最大1,000万円の「ぎふプライムスタートアップ支援補助金」に同時採択、商用発電所の重要コンポーネント「ブランケット」開発を前進
フュージョンエネルギー(核融合)[1]による「実用発電」の達成および日本全国での産業創造に向け、ヘリカル方式の核融合発電所の開発を進める株式会社Helical Fusion(本社:東京都中央区、代表取締役CEO:田口 昂哉、以下「Helical Fusion」)は、このたび、ぎふスタートアップ支援コンソーシアムが実施する令和8年度「ぎふプライムスタートアップ」に認定されました。
「ぎふプライムスタートアップ」は、岐阜県ゆかりのスタートアップの中から、他のスタートアップの模範となり得る優れた企業を認定する制度です。
あわせて、公益財団法人岐阜県産業経済振興センターが運営する「ぎふプライムスタートアップ支援補助金」に採択されました。本補助金により、2026年12月31日までの期間において、設備費、原材料費、研究開発費などを対象に、最大1,000万円(補助率3分の2以内)の支援を受ける予定です。Helical Fusion独自の、液体金属を用いた「ブランケット兼ダイバータ」開発に活用します。

「ぎふプライムスタートアップ」を運営するぎふスタートアップ支援コンソーシアム事務局のロゴ
Helical Fusionは現在、大学共同利用機関法人自然科学研究機構 核融合科学研究所(岐阜県土岐市)の敷地内に設置したHF共同研究グループ専用スペースにて、最終実証装置「Helix HARUKA」(Phase1)の建設を進めています。今回の認定および補助金採択を受け、岐阜県との連携を深めながら、2030年代のフュージョンエネルギー実用化に向けた開発をさらに加速してまいります。
■ぎふプライムスタートアップについて
ぎふスタートアップ支援コンソーシアムによる認定制度で、岐阜県ゆかりのスタートアップの中から、特に高い成長性や波及効果を有し、他のスタートアップの模範となる企業を選定するものです。
■ぎふプライムスタートアップ支援補助金について
公益財団法人岐阜県産業経済振興センターが運営する、ぎふプライムスタートアップ認定企業向けの支援制度です。事業拡大や研究開発等に必要な経費を補助し、地域発スタートアップの成長を後押しします。
■ブランケットについて
フュージョン発電プラントの内部では、プラズマに接し、エネルギーを受け取る「ブランケット」に極めて高い熱負荷が生じます。発電プラントを長期間にわたり安定的に運転するためには、この熱を効率よく、周辺の部材への影響を抑えながら継続的に取り出す仕組みが必要ですが、世界的にも、いまだ標準的な方式は確立されていません。
Helical Fusionでは、この課題に対し、液体金属が流れる“動く壁”という画期的なアプローチで取り組みます。既存の試験装置などで主に考案されてきた、固体材料のみでブランケットを構成する形に比べ、効率性・保守性・プラント寿命の確保などの観点で優れたコンポーネントの実現を目指します。さらに、ブランケット周辺機器も含めたメンテナンス手法も実証することで、プラント全体の稼働率を確保し、実用プラントとしての経済性を見通した開発を促進します。


液体金属を用いたブランケットのイメージ
背景
■ヘリックス計画について
ヘリカル型核融合炉は、これまでの国立大学や国立研究機関における70年にわたる研究開発の結果、商用発電所に適した特性が評価されている方式[2]です。Helical Fusionは、その知見を活用してフュージョンエネルギーの実用化を行う数少ない民間企業の一社として、ヘリカル型核融合炉による実用発電を達成する「ヘリックス計画(Helix Program)」を進めています。2023年5月には、発電初号機の設計についてまとめた査読付き論文を発表しています[3]。
ヘリックス計画では、2020年代中をめどに二大開発要素「高温超伝導マグネット」「ブランケット兼ダイバータ」の個別実証を完了し、2030年代中には、最終実証装置「Helix HARUKA」による統合実証、および発電初号機「Helix KANATA」による世界初の実用発電を達成する計画です。
現在、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所(岐阜県土岐市)の敷地内にあるHelical Fusion専用スペースにて、最終実証装置「Helix HARUKA」による高温超伝導マグネット実証に向けた製造・建設が進んでいます。核融合装置開発を進める各社のなかでも、設計をもとにした具体的な建設に至っていることは先駆的な事例といえます。Helix HARUKA向けの重要なコンポーネントの開発は、国内の各事業連携先各社の協力を得て、着実に進んでいます。

