「93歳のふたり言」刊行
「同行二人―93歳のふたり言」 ジャーナリストの徳岡孝夫さん(94)と、同級生で元会社員の土井荘平さん(94)が、協力して電子書籍「同行二人―93歳のふたり言」を刊行した。視力を失った徳岡さんの担当分は、土井さんが電話で聞き取り、原稿に起こした。
現役時代は商社に勤務するなどした土井さんは、退職後にエッセーなどを書くようになった。徳岡さんとは大阪の旧制北野中時代の同級生で、60歳代で再会すると、意気投合。2021年には、毎日のように電話でやり取りし、土井さんが徳岡さんの話を原稿化しつつ、自分の原稿も執筆し、「百歳以前」(文芸春秋)を刊行した。反響に力を得て再び本を出すことを目指し、同じ手法で22年から23年にかけて24のエッセーを準備した。
徳岡さんは、自決前の三島由紀夫が自身の前でとった行動の意味を推察したり、山崎豊子から聞いた周恩来との思い出を紹介したりした。親しかった英国人ジャーナリストの
訃報(ふほう)
を、彼の息子でタレントのハリー杉山さんのラジオ放送で聞いたことなども記した。一方、土井さんは、介護関係者らに抱くときめきや、うたた寝している間に見た夢の話など、高齢男性の一人暮らしの日常をつづった。2人が夜半に交わした電話のやり取りを記した1編もある。
「自分で思い出せることがいかに少ないか、思い知った」と振り返る徳岡さん 「百歳以前」から3年。徳岡さんは体力の衰えはあまり感じないというが、「言葉が出てこなくなった。年をとるとダメだね」と笑う。土井さんも「ずいぶん衰えたと感じる。終末が近いのは常に頭にある」と話す。それでも「土井君が助けてくれたので、言いたいことの何分の一かを残せた」(徳岡さん)、「共同作業が支えになっている」(土井さん)と互いに感謝する。 土井さんは「90歳を過ぎた男性高齢者が書いた本は少ないのではないか。この年でもその気になれば、電子書籍だって出せるよと伝えたい」と話している。900円。(小林佑基)
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