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2025.11.05
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ニュージーランド、7-9月失業率は9年ぶりの高水準でNZドルは?
~RBNZの11月会合での利下げを織り込む動きが強まり、FRBの利下げ観測後退も影響~
西濵 徹
要旨
ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は10月の定例会合で政策金利(OCR)を50bp引き下げた上で、追加利下げに言及するなどハト派姿勢を強めた。背景には景気失速の動きやインフレが安定していることがある。
7-9月のインフレ率は前年比+3.05%と一時的に目標上限を上回るが、コアインフレ率は対照的に鈍化している。足元のインフレ加速は特殊要因が影響している上、RBNZの見通しに沿った動きとなっている。
その一方、足元の企業マインドは低迷している上、7-9月の失業率は5.3%と2016年以来の高水準となり、賃金の伸びも鈍化するなど家計部門を取り巻く環境は悪化している。よって、金融市場では追加緩和観測が強まり、RBNZは今月26日の次回会合での利下げを織り込む動きをみせる。当面のNZドル相場はFRBの利下げ観測後退も影響して上値の重い展開が見込まれ、日本円にも外部環境如何の展開が続こう。
ニュージーランドでは、準備銀行(RBNZ)が先月の定例会合で政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を50bpと大幅に引き下げ、さらに会合後に公表した声明文において先行きの追加利下げの可能性に言及するなど「ハト派」姿勢を強める動きをみせた(注1)。RBNZがハト派姿勢を強めた背景には、足元の同国景気が失速する動きが確認されたことが後押ししたと捉えられる(注2)。なお、RBNZは8月の定例会合に合わせた公表したインフレ報告において、先行きにおけるOCRの下限が2.50%になるとの見方を示していたが、先月の大幅利下げ決定を受けてOCRは2.50%に到達している。そして、追加利下げによるさらなる深掘りを示唆した。よって、その後の金融市場においては、RBNZによる一段の金融緩和を織り込む動きをみせるとともに、そうした動きを反映して通貨NZドル相場は一段と下値を探る展開となっている。


なお、RBNZが一段の金融緩和に言及する姿勢をみせた背景には、昨年後半以降のインフレ率が目標(1~3%)の範囲内で推移するなど落ち着きを取り戻す動きをみせてきたことも影響している。しかし、昨年7-9月のインフレ率は前年同期比+2.15%と3年半ぶりの低水準となったものの、その後は前年に鈍化の動きを強めた反動を受けて緩やかな加速に転じた。さらに、足元においては上述のようにNZドル安の進行に伴う輸入物価の押し上げのほか、異常気象の頻発などを理由とする農林漁業関連の生産低迷も重なり、供給要因による物価上昇圧力が高まりやすい状況が続いている。こうした動きを反映して、7-9月のインフレ率は前年同期比+3.05%とわずかに目標の上限を上回る伸びとなるとともに、前期比も+1.00%と前期(同+0.54%)から上昇ペースも加速するなどインフレ圧力が強まる動きが確認されている。ただし、これは食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とする物価上昇のほか、家賃の上昇、地方税引き上げといった特殊要因が影響していることに留意する必要がある。食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率は前年同期比+2.51%に鈍化して4年半ぶりの低い伸びとなっており、全体のインフレ率と対照的な動きをみせている。さらに、足元のインフレ動向はRBNZが8月の定例会合で公表した報告書で示した見通しとほぼ一致しており、政策運営に対する影響は限られると捉えられる(注3)。


なお、昨年後半以降のRBNZによる断続的な利下げ実施にもかかわらず、足元の企業マインドは製造業、サービス業ともに好不況の分かれ目を下回る水準で推移するなど、景気の弱さを示唆する動きが続いている。こうしたなか、7-9月の失業率は5.3%と前期(5.2%)から0.1pt悪化して2016年10-12月以来の高水準となるなど、雇用を取り巻く環境が一段と悪化している様子が確認されている。減少基調が続いた就業者数の動向に変化の兆しがみられるものの、年代別では若年層を中心に雇用調整の動きが続いている。また、賃金上昇の伸びも鈍化傾向を強めており、家計部門を取り巻く環境は一段と厳しさを増している様子がうかがえる。賃金上昇ペースの鈍化はインフレ圧力の後退を促すことが期待されるため、金融市場においてはRBNZによる一段の金融緩和を後押しする材料になると見込まれる。RBNZは今月26日に次回の定例会合の開催を予定しており、当面のNZドルの対米ドル相場はFRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ観測の後退が米ドル相場の上昇圧力を招いていることも重なり上値の重い展開をみせると見込まれる。日本円に対しても外部環境に左右される展開が続くであろう。


以 上
西濵 徹
