ウクライナのドローン攻撃を受けて燃え上がるモスクワ郊外の住宅(5月17日、提供:Moscow Region Governor Andrei Vorobyev’s official telegram channel/AP/アフロ)

(英エコノミスト誌 2026年5月16日号)

ウクライナで人的損失が増えるなか、ウラジーミル・プーチンが国内でさらに窮地に追い込まれたように見える。

 今年の5月9日の戦勝記念日にモスクワで行われたパレードには勝利のしるしが全くなかった。

 例年であれば、ナチスドイツを倒すにあたってソビエト連邦が果たした役割を祝福するために戦車をはじめとする軍用車両が大きな音を立てて赤の広場を通るが、それが20年ぶりに見られなかった。

 ロシア当局は、パレードのために装甲車やミサイル輸送車などを会場の近くに集めて待機させるのは危険すぎると判断した。

 確かに、そんなことをすれば、実戦でますます成果を上げているウクライナのドローンにとって格好の標的になっていただろう。

 戦勝記念日を前にしてモスクワとサンクトペテルブルクでモバイル・インターネット・サービスが遮断されたのも、安全上の理由からだった。

 ロシア国内の遠く離れた場所から対空防衛システムが数多く集められ、再配備された。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこれを皮肉り、パレードの開催を「許可する」大統領令を出し、赤の広場は攻撃されないと述べた。

 米国が仲介した3日間の停戦でウクライナとロシアが合意した直後のことだったが、早くも翌10日には相手が合意を破ったと双方が非難し合っていた。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はパレードの後、戦争は「終わりつつある」と思うと述べた。

地味なパレードが象徴すること

 縮小されたパレードの意味するところを強調しすぎるのは難しい。

 プーチン氏が率いるロシアの軍事力の縮図を見せつけるための行事が、かえってその脆さと弱さを示すことになったからだ。

 少なくともこの行事は、ロシアの戦場での後退と、ウクライナの長距離攻撃がますます効果的になっていることへのロシアの恐怖を正確に反映していた。

 戦いの主導権はおよそ3年ぶりにウクライナ側に移ったように見える。

 都市やエネルギー供給網をロシアのドローンやミサイルの一群に夜な夜な攻撃される厳しい冬を乗り越えたウクライナは、ここに来て戦いの潮目を変えつつある。

 今では、ほぼあらゆる尺度で見てロシア側の負担を増やしている。

 ロシア軍は、期待していた春季攻勢が失敗に終わっただけでなく、4月には支配地域の純減も強いられた。ウクライナがロシアのクルスク州で支配地域を得た2024年8月以来のことだ。

 米ワシントンのシンクタンク、戦争研究所(ISW)は最近、ウクライナの成功に寄与している要因をリストアップし、ウクライナ軍による地上での反撃と中距離攻撃、ロシアによるウクライナでのスターリンク端末違法使用の終結、そして疑心暗鬼に陥ったロシア政府のメッセージング・アプリ「テレグラム」の利用規制を挙げた。

 ISWの地図から本誌エコノミストが計算したところ、ロシアは過去30日間で支配地域を113平方キロメートル失っている。

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