北海道斜里町のウトロ漁港を出航した観光船「KAZU I(カズワン)」(乗客乗員26人)が知床半島沖で沈没した事故から23日で2年となる。同港では今季の観光船の営業開始を28日に控えており、カズワンと同じ小型船の運航業者が安全点検を急ピッチで進めている。(阪本高志、高田悠介)
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JCIの検査後も船体のチェックを続ける神尾さん(16日、北海道羅臼町で) 16日午前11時、同港と羅臼町で観光船を運航する「ゴジラ岩観光」の法定点検が始まった。担当するのは「日本小型船舶検査機構」(JCI)の検査員2人。JCIは国土交通省に代わり、小型観光船などの安全性をチェックする組織だ。
検査の詳細は非公表だが、この日は約3時間をかけ、羅臼漁港に陸揚げしていた「カムイワッカ55号」など2隻の甲板のハッチを入念に開閉したり、船底を仕切る隔壁の状態を確かめたりした。エンジンの冷却設備や船底にたまった海水を排出するポンプの状態なども点検したという。 国の運輸安全委員会が昨年9月に公表したカズワンの事故調査報告書は、船首のハッチがしっかり閉じられなくなっており、そこから大量の海水が流入したと分析。運航会社「知床遊覧船」の安全管理体制の欠如に加え、事故3日前のJCIの検査が表面的な内容にとどまった点も「関与要因」としている。ハッチや隔壁による「水密性の確保」を厳しく調べることは、国やJCIの再発防止策に盛り込まれた項目だった。
「特に不備が指摘されることはなかった」。ゴジラ岩観光で運航管理を担当する神尾
昇勝(のりかつ)
さん(47)は、ホッとした表情で語った。今後は営業開始に向け、事故への対応訓練やテスト運航などを重ねていくという。
とはいえ、観光船業者を取り巻く状況は厳しい。 国などの規制強化と並行し、ウトロ漁港を拠点とする「知床小型観光船協議会」の加盟社も安全な運航のための自主ルールを策定。「トラブルに備えて1隻だけでは運航しない」などと定め、その内容を積極的にアピールしてきた。
だが、事故によるイメージ悪化の影響は大きく、コロナ禍前の2019年に5万人を超えていた加盟社の乗客数は、事故があった22年に8099人まで減少した。23年も1万6017人にとどまっており、今年3月には1社が観光船業から撤退した。 知床遊覧船も事故後に事業許可を取り消されており、今季は残る3社が運航する予定だ。神尾さんは「明るい話題は少ない」と打ち明け、こう続けた。 「今シーズンの営業を終えた時に『何も起こらなくて良かったね』と言えることが目標かな」
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