米国連続増配株とは? AI以外の分散投資先として注目 野村證券・村山誠のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

世界の株式市場ではAIブームの盛り上がりを背景に、AI関連銘柄への資金集中が目立っています。S&P500指数などに投資されている方は、知らないうちにポートフォリオ全体に占めるAI関連銘柄の比率が高まっているかもしれません。こうしたなか、株の分散投資を考えるうえで、野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの村山誠は、「米国の連続増配銘柄」を選択肢の1つに挙げます。なぜ分散投資の観点で有効なのでしょうか。詳しく解説します。

米国連続増配株とは? AI以外の分散投資先として注目 野村證券・村山誠のイメージ

AI関連銘柄の比率が高まるS&P500指数

中東情勢の悪化を受けて、株式市場ではリスク回避の動きが強まりましたが、4月に入るとAI関連の需要拡大を追い風に、S&P500指数は再び最高値を更新しました。AIブームの過熱感を懸念する見方もありますが、米国のハイテク株やS&P500指数に投資している方にとって、リスク分散の観点から気をつけておくべき点はあるでしょうか。

最近のAI関連銘柄の上昇によって、ポートフォリオ全体で特定のセクターに偏りが生じてしまう可能性には注意が必要でしょう。S&P500指数の時価総額上位10社には、AIブームのけん引役となっている「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるハイテク企業が名を連ねます。S&P500指数で、この10社が占める比率は2026年5月15日時点で41.3%となり、過去最高を更新しました。そのため、知らないうちに、株式ポートフォリオに占めるAI関連銘柄の割合が増えてしまっている方もいるでしょう。

S&P500指数~時価総額上位10社比率(年次)

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(注)各年末時点の、時価総額上位10社がS&P500指数全体の時価総額に占める比率。図中の数値は、2025年末と2026年5月15日。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成

一方、「米国株以外の国・地域に分散投資しているから問題ない」と考える方もいるかもしれませんが、実は地域分散をしても、特定のセクターや業種に偏っている可能性もあります。例えば、近年パフォーマンスが堅調な日経平均株価や新興国株価指数には、AI関連需要の恩恵を受ける半導体関連銘柄が上位に組み入れられているケースがあります。このような指数を組み合わせても、AI関連銘柄からの分散という意味では不十分かもしれません。

では、地域分散以外の視点で、分散投資の選択肢はあるでしょうか。

そうですね。長年にわたり増配を続けている米国の連続増配銘柄が、選択肢の1つになるのではないかと思います。長期にわたって増配を継続している米国企業で構成される「S&P500配当貴族指数」があります。この指数は、米国を代表する大型株500社で構成される「S&P500指数」の採用銘柄のうち、25年以上連続で増配している企業で構成されています。特定のセクターに偏らないように銘柄を選出しており、S&P500指数やナスダック総合指数に比べ、情報技術セクターの割合が小さいのが特徴です。

S&P500配当貴族指数の長期的なパフォーマンスを見ると、下の図表のように、概ねS&P500指数を上回る株価パフォーマンスを示しています。配当に注目した銘柄選びは、安定性に重きを置いているように見えるかもしれませんが、25年以上連続増配ができるということは、利益成長が伴わなければ実現できません。利益が着実に成長している銘柄群であることがパフォーマンスからも分かると思います。

連続増配企業の投資パフォーマンス(価格指数)

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(注)データは日次で、直近値は2026年5月15日。価格指数での推移。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成

主なS&P500配当貴族指数の構成銘柄は

S&P500配当貴族指数には、どのような銘柄が組み入れられているのでしょうか。

2026年4月30日時点の構成銘柄数は69です。毎年1月に定期的な銘柄の入れ替えが検討・実施されます(採用基準への適合状況に応じて構成銘柄が変更される場合があります)。業種別では「生活必需品」の比率が高いです。例えば、69年連続で増配している日用品メーカーのP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)のほか、コカ・コーラ、ウォルマートなどが含まれています。その他、長年培ってきたブランド力や技術力を強みとする会社が多い印象があります。

下の表はS&P500配当貴族指数の構成銘柄のうち、AI関連とは異なる代表的な銘柄を掲載しています。株のポートフォリオ全体に占めるAI関連銘柄への投資比率が高い場合、S&P500配当貴族指数組み入れ銘柄の一部を追加すると、業種分散の効果が期待できるでしょう。

S&P500配当貴族指数に組み入れられているダウ指数構成銘柄の例

(注)FY1は予想1期目。一株当たり予想配当金は、各期の年間一株当たり配当金総額。予想配当利回りは、各期の一株当たり予想配当金を2026年5月15日時点の株価で除したもの。配当予想は2026年5月15日時点のLSEG集計による市場予想平均で、その後変更となっている可能性には留意。連続増配年数は、直近決算期(FY1が2025年12月期の企業の場合は2024年12月期)までの年数。全てを網羅しているわけではない。2026年5月15日時点のS&P 500指数の12ヶ月先予想配当利回り(今後4四半期の予想配当金合計額を基にした配当利回り)は1.08%。
(出所)会社資料、LSEGより野村證券投資情報部作成

2020年以降はS&P500指数がアウトパフォームする傾向に

過去のデータを見る限り、長期的なパフォーマンスが良好であるならば、逆にS&P500指数よりも、S&P500配当貴族指数に投資をするのも選択肢の一つでしょうか。

長期的なパフォーマンスは良好ですが、最近の状況は異なっています。2020年以降のパフォーマンスを比べると、足元ではS&P500配当貴族指数よりも、S&P500指数のほうがアウトパフォームしていることが分かります。

NYSE FANG+(プラス)指数とS&P500配当貴族指数

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(注)データは日次で、直近値は2026年5月15日。NYSE FANG+(プラス)指数とは、フェイスブック(2021年10月にメタ・プラットフォームズに社名変更)、アマゾン・ドットコム、ネットフリックス、グーグル(親会社アルファベット)の頭文字をつないだ「FANG」に、大手情報技術関連6銘柄を加えた10銘柄に等金額投資する株価指数。価格指数の推移。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成

背景には米国のハイテク大手に投資資金が集中してきたことが考えられます。茶色の線で示したマグニフィセント・セブンを含む大手情報技術企業10社を構成銘柄とする「NYSE FANG+指数」が大きく上昇しており、このような局面ではS&P500指数がアウトパフォームしやすい傾向にあります。米国株式市場のけん引役となっているAI関連銘柄を一定割合保有していないと、市場全体の上昇局面にはついていけない可能性があります。

このような指数の特徴や値動きの傾向を踏まえると、S&P500指数などへの積立投資から資産形成を始めた方にも向いているでしょうか。

そうですね。例えば、S&P500指数を対象としたインデックスファンドへの積立投資を中心に資産形成をしている方が、分散投資先の1つとして、S&P500配当貴族指数をポートフォリオに加えることは合理的でしょう。実際、2025年末から2026年3月上旬にかけて、NYSE FANG+指数の上値が重くなった局面では、S&P500配当貴族指数は相対的に堅調に推移しました。AI関連銘柄への一極集中を心配される方は、分散投資の選択肢として、異なる視点での「成長株」も参考にされてはいかがでしょうか。

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野村證券 投資情報部 シニア・ストラテジスト
村山 誠
1990年野村総合研究所入社、1998年に野村證券転籍。エクイティアナリスト、クレジットアナリストとして勤務。2011年6月より米国株ストラテジー担当。投資環境の分析、個別株の投資アイデアを提供。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」出演中。

※記事の中で個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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