
写真は2025年10月、韓国・釜山で対面するトランプ米大統領と中国の習近平国家主席。REUTERS/Evelyn Hockstein
[北京 27日 ロイター] – トランプ米大統領は昨年10月に中国の習近平国家主席と会談した際、会談を「10点満点中12点」と評価し、ホワイトハウスは中国がレアアース(希土類)の輸出規制を「事実上撤廃」して米企業への報復措置を停止すると発表した。
しかし、実際には、中国政府はイラン戦争を巡るトランプ氏への表立った批判を控え、両首脳の前向きな会談を望む姿勢を示す一方で、米国に対する経済的圧力の手段を急速に拡充してきた。
昨年10月以降、中国はサプライチェーン(供給網)を中国から移転する外国企業を処罰する法律を制定し、レアアースの輸出許可制度を厳格化した。また、政府資金で運営されるデータセンターから外国製AI(人工知能)半導体を排除し、中国企業に米国およびイスラエル製サイバーセキュリティーソフトウエアの使用を禁止した。太陽光発電製造装置の対米輸出規制も検討している。
専門家によると、こうした動きは単なる報復的な反応ではない。中国は貿易休戦を利用して、これまでほぼ米政府の独壇場だった一連の経済的影響力ツールを構築しており、5月中旬に予定される首脳会談を前にその動きを加速させている。
北京が拠点のコンサルティング会社トリビウム・チャイナの地政学アナリスト、ジョー・マザー氏は「中国側はより長期的で幅広い基盤に根差した休戦を望んでいるが、同時に『平和を望むなら戦争に備えよ』という論理を実行している」と述べた。
2026年11月に期限を迎える貿易休戦は、中国政府が昨年、レアアースの対米輸出制限をちらつかせたことが一因となって成立した。この規制は数週間のうちに米自動車サプライチェーンで供給不足を引き起こし、トランプ氏を韓国・釜山での習氏との交渉のテーブルに引き出す一助となったとアナリストらは指摘する。
中国はその後も手をこまねいていたわけではなく、中国からの生産移転や中国産原材料の輸入に対する制裁措置に対抗するために必要と判断した複数の報復的措置を整備してきた。
4月には李強首相が中国初となる2つの規則に署名し、中国の産業・サプライチェーンを差別したり、中国企業に対する「不当な域外管轄権」を行使したりした外国企業・政府・個人を調査するための広範な権限を当局に付与した。違反が認定された場合、入国拒否、国外退去、資産差し押さえが可能となる。
イラン紛争を受けて、中国政府は新たな経済的措置への傾斜をより強めている。特にベセント米財務長官が4月中旬、イラン産原油の購入に対して制裁を科すと警告したことが契機となった。イラン産原油の80%は中国が購入している。
中国国営中央テレビ(CCTV)系の交流サイト(SNS)アカウント「玉淵譚天」は、ベセント氏の警告から2日後、新規則を法的な対抗措置として明確に位置付け、「これまでの対抗措置は主に貿易分野に集中していたが、今日の国際的な摩擦は包括的で、従来の手段ではもはや不十分だ」と記した。
在中国米国商工会議所のマイケル・ハート会頭は、サプライチェーンおよび域外管轄権に関する規則は即時発効し、企業がフィードバックする機会は設けられなかったと説明。「企業は今、非対称な状況に直面している。中国は外国企業からの調達を削減してもほとんど影響を受けないが、外国企業が中国への依存を減らせば調査の対象となるリスクがある」と語った。
<「急所」を巡る攻防>
米政府も独自の圧力をかけてきた。3月には過剰な工業生産能力と強制労働について中国に対する貿易調査を開始したほか、半導体・半導体製造装置の輸出規制により、中国の最先端半導体の生産能力を抑制している。
エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の産業政策アナリスト、チム・リー氏は「輸出規制のせいで、中国は世界で最も先進的な半導体製造装置の一部にアクセスできない状況にある」と述べた。
経済的圧力をかけようとする双方の競争は、中国がボーイング機を数百億ドル規模で購入する交渉を複雑にしている。中国政府は航空機とスペアパーツを求めているが、米政府はジェットエンジン製造に必要なレアアースのイットリウムの中国からの供給が必要だと主張していると、協議を知る米政府・企業関係者は明らかにした。
中国政府は米国の動きに対し、規制面での対抗を強めている。25年末以降、半導体メーカーに対し新たな生産能力を増設する際に国産装置を少なくとも50%使用するよう義務付け、特定の米国・イスラエル製サイバーセキュリティーソフトを禁止し、政府資金で運営されるデータセンターに外国製AI半導体の置き換えを義務付けるなど、国内代替を促進しつつ米国のサプライヤーを中国市場から締め出している。
在中国欧州商工会議所は中国の輸出規制に関する4月の報告書で、「前例のない規模でグローバルなサプライチェーンを混乱させ、経済的・非経済的な損害をもたらす」可能性があると警告した。
米国が中国の重要鉱物への依存度引き下げを進める中、中国政府は新たなチョークポイント(供給上の急所)の特定を急いでいる。当局者は太陽光パネル製造装置メーカーとの間で、最先端技術の対米輸出を制限する初期的な協議を行っている。
トリビウム・チャイナのマザー氏は「中国側はチョークポイントがどこにあるのかを特定する取り組みを強化するだろう」とし、「あらゆるものを試して、何が効果的かを見極めようとする」と見通した。
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