京都の
花街(かがい)
・宮川町の
芸妓(げいこ)

多栄之(たえの)
(26)は、デビューから丸1年が過ぎた昨冬以降、「2年目の壁」に直面していた。

舞う妹、91歳姉が円熟の音色で支え…「京おどり」に挑む2人の覚悟

お茶席で立礼式のお点前を披露する多栄之(11日、京都市左京区で)=川崎公太撮影お茶席で立礼式のお点前を披露する多栄之(11日、京都市左京区で)=川崎公太撮影 芸事とおもてなしのプロとして洗練された、たたずまいを身につけるのは容易なことではない。周囲から実力以上の期待をされていると、重圧を感じていた。

 21日まで京都芸術劇場・春秋座(京都市左京区)で開催中の舞踊公演「京おどり」で、客は観覧前に薄茶と菓子を楽しむ。多栄之は11日、京風島田に髪を結い上げ、黒紋付きの正装でお点前の披露に臨んだ。お茶席に出るのは、初めてだ。
 お点前は、裏千家十一代の玄々斎が考案した「
立礼(りゅうれい)
式」で行われる。1872年(明治5年)の京都博覧会の際に海外の人にも茶を体験してもらおうと始めたもので、イスと机を使う。
 多栄之は、宮川町が設置する芸舞妓の学校「東山女子学園」で1年半ほど稽古をしてきた。「お客さんの前では緊張する。手順を間違えたらどうしよう」◇
 芸妓1年目の頃、姉さん芸妓・
多栄(たえ)
(91)を手本に「芸を究めて生きていけるように」と、学園で稽古に励んだ年間上位5人を表彰する精勤賞に目標を定めた。舞踊や長唄など取れるだけの科目を取り、昼間に宴席があっても終了後に駆けつけ、目標を達成した。

 多栄之が所属するお茶屋兼置屋「駒屋」の
女将(おかみ)
・駒井文恵(79)は「お稽古にきちんと行くことは値打ちがあるが、当たり前」とした上で、「芸妓さんには、行き届いた振る舞いが求められる。高いハードルだが、経験を重ねることで乗り越えてほしい」と激励する。
 宴席では、多栄之の後にデビューした舞妓と一緒になることが増えてきた。後輩をサポートしつつ、あいさつの言葉遣いまで細やかな気配りが必要だ。「うちもそんなにできてへんのに、試行錯誤しています」
 寄り添う多栄との時間が取れないことも影響した。三味線を担う
地方(じかた)
の多栄と、踊りの
立方(たちかた)
として出演する多栄之は、別々に稽古するため話す機会が減った。落ち込んだ時は、稽古に没頭して迷いを振り払った。
 お茶席に出ることが決まった1月以降、住み込みで暮らす駒屋でも、所作を繰り返した。「覚えたことをやりきる」と臨み、お点前を終えた多栄之は「お客さんに喜んでいただけるよう、心を込めました」とようやく笑みを浮かべた。(敬称略)#kyoto特集へ

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