
ペルー南部にある古代インカの集落、タクラチュロ。数百にのぼる建造物が発掘された。聖地と見られるこの土地がインカの歴史で果たした役割が、少しずつわかり始めている。(PHOTOGRAPH BY ARTURO RODRÍGUEZ)
インカ帝国の重要な城塞アンコカグア。研究者たちは長年、その場所を突きとめようと、ペルーの高地を探し回ってきた。そして、ある山の頂で神殿を含む集落の遺跡が発見された。果たして、追い求めていた聖地なのか。
その遺跡は、ペルー南部に広がるメサの上にあった。
メサとは、硬い岩層が侵食されて残ったテーブル状の台地だ。周囲は断崖絶壁で、100メートル下をアプリマク川が流れている。遺跡は、タクラチュロという集落跡で、広さはメサの麓の土地と合わせて17ヘクタールあり、その面積は約225キロ北西にあるマチュピチュのおよそ4倍に及ぶ。アンデス山脈には、ここと同じような低木に覆われた石組みの段々畑や建物の基礎が残る遺跡がいくつもある。それはケチュア語で「タワンティンスウユ」と呼ばれるインカ帝国が築いたものだ。この遺跡にも30年以上前から考古学者たちが訪れ、谷底から断崖に刻まれた急な石段を上って調査をしてきた。だが、これまでに見つかったのは、土器の破片やさびれた廃虚ばかりだった。
2022年9月のある朝、考古学者のダンテ・ワルパユンカは、そのタクラチュロ遺跡で、石囲いの中から表土を取り除く作業をしていた。すると、近くにいた助手の一人が大声を上げた。「ボス! 何かあります」。ワルパユンカは思わず笑った。つい最近、ここから宝物が出るわけはないと、仲間内で冗談を言っていたばかりだったからだ。だが、振り向いた彼の目に飛び込んできたのは、紛れもない黄金の輝きだった。
タクラチュロ遺跡の発掘調査は、ペルー文化省の助成金を受けて2019年に始まった。ワルパユンカはこの調査に最近、参加したばかりだったが、彼のチームはその日、桁外れの宝物を掘り当てた。数百年間、地中に眠っていた3000枚近くの金、銀、銅で作られたスパンコールだ。「考古学者としてのキャリアを、このような発見に一度も遭遇しないまま終わる研究者もたくさんいます」とワルパユンカは話す。

2022年、タクラチュロで金、銀、銅のスパンコールの収納庫が発見され、考古学者を驚かせた。約500年前、礼服の装飾に使われたものと思われる。ここが宗教的に重要な場所であった証拠だ。(PHOTOGRAPH BY ARTURO RODRÍGUEZ)
このスパンコールは後に、インカのエリート層が儀式で着用する衣装に縫い付ける装飾として、16世紀初頭に作られたものとわかった。この発見を受けて、タクラチュロの発掘方針は大きく見直された。そしてこれまでに、住居や墓、古代神を祭る神殿をはじめとする600近くの建造物が発見され、そうした建物の中から、数えきれないほどの金属製の祭具が出土した。それらは、タクラチュロが単なる辺境の集落ではなく、インカ帝国の政治や経済、宗教において中心的な役割を果たした、重要な場所だったことを示している。
現在では、さらに踏み込んだ仮説を支持する専門家が増えつつある。それは、タクラチュロこそ、かつて「アンコカグア」という名で知られた城塞都市ではないか、という説だ。
VIDEO BY ARTURO RODRÍGUEZ
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