写真・間部百合写真・間部百合 ロシア出身の33歳のピアニスト、ダニール・トリフォノフの2夜連続リサイタルを聴いた。

レオンコロ弦楽四重奏団、初来日…四つの個性で果敢な演奏 

 古典作品を集めた初日、冒頭のラモーの組曲は、あたかも独り言を紡ぐかのような序盤の後、それまでの
鬱憤(うっぷん)
を晴らすかのように陽気な気分が爆発。劇的な感情の変転は彼の真骨頂だ。

 後半のベートーヴェン「ハンマークラヴィーア・ソナタ」も、第3楽章の沈潜が一層印象的に残ったのは、最終楽章で尋常でないエネルギーの放出があったからだろう。余分な響きを残さない使用ピアノの特徴もさることながら、
強靱(きょうじん)
と形容するにふさわしい技巧も大いに貢献していた。
 第2夜はDecades(「10年」の意)と題し、20世紀のほぼ10年ごとに生まれた独奏曲を年代順に弾く試み。
 プロコフィエフ「風刺」のように楽器が打楽器的に扱われる作品での凶暴な激しさと、メシアン作品での音域の差異を
活(い)
かした音色変化の妙は、現代作品への高い適応能力があればこそ。シュトックハウゼン「ピアノ曲9」のように、
静謐(せいひつ)
から突然、
閃光(せんこう)
のごときギラッとした響きに変転する際の
躊躇(ちゅうちょ)
しない
打鍵(だけん)
も自信の現れだろう。
 後半はリゲティ「ムジカ・リチェルカータ」などの限られた音素材を用いた作品が中心だったが、最後のコリリアーノ「ファンタジア・オン・オスティナート」は、同音反復を特徴とするベートーヴェンの交響曲第7番にヒントを得た作品。 これを圧倒的なパワーと集中力で弾き切った末のアンコールは、一転してケージの無音作品「4分33秒」! ここで沈黙がもたらす多様性に思いが至った。これはトリフォノフの仕掛けだったのか? 真に刺激的な音楽家である。(音楽評論家・安田和信) ――11日、赤坂・サントリーホール、12日、四ツ谷・紀尾井ホール。

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