キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)とキヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は5月21日、農地の画像データや気象・土壌などの環境データをAIで整理・可視化し、農家の日々の作業判断や技術継承を支援するサービスの実装検証を愛媛県で開始すると発表した。
今回の取り組みは、愛媛県が地域課題の解決を目的として推進するデジタル実装加速化プロジェクト「トライアングルエヒメ2.0」に、2025年度に続き継続採択されたものである。
2025年度の実装検証では、農地に設置したネットワークカメラや土壌センサー、ウェアラブルカメラを活用し、キヤノンITSが提供するクラウド型プラットフォーム「Bind Vision」上で農地環境を遠隔から可視化する仕組みを構築した。

農地に設置されたネットワークカメラ

「Bind Vision」画面
遠隔地からの状況把握や作業指示が可能になったことで、適切なタイミングでの農作業が実現し、結果としてミニトマトで136%、里芋で133%、バラ苗で114%の収量増加を達成。さらに、労働時間が3カ月で約300時間の削減につながったほか、歩留まりの改善など、業務効率化の成果を上げている。
しかし、データが可視化されても、栽培ノウハウや経験の少ない農家にとっては「数値をどう読み解き、次の作業判断にどう生かすか」が難しく、データ活用の度合いに経験差が生じてしまうという課題も出てきた。
この課題を解決するため、2026年度のプロジェクトではBind Visionに自然言語で対話できる「サポートAI」を実装する。
このAI機能の最大の特徴は、一般的な生成AIにはない「個別最適化」だ。各農家が蓄積したネットワークカメラの定点画像や各種環境データ、作業履歴といった固有情報に加えて、地域や作物ごとに県や自治体、JAなどが提供する栽培マニュアルや防除指針をAIに学習・参照させる。

実装検証の概要
これにより、農家が「昨年のデータと比べて生育への影響はありそうか」などとチャット形式で質問すると、現在の気温や土壌水分量、地域の特性を踏まえた上で、病害虫リスクや作業計画の目安が的確に提示される仕組みだ。複数のツールを使い分けることなく、同一のユーザーインターフェース内でデータ確認からAIへの相談までをシームレスに行える。
2026年度の実装検証は、昨年度から引き続き実証を行う相原バラ園(バラ苗・露地栽培)および日高農園(里芋の露地栽培・ミニトマトのハウス水耕栽培)に加え、新たに首藤農園(アスパラガスのハウス土耕栽培)を迎えて実施される。これにより、露地栽培からハウス栽培まで、幅広い農業環境におけるAIの有効性を多角的に検証していく。
両社は、本プロジェクトを通じて、熟練者の経験や専門的な知見をAIが補完し、経験の浅い従事者でもデータドリブンな農業が実践できるモデルの構築を目指している。2026年3月までにAI開発と実証を終え、2027年以降には愛媛県内でのサービス定着を皮切りに、全国展開を見据えた事業化を進めていく。
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