前夜にイスラエル軍の空爆を受けたガザ地区北部のジャバリヤ難民キャンプで呆然とするパレスチナ人女性(5月19日、写真:ロイター/アフロ)
欧米で進む支持構造の再編
欧米でいま、イスラエルをめぐる「価値観の地殻変動」が進んでいる。
かつて揺るぎなかったイスラエル支持の構造が、世代交代と情報環境の変化によって静かに書き換えられつつある。
欧州では、筆者の世代には生々しい記憶だったホロコーストが、若い世代にとっては過去の歴史的事実化する傾向も見られ、イスラエルへの評価軸も「贖罪」から「人権」へと移行しつつあるようだ。
SNSを通じてガザの映像が日常的に流れ込む時代、イスラエルの軍事行動はホロコーストの被害者という歴史的文脈ではなく、国際法や市民保護の基準で判断されるようになっている可能性がある。
米国でも同様だ。パレスチナ支持を強めるミレニアル世代やZ世代が増え、民主党では進歩派が台頭し、かつて「絶対的タブー」といえたイスラエル核問題が従来よりも公然と議論されるようになった。
イスラエル支持の基盤は、冷戦期の地政学や宗教的価値観から、透明性・人権・国際法といった現代的価値観へと移りつつある。
つまり、イスラエルが民族・宗教に関わる言説に敏感さを強める一方で、欧米社会は別方向へ価値観を変化させている――この「ねじれ」現象こそ、中東情勢を読み解くうえで最も重要な構造変化ではなかろうか。
本稿はイスラエル批判ではない。欧米社会の価値観変化が、イスラエルの安全保障環境と中東情勢にどのような影響を与えているのかを冷静に分析することを目的とする。
なお私は、長年旧約聖書を読み親しんできたキリスト教徒として、ユダヤの歴史とその末裔であるイスラエルに深い敬意と親近感を抱いている。
その立場を明らかにしたうえで、価値観変化という構造現象を客観的に捉えたい。
