
ウクライナのゼレンスキー大統領は5月22日のビデオ演説で、今年に入りロシア軍から約590平方キロメートルの領土を解放したと発表しました。米国防情報局(DIA)と米欧州軍の評価報告書では、ロシア軍が無断利用していた衛星通信「スターリンク」の端末が遮断されたことで、ロシア軍の能力が「一時的かつ大幅に低下した」とされています。
2026年2月、スペースXはウクライナ国防省と協力し、ウクライナ領内で事前承認された端末のみが使用できる「ホワイトリスト」方式へと切り替えました。ウクライナ側の端末は事前登録により通信を維持できた一方、ロシア軍が占領地などで無断利用していた数千台の端末は順次遮断。ウクライナのフェドロフ国防相は「ロシアの端末はすでに遮断された」と発表しています。
報道によると、前線のロシア部隊は衛星通信への依存度が高く、部隊の移動やドローン攻撃の調整にスターリンクを活用してきました。その通信手段が遮断されたことで、ロシア軍の一部では無人機による攻撃作戦の中断や指揮統制の乱れが発生。ウクライナ側はこの混乱が防御の遅れにつながったと分析しています。
さらに、ロシア政府が自国前線兵士の通信アプリ「テレグラム」の利用を制限したことも、ロシア軍の通信環境を一層悪化させました。一方、ロシア軍は砲兵や航空戦力など多くの分野で依然として優位を保っているとの分析もあり、戦況全体がウクライナ有利へ傾いたわけではないとの慎重な見方もあります。
スターリンク遮断の経緯と背景 今後の戦況への影響は
ロシア軍によるスターリンクの無断利用は2024年ごろから問題視され、占領地でインターネット接続や軍事作戦の通信に用いているとする報道が続いていました。スペースXはロシアとの取引を否定していましたが、ウクライナ軍はロシアの長距離攻撃ドローンにスターリンク端末が搭載されていることを確認。ウクライナ政府はスペースXに協力を要請し、ホワイトリスト方式による遮断を実現しました。
ロシア軍は地上の既存通信網が破壊・妨害されるなかでスターリンクへの依存度を高めてきただけに、その停止は指揮系統に深刻な影響を与えたとDIAは結論付けました。今後、ロシア側がスターリンクに代わる通信手段をどこまで確保できるかが、戦場での指揮統制や無人機運用の態勢を左右する見通しです。
