扉の網戸に手をかけ入ろうとするクマ 立ち上がった高さは1.8m 青森・むつ市川内の寺で住職恐怖

石澤住職が撮影したクマ=19日午後5時46分、むつ市川内町

 クマの出没が例年になく多い青森県むつ市。今月19日、同市川内町の憶念寺(おくねんじ)で石澤修住職(64)が成獣とみられる1頭と遭遇し、「あわや」の一大事を覚悟するニアミスがあった。扉1枚で対峙(たいじ)する場面もあった石澤住職は取材に「自分の身長よりも高いと分かった時はぞっとした」と振り返った。

 石澤住職によると、19日午後5時40分ごろ、寺に直結する寺務所にいたところ、外からガタガタと激しい音が聞こえた。天井裏にネコが侵入したのかも−と思ったが、窓の向こうで数人が何かを指さしていた。数メートルほど歩いて見に行くと、そこにある窓の外の上部分に黒いものが見えた。

 「クマだ」。慌ててスマートフォンを取りに行き現場に戻ると、クマの顔が見えた。雪囲いの板を設置するためのフックから屋根に登ろうとして失敗し、地面に落ちたようだった。窓の外で立ち上がるクマの姿を撮影した。

 さらにクマはすぐそばの寺務所玄関前に移動し、網戸に四つんばいの手をかけて押した。爪は鋭く、胸には月輪が見えた。「入って来たらどうしよう」。石澤住職はガラス扉を押さえたが、クマは網戸に遮られ、玄関内に入って来なかった。

 その後クマは「グルグル」とうなり声を上げながら、最初に姿を見せた窓側に移動し、再び屋根に登ろうとした。だが、登ることはできず、玄関前にまた移動して網戸を押すと、どこかへ逃げていった。10分程の出来事だった。

 同日は付近で保育園のネブタが運行されていたほか、憶念寺の近くにある幼稚園でも「霊(たま)祭り」があり、通常よりも人が多かった。石澤住職はすぐに役場や警察などに通報。クマが周囲にいないか確認し、幼稚園に足を運んでクマの目撃を伝えた。この日、クマによる被害はなかった。

 「大変だとは思ったが、不思議とその瞬間は恐怖をあまり感じなかった」と石澤住職。後に窓の鍵の高さなどから推定すると、クマが立ち上がった際の高さは1.8メートルほどだった。フックの幅は数センチほどだが、クマは器用に脚をかけて登ろうとしていた。フックは付近の民家にも付いているもので、「これを登るのか」と驚いた。

 長年地域に暮らす石澤住職は「例年クマの目撃情報は山ほどあるが、ここ最近は人間の住んでいるところでの目撃がやたら増えている」と語る。川内地区に寺は五つあるが、いずれも墓参りに持ってきたお供え物は持ち帰るよう寺が呼びかけているという。

 憶念寺には20日、地元猟友会がわなを設置した。26日朝現在、クマの捕獲は確認されていない。

 市は今月1日に開いたクマ対策会議で、6月の市内での目撃件数が昨年同期比で約6倍の108件だったと報告した。現在も集計しきれないほどの目撃情報が寄せられているという。

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