を目前に控えた実力校の現在地に迫る。勢力図は固まりつつあるのか、それとも覆るのか。大分の頂点を巡る戦いは、すでに始まっている。第5回は名将復帰で変貌を遂げる大分鶴崎。県高校総体でダークホースとして上位進出を狙う。
【チームパラメーター】( )は昨年の数値
オフェンス 5(5)
ディフェンス 7(6)
リバウンド 5(6)
シュート 5(6)
スタミナ 6(5)
高さ 5(6)
再建は確実に始まっている。かつて一時代を築いた大分鶴崎に、名将・大津留礎監督が10数年ぶりに帰ってきた。赴任からわずか1カ月弱。南九州四県対抗県予選では4強入りを逃したものの、その戦いぶりは結果以上のものを残した。すでにチームには「大津留色」が浸透しつつある。県高校総体に向けて、ダークホースとしての存在感は日に日に増している。
着任後、大津留監督が最初に着手したのは戦術でもフィジカル強化でもなかった。「選手の名前を覚えることから始めた」。そこから見えてきたのは、それぞれの選手が持つ背景と可能性である。日常の会話や短いミーティングを重ね、「何をしたいのか」を共に探る。その積み重ねがチームに確かな変化をもたらしている。
変革期を迎えている大分鶴崎
課題は明確だ。選手間に存在する目標意識の差である。「一番を目指すチームと4強を目指すチームでは意識が違う」(大津留監督)。選手たちは4強を現実的な目標に据えているが、その先の景色を見せ切れてはいない。大津留監督はあえて同じ目線に立ちながらも、より高い次元へと引き上げるタイミングを見極めている。
その難しさの背景には、大分鶴崎という環境がある。進学実績の向上に伴い、国公立を志望する選手が増加。練習時間は2時間から2時間半に限られる。文武両道を前提とした中で、いかに強化を図るか。限られた時間の中で質を高めることが求められている。
戦術面では、現状の「勢い頼み」からの脱却が急務である。3点シュートとドライブに偏った攻撃では、試合の主導権を握り続けることは難しい。ミドルレンジのシュート強化に着手し、ハイポストからのシュート本数を段階的に増やしているのは、その解決策の一つだ。「今回の結果は偶然ではなく必然。その必然を勝つための必然に変える」。大津留監督の言葉には、明確な修正意図が込められている。
チームを引っ張るキャプテンの矢野
戦力面ではエース佐藤果奏(3年)の離脱が痛手となった。ジャンプシュートを武器にミドルレンジで得点できる存在は、攻撃の幅を広げるカギを握る。県総体には復帰予定であり、その帰還はチームに新たな推進力をもたらすだろう。加えて、同じく得点力を持つ江藤凛南(2年)、運動量と守備で支える倉岡杏佳(3年)、そしてキャプテンとしてチームを束ねる矢野桃(同)。個々の役割は明確でピースはそろいつつある。
「間違いなく伸びるチーム」。大津留監督はそう言い切る。運動量、守備意識、そして新たに芽吹き始めた技術の幅。そこにエースが戻れば、チームは別の顔を見せるはずだ。復活への道は、まだ序章に過ぎない。だが、その歩みは確かである。
(柚野真也)
