イギリス・ノーサンプトンに住むアメリア・ヘイデンさんは、11歳で摂食障害と診断され、体重は同年代の健康体重の半分ほどにあたるわずか23kgまで落ちた。その後、約10年間にわたり摂食障害と闘い続け、現在21歳になっている。摂食障害のきっかけは、当時通っていた寄宿学校で、厳しい先生に好かれたいという思いからだった。
体重や食事の量、運動の回数まで細かく管理し、数字の変化にとらわれる日々。摂食障害は、食事や体形への強いこだわりを通して、心と体の両方に大きな影響を及ぼす病気だ。アメリアさんは食事をほとんど取らず、深夜2時を過ぎても階段を100回以上上り下りするなど、止めたくても止められない「運動強迫」にも囚われていた。治療のための入院生活は合計で7年に及ぶ。
自身も摂食障害を経験し、現在は摂食障害に悩む人や回復までの食事指導について取材しているライターの遠藤一さんが、アメリアさんを取材した。前編【11歳で摂食障害、体重23kg…「ほとんど食べず、運動をやめられなかった」イギリス少女が語る地獄のような日々】では、人生が摂食障害を中心に回るようになった経緯を伝えた。後編では、つらい日々の中でも彼女の心を支えていた「好きなこと」について。自分の“好き”を手がかりに、少しずつ自分自身を取り戻していく姿をお伝えする。
「地獄のような治療の日々」の支え
アメリアは、過度の拒食と運動で、体力や筋力、骨密度が低下し、14歳のころには歩けなくなり、数年間はほとんど車椅子で生活をしていたと言う。
「身体がどんどん弱っていくので、立っていることすらできなくなりました。当然、高校に通うこともできず、友だちと楽しむはずだった年齢を病院で過ごしました。車椅子に乗せられて移動したり、体重をごまかしていないか確認するために下着に重りを隠していないか調べられたり、裸で体重を測定されることもありました。そして、摂食障害の入院病棟では、入院仲間が亡くなるのも目の当たりにしました」
“地獄のような治療の日々”が続いたが、アメリアには支えがあった。6歳のころから続けている「お菓子作り」だ。しかし、病棟にはキッチンもなく、好きだったパン・お菓子作りは、活動が許されなかった。それでも、体調がいいときは、社会勉強ということで、院外のカフェなどに連れて行ってもらうことがあった。「そこで、さまざまなお菓子を目にしたり、手に取ることができた。口にすることはできなかったけれど、きれいでかわいいお菓子に接していたら、作ってみたい、という気持ちが芽生えるようになりました。病院のスタッフもよい兆候と思ってくれたのか、頻繁にカフェに連れ出してくれるようになり、お菓子を通して、少しずつ心の回復につながっていったのだと思います」と彼女は話す。
これをきっかけに一時退院が許されるようになり、母親のもとに戻った。そこで、アメリアは、お菓子を焼いていたと言う。

「食べることに対しての問題は完全に解決できていなかったので、自分では食べることができませんでした。それでも、お菓子作りだけは食べ物に関われる唯一の方法でした。自分が作ったものを他の人が食べて、喜んでくれる。その姿を見ることで、私自身も楽しさを感じることができました」と自分では食べられなかったが、周りの人たちのために作っていた。
