GIGAスクール構想で、子どもたちに一人一台の端末が整備されてから、数年が経ちました。学校では、タブレットを使うこと自体はもう特別なことではなくなっています。

今、考えたいのは「使うか、使わないか」ではありません。何に使うのか。何は紙や鉛筆で続けるのか。どこまで家庭で見守る必要があるのか。そこに話が移ってきているように感じます。

熊本市と福岡市の事例を見ると、タブレット学習のよさは確かにあります。一方で、書く力、目や姿勢への影響、端末の重さ、生成AIとの付き合い方など、見過ごせない変化も出てきています。

熊本市教委の調査では、8割超の教員が授業改善を実感する一方、児童生徒の書く力の低下が課題となった。

出典: 「タブレットで授業改善」8割 熊本市教委 学校アンケート「書く力」課題 教員指摘(熊本日日新聞) – Yahoo!ニュース

福岡市では導入5年を経て、単に端末を「使う」から「正しく付き合う」リテラシーを育む段階へ移行している。

出典: 教育の現場は「使う」→「正しく付き合う」へ タブレット端末使用の「ICT教育」開始から5年 学校で失敗を経験する取り組みも(RKB毎日放送) – Yahoo!ニュース

熊本市で見えてきた手応えと、「書く力」への不安

熊本市教育委員会のアンケートでは、小学校教員の約9割、中学校教員の約8割が、端末の活用は授業改善に役立っていると答えています。児童生徒の側も、9割以上が「学びが深まった」と感じているそうです。

わからないことをすぐ調べられる。考えを共有しやすい。写真や動画を使って、自分の考えを説明できる。そうしたよさは、たしかに授業の中に入ってきました。

ただ、その一方で気になる声もあります。導入前から指導している教員の半数以上が、「字を書く力が落ちた」と感じているという点です。

タブレットは便利です。けれど、便利になった分だけ、ノートに書く、文字を整えて書く、考えながら手を動かす時間は少しずつ減っていきます。入力できることと、書いて考えることは同じではありません。ここは、学校でも家庭でも一度立ち止まって考えたいところです。

目、姿勢、そして毎日の「重さ」も小さくない

熊本市の調査でもう一つ気になったのは、体への負担です。小中学校ともに、約半数の教員が目や姿勢への影響を心配しているそうです。子どもたちからは「端末が重い」という声も出ています。

これは、家庭でも実感しやすい問題です。ランドセルに端末を入れて持ち帰る。家で充電する。宿題でも開く。以前なら学校に置いてきた道具を、毎日のように持ち歩くことになります。

もちろん、端末を使うこと自体が悪いわけではありません。ただ、「当たり前」になったからこそ、画面との距離、使う時間、姿勢、持ち帰りの負担を、大人が時々確認する必要があります。

子どもは、夢中になると画面に顔を近づけます。背中が丸くなっていても、自分では気づきにくいものです。家庭で細かく管理しすぎる必要はありませんが、「少し離れて見ようか」「一度休もうか」と声をかけるくらいの関わりは、これからますます大切になると思います。

福岡市に見る、デジタルと紙の使い分け

福岡市では、本格的な端末活用が始まってから5年が経ちました。現在の6年生は、入学時からタブレットがある学校生活を送ってきた世代です。

野芥小学校では、「タブレットがない授業は考えられない」という声もあるほど、日常の学習に入り込んでいるそうです。ただ、そこで大切なのは、何でもデジタルに置き換えているわけではないという点です。

たとえば漢字の学習では、電子黒板で書き順を確認しながら、実際には紙のドリルに書き込む。調べる、共有する、発表する場面ではタブレットを使い、書いて覚える場面では紙や鉛筆を使う。そうした使い分けが少しずつ進んでいます。

タブレットを使う力だけでなく、使わない方がよい場面を判断する力も、これからの子どもには必要になります。これは学校だけでなく、家庭でのスマホやゲームとの付き合い方にもつながる話です。

生成AIの時代に、「考えること」をどう残すか

両市の事例からは、教える側の差も見えてきます。端末をどう使うかは、教師の経験や得意不得意によって差が出やすいところです。福岡市では、教員同士で実践を共有する場を設け、学校全体で活用の仕方を学び合っています。

さらに、避けて通れないのが生成AIです。熊本市では、教員の約4割が校務や教材研究に生成AIを活用しているとされています。一方で、福岡市の現場では、子どもがすぐにAIに答えを求めようとする場面もあるそうです。

そのときに大切になるのは、「答えを出すこと」だけを学習にしないことです。教師が子どもに「それを考えるのが学習なんだよ」と伝える場面があるという話は、とても象徴的だと思います。

便利な道具が増えるほど、子どもは早く答えにたどり着けます。けれど、迷う、比べる、書き直す、友達の考えを聞いて考え直す。そうした時間の中にこそ、学びがあります。

タブレットを使わせるだけで、学びが深まるわけではない

一人一台のタブレットは、学校の学びを大きく変えました。調べることも、共有することも、表現することも、以前よりずっとしやすくなっています。その成果は、熊本市や福岡市の事例からも見えてきます。

ただ、端末があるだけで学びが深まるわけではありません。書く力をどう育てるのか。目や姿勢への負担をどう減らすのか。紙とデジタルをどう使い分けるのか。生成AIに答えを任せすぎないために、考える時間をどう残すのか。

タブレットは、うまく使えば子どもの学びを広げます。しかし、使い方を間違えれば、子どもが考える時間や、手を動かして身につける時間を奪うことにもなります。

だからこそ、これから必要なのは「もっと使う」ことだけではありません。何のために使うのかを、大人が子どもと一緒に考え続けることです。

タブレットが当たり前になった今こそ、便利さの裏で子どもにどんな変化が起きているのか。そこを見落とさないことが、学校にも家庭にも求められているのだと思います。

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