マヨルカ島では今夏、観光客に「帰れ」と抗議する人の姿も。Clara Margais/picture alliance via Getty Imagesスペインでは今年、観光客に「帰れ!」と数千人が抗議の声を上げた。スペインの観光業は引き続き好調で、記録的な数の外国人観光客が訪れている。大規模な抗議デモが旅行者を思いとどまらせるとは考えにくいと、旅行業界の専門家は話している。
スペインでは今年、オーバーツーリズムに反対する大規模デモが行われ、世界的な話題となった。特にバルセロナで観光客に水鉄砲を浴びせたというニュースは大きな注目を浴びた。
しかし、この国を訪れる外国人旅行者が必ずしもこのことを知っているとは限らないし、この出来事を受けて、計画を変更したという旅行者も多くはないだろう。
スペイン政府がまとめたデータによると、スペインはこの夏、バルセロナやマヨルカ島、マラガなどで大規模デモが起きたにもかかわらず、外国人観光客の数が過去最高を記録した。
政府のデータによると、7月と8月にスペインを訪れた外国人旅行者の数は1090万人と、前の年の同じ月に比べて7.3%増えた。スペイン国立統計局も、8月の宿泊予約が2023年に比べて2.6%増えたとしている。1~8月の宿泊予約も前年に比べて5.6%増えたという。

「観光客は帰れ」バルセロナでオーバーツーリズムに抗議する大規模デモ、参加者は観光客に「水鉄砲」
旅行業界に詳しいニュースサイト『Skift』によると、マヨルカ島の観光局が実施し、9月にその結果を発表した調査では、アメリカ人観光客の89%が抗議デモがあったことすら知らなかった。この調査 —— アメリカ人も1000人が回答している —— では、抗議デモがあったことを知っていても、回答者の70%近くがマヨルカ島を訪れる計画に影響はなかったと答えている。Business Insiderは同観光局にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
スペインは混雑、住宅価格の高騰、生活費の高騰といったオーバーツーリズムの影響に直面している世界的な観光地の1つだ。4月にはカナリア諸島で推定2万~5万人が観光の制限を求めて声を上げるなど、抗議デモが激しさを増した。7月にはバルセロナで数千人がオーバーツーリズムに抗議した。多くの人々が街の生活費の高騰はオーバーツーリズムのせいだと考えていて、デモ参加者は観光客を水鉄砲で撃ち「帰れ!」と叫んだ。
ただ、このメッセージだけでは観光客の数を大幅に抑制することはできないだろうと、旅行観光業界を専門とする市場調査コンサルティング会社Longwoods Internationalの社長兼CEOアミール・エイロン(Amir Eylon)氏は話している。
「どこに行こうか、どこに行かないでおこうかを考える時、安全と思えるかどうかがそれを左右します」とエイロン氏はBusiness Insiderに語った。
スペインの抗議デモが大きな話題になっても、人々が”安全ではない”と感じるような形で観光客に物理的な危害が加えられたわけではなく、エイロン氏はこの”安全かどうか”が歴史的に、観光客が行先を選ぶ際に大きく影響してきたと指摘している。
特にスペインは、多くの観光客がそこへ行きたいと計画を立て、頑張って貯金をする”行先”で、たとえ抗議デモについて耳にしたとしても、観光客が躊躇することはないだろうと同氏は付け加えた。
しかし、こうした抗議デモは将来的に観光を抑制したり、より良いマネジメントをする上で、政府の政策に影響を与える可能性があるとエイロン氏は言う。
カナリア諸島の当局の関係者は今年に入って、短期レンタル宿泊にさらなる制限と規制を加える予定だと話している。2021年に短期レンタルの一部を禁止したバルセロナも、2028年までに市内の短期レンタルを全て禁止するとこの6月に発表した。
エイロン氏は、国や地域の管轄区域ごとに、経済的な利益を得つつも、観光の影響を管理するための独自のアプローチが必要になるのが一般的だと話している。具体的には短期レンタル宿泊の禁止や制限に加え、観光客の数の規制や観光税の引き上げ、恒久的な住宅を増やす取り組みなどが考えられるという。

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