舞台はパリの要塞城 スペイン発「ロエベ」が描いたカラーでエネルギーチャージ 藤岡篤子のFashion Story

ユーモラスな造形作品も飾られた(ロエベ提供)

このところ、ファッション界でも、きな臭い世界情勢や物価高など不安定な生活環境を反映するようなコレクションが増加しています。こういう時代だからこそ、ファッションを通してもっと活力をもたらしたい−。そんな思いが伝わりやすいのがカラー使いです。

例えば、交感神経を刺激してやる気を出させる「赤」の持つ情熱や行動力、集中力をアップして明るさや希望をもたらす「イエロー」など、カラーには視覚を通して神経やホルモンバランスに作用するパワーがあります。

その力をポジティブに発揮して、着る人を幸せな気分にしたい。2026/27年秋冬コレクションでは、そんな願いを感じさせるカラフルなコレクションが多かった中で、最も強烈な印象を与えたのが、今年創立180周年を迎えたスペインのラグジュアリーブランドの「ロエベ」です。

2025年に起きたデザイナー交代劇の主役でもあったロエベは、ニューヨークで活躍していたジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスの2人組を新たにクリエイティブディレクターに迎え、今季は2シーズン目となるコレクションでした。

2人がまず着手したのは、ブランド発祥の地であるスペインへの敬愛の表意でした。パリでコレクションを発表していても、独自のトレンドの発信だけではなく、スペインらしさを表現する要素が盛り込まれたのが老舗への最大のリスペクトといえるでしょう。

スペインの国旗にみられる赤と黄色使いはその象徴です。燃えるようなスペインの太陽、フラメンコドレス、闘牛士のマントなどの「赤」はパーカなどのスポーツウエアに付けられ、アンダルシアのひまわり畑を思わせる「イエロー」は、レザーのコートやドレスなど服はもちろん会場のフロア全体に用いられ、まさに今年の色というにふさわしい扱い方でした。

コスタ・デル・ソル(太陽海岸)の海を思わせる鮮やかな「ブルー」など、くすみのない豊かな彩りは、黒と合わせることで軽妙なモダンさに変化し、いわゆる土産物的なスペインらしさではなく、歴史あるブランドに捧げる、21世紀な解釈でもありました。

さらに、このコレクションではアーティストの「コジマ・フォン・ボニン」による「ファウンド・ファブリック(見つけた布)」と呼ばれる廃棄された布から作られたヤドカリや蛤、シャチ、タコなどユーモラスなぬいぐるみが会場に飾られ、隣の席にヤドカリなどの造形作品が座っているという遊び心に富んだ微笑ましさも漂っていました。

そして、服の一部に空気を入れて膨らませたダウンのような形状のコートやラテックス(ゴム素材)のドレスなど、意表をつく発想も若々しく、180年の歴史に新風を吹き込んだ感があります。

話題の多いロエベですが、会場の素晴らしさに触れないわけにはいきません。なんとルーブル美術館と並ぶ、フランスの歴史上では最も重要な城の一つであるヴァンセンヌ城で開催されたのです。

パリ郊外に建つ中世のヨーロッパ屈指の要塞城。広大な中庭に張られたショー会場となるテントは、コレクションにも登場するギンガムチェックの外観に、内側はイエロー一色。登場してきたのはカラフルでボリュームのあるコレクションです。

歴史や伝統と格式、そして揺れ動く現代の対比がカルチャーの共存として可視化され、その上、サステナブル(持続可能)で地球にやさしく、ショーを見た後は皆元気いっぱい笑顔で帰途についたのが、何よりもコレクションの魅力を物語っていました。

ふじおか・あつこ ファッションジャーナリスト。ファッション情報会社「fプロジェクト」代表。新聞からモード誌まで幅広いメディアにファッション分野の記事を執筆し、定期的にファッショントレンドセミナーなどを開催。名古屋学芸大メディア造形学部ファッション造形学科客員教授。

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