建設中のHelix HARUKAの様子(作業用の足場に囲まれた中心部が本体)

ヘリックス計画のタイムライン
■「実用発電」のための三要件
核融合発電所を商用利用するためには、核融合反応を起こすことはもちろん、①正味発電(プラントの外に電力を供給できる)、②定常運転(24時間365日運転可能な安定性)、③保守性(メンテナンスが可能)という三要件をすべて満たすことが必要です。ヘリックス計画では、この三要件の実現から逆算した設計に基づいて開発を進めます。

「実用発電」を達成するための三要件
■フュージョンエネルギー開発の意義
世界の人口は2050年までに約17億人増加すると予測[4]され、生成AIの普及も背景とした世界的な電力需要の急増に対し、既存発電方法のみで応えることは厳しい見通しです。フュージョンエネルギーは、太陽の輝きと同じ原理を使ったCO2排出がなく効率性の高い発電方法であり、海水等から豊富に採取可能な燃料を用いることからも、世界的な課題を抜本的に解決する技術として期待されています。核融合プラント建設および電力市場は2050年までに世界で数百兆円規模にまで成長するとの試算[5]もあり、今後自動車産業のように日本が世界をリードする巨大産業を創出できる可能性がある一方、国際的な開発競争も激化しています。
日本においては、2025年10月に高市早苗総理大臣が率いる新政権が発足し、「危機管理投資」や「経済安全保障」を成長戦略の核心と位置づけ、所信表明演説では “次世代革新炉や核融合エネルギーの早期社会実装” が明記されました。同年6月には 内閣府による「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」の改定により、2030年代の発電実証を目指すロードマップが提示されています。加えて、新政権が掲げる「重点投資対象17分野」にフュージョンエネルギー(核融合)が挙げられ、11月には政府として1,000億円超の予算計上、経済産業省に「フュージョンエネルギー室」が設置されるなど、政府としての支援が具体化しています。学術研究の段階から、官民をあげた産業化への動きが加速しています。
■Helical Fusionについて
Helical Fusionは、フュージョンエネルギーの実用化を目指す企業です。2021年に、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所(NIFS)[6]における研究成果を活用するかたちでスピンアウトし、創業しました。日本独自の核融合炉形式である「ヘリカル方式」は、これまでの国立大学や公的研究機関における約70年にわたる研究開発の結果、商用発電所に求められる要件を備えやすい方式であることが評価されています。その知見を生かし、世界に先駆けたフュージョンエネルギーの実用化に向けた「ヘリックス計画(Helix Program)」を進めています。

Helical Fusionが2030年代に「実用発電」達成に向け開発する発電初号機「Helix KANATA」
[1] 太陽の輝きと同じ原理を地上で再現することで得られるエネルギー。二酸化炭素(CO2)排出がなく、海水などから豊富に採取可能な水素の仲間を燃料として用いること、原理的に暴走が起こらず安全性を確保しやすいことなどから、世界的なエネルギーの課題を抜本的に解決する技術として期待されています。
[2] ①正味発電(プラントの外に電力を供給できる)、②定常運転(24時間365日運転可能な安定性)、③保守性(メンテナンスが可能)という「商用核融合炉の三要件」を、全て満たせる見通しを有することから。
[3] Development of steady-state reactor by Helical Fusion – J. Miyazawa et al., Physics of Plasmas.
[4] 国際エネルギー機関(IEA)年次報告書 「2023年版世界エネルギー見通し」(World Energy Outlook 2023)
[6] NIFSは、世界有数の大型プラズマ実験装置「大型ヘリカル装置(LHD)」において、3,268秒間(約54分間)にわたるプラズマの維持や、1億度を超えるプラズマ温度の達成、そうした運転に不可欠なプラズマの安定制御にかかわる知見などを蓄積してきた、ヘリカル型(ステラレータ)核融合研究を牽引する公的研究機関です。
