原作はポーランドの名匠 キェシロフスキ監督作品
40人を超える俳優たちが「デカローグ」に出演する(写真・阿部章仁)
新国立劇場(東京・初台)が全10話の連作集「デカローグ」の一挙上演に取り組んでいる。現在上演中の「1~4」(5月6日まで)を始め、3か月がかりで総勢40人以上の俳優が出演する一大プロジェクト。同劇場演劇芸術監督の小川絵梨子と、次期監督に就任予定の
上村(かみむら)
聡史が5本ずつ演出を担う。(田上拓明)
独立した各話が 緩やかにつながる
「デカローグ」の原作はポーランドの世界的映画監督クシシュトフ・キェシロフスキがテレビドラマ用に撮影し、1980年代終わりに発表した映像作品。旧約聖書の「十戒」がモチーフとなった全10話の物語は国際的に高い評価を受け、30年以上を経た現在も映画ファンを中心に根強い人気を誇る。全話を忠実に舞台化するのは日本では新国立劇場が初めてとなる。
演出タッグ 上村聡史(左)と小川絵梨子=若杉和希撮影 舞台は80年代、ポーランドのとある集合住宅。住人の様々な人生がオムニバス形式で描かれていく。各話は独立した約1時間の作品だが、それぞれ緩やかなつながりもある。 小川はニューヨークの演劇学校時代に初めて作品を見て以来、ずっと舞台化を構想してきた。「現代人がより良い人間でいたい、より良い社会であってほしいと願いながら、それを選択できない後悔や弱さ、不安みたいなものをまっすぐ見つめている。人への根源的な肯定と愛を感じる」と魅力を熱く語る。
タッグを組む上村は、昨年も2部制・計7時間半に及ぶ大作「エンジェルス・イン・アメリカ」を手がけるなど新国立劇場での演出経験は豊富だ。小川は「
緻密(ちみつ)
な構成で登場人物の流れをすごく丁寧に考えつつ、ある種、ぶっ飛んだ演出もする」と手腕を高く評価する。
より良い世界へ葛藤する必然…小川愛と喜びの裏の憎しみと孤独…上村
デカローグ1「ある運命に関する物語」は、父(ノゾエ征爾=右)と息子(石井舜)の物語(写真・宮川舞子) 上村はこの10年ほどポーランド演劇に興味を持ち続け、ワルシャワなどに何度も足を運んでいた。そのため今回の小川からのオファーも二つ返事で承諾したという。「同じ作品に演出家が2人いたら大概、個性がぶつかり、いがみ合いになるが、小川さんは徹底して物語を見つめていて、演出家としての哲学に僕はついていける」と信頼を寄せる。
デカローグ4「ある父と娘に関する物語」は、仲むつまじい父(近藤芳正)と娘(夏子)の繊細な心理描写が見所だ(写真・宮川舞子) その言葉通り、「各話の演出をどちらが担うか」という話し合いも「2分くらい」でまとまったという。小川は上村の「女性の描き方」を高く評価し、「2」や「6」を推した。上村も、死刑について描かれた「5」を「僕だと説教くさくなる。この話は小川さんがハマる」と薦めた。
翻訳は久山宏一、上演台本は劇作家の須貝
英(えい)
が担った。小川は須貝について「人間に対して温かい視点を持ち、とても素直な言葉を書く。原作があるので演出家と議論する必要も出てくるが、それを楽しめる方」と評する。
「妊娠したおなかに手をあてる」「母親が残した遺言を光にかざす」など、せりふを語らずに進むシーンも多い。上村は、そういう時の人物の「たたずまい」を大切に演出するという。「愛の裏の憎しみ、喜びの裏の孤独。現代でも変わらない部分を見せられれば」 小川も「世界各地で戦争が続き、生きづらさや不安が消えることはないが、人がより良い世界に向けて葛藤し続けることの必然と大切さを、この10編を通して少しでも描けたら幸いです」と抱負を語った。◎ 「デカローグ」開幕直前の3月中旬、新国立劇場の次期芸術監督(演劇部門)に上村が決まったと発表された。9月から演劇部門の芸術参与(任期2年)となり、2026年9月から小川の後を継いで芸術監督になる予定だ。小川は「同世代の人間としても演出家としても敬愛しており、頼もしく感じた。バトンをお渡しできることは素直にうれしい」、上村も「しっかりと準備して、就任したいと思います」とコメントした。
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