2026年08月09日 09時00分
メモ


メッセージアプリ「Kik」のユーザー名に含まれるアンダースコア1つを警察が見落としたことで、事件とは無関係の男性が児童への性的犯罪で有罪となり、18カ月にわたって服役していたことが明らかになりました。男性は刑期を終えた後も有罪判決を争い続け、控訴の準備中にユーザー名の取り違えが発覚。ノバスコシア州控訴裁判所は男性について「事実として無実」と認定し、有罪判決を取り消しました。

2026 NSCA 59 (CanLII) | R. v. Klayme | CanLII
https://www.canlii.org/en/ns/nsca/doc/2026/2026nsca59/2026nsca59.html

A missing underscore sent innocent man to prison for 18 months – Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2026/07/police-missed-one-underscore-and-sent-the-wrong-man-to-prison/

事件の発端は2018年、アメリカ・ウィスコンシン州に住む12歳の少女がKikを通じて成人男性とやりとりしていたことでした。少女の母親がスマートフォンから男性の不適切な写真を発見して警察に通報し、保安官事務所が端末を解析したところ、少女と「fus__ro_dah」というユーザー名の成人との間で125件のメッセージが交わされていたことが確認されました。

ところが、警察がユーザーを特定するためKikに情報開示を求めた際、本来の「fus__ro_dah」ではなく、アンダースコアが1つ少ない「fus_ro_dah」について照会してしまいました。つまり「fus」の後ろにあるアンダースコア2つのうち1つが抜けたことで、まったく別のアカウントが捜査対象になったことになります。Kikは誤って指定されたアカウントにひも付くメールアドレスを警察に提供しました。


このメールアドレスについてGoogleの記録を調べたところ、カナダのIPアドレスからGoogleサービスにアクセスしていたことが判明しました。捜査はカナダ・ハリファックスの警察に引き継がれ、インターネットサービスプロバイダーのBell Aliantへの照会から、IPアドレスの契約者としてブランドン・クレイム氏が浮上しました。

警察はクレイム氏の自宅を捜索し、寝室からスマートフォンやノートPCを押収しました。しかし、端末を調べても少女とのつながりを示す証拠や性的な画像は見つからず、クレイム氏が問題となった期間にKikへアクセスしていたことすら確認できませんでした。それでもクレイム氏は2020年に逮捕され、14歳未満の人物を通信手段で誘い出した罪や、子どもに性的に露骨な資料を提供した罪、児童ポルノ所持の罪に問われました。

裁判ではクレイム氏に有罪判決が下され、2024年に18カ月の禁錮刑を言い渡されました。クレイム氏はその刑期をすべて服役しましたが、捜査側だけでなく弁護側も含め、裁判の時点では誰もユーザー名の取り違えに気付かなかったとされています。


転機となったのは、クレイム氏が釈放後も有罪判決を争い、控訴の準備を進めていた時でした。クレイム氏によると、控訴理由をまとめる終盤になってKikへの情報開示要求に誤りがあることが判明し、本来の「fus__ro_dah」ではなく「fus_ro_dah」が照会されていたことに初めて気付いたとのこと。この違いは公判でも裁判官に伝えられていませんでした。この事実を受けて検察側も事件を再検討し、クレイム氏の控訴を認めるべきだとの立場に転じました。控訴裁判所によると、当初から適切な捜査が行われていれば、証拠はカリフォルニア州のIPアドレスを使っていた「ジェイ」という名前の別人を示していたとされています。

最終的にノバスコシア州控訴裁判所はクレイム氏をすべての罪について無罪とし、保護観察を含む刑罰を取り消しました。


裁判所は「クレイム氏は事実として無実であり、そもそも起訴されるべきではなく、まして有罪になるべきではなかった」としています。一方、ユーザー名に関する情報自体は公判時にも存在していたものの、なぜ長期間にわたって誰にも誤りを発見されなかったのかについては、確認できる証拠や説明がないとしています。

・関連記事
人間は「現実には起きなかった架空の事件」を自分がやったと思い込んで自白をしてしまうという研究結果 – GIGAZINE

なぜ人は無実の罪を犯したと自白してしまうのか? – GIGAZINE

「児ポ容疑者にPCのパスワードを自白させるのは違憲」との最高裁判決 – GIGAZINE

性的暴行事件では被害者と容疑者は同じくらい「記憶の混同」を起こしやすい – GIGAZINE

飲酒運転で逮捕された男性が無罪に、体内でアルコールが生成される特殊体質と認定 – GIGAZINE

殺人犯が「マトリックスの世界で起こった」ことを主張し無罪になるケースが存在する – GIGAZINE

Share.