茨城県が5月11日から、外国人の不法就労をめぐり「通報奨励金制度」を開始すると発表し、批判が相次いでいる。
この制度は、不法就労と分かっていながら外国人を雇う事業者を摘発するもので、県警による摘発につながった通報には1万円程度の謝礼が支払われる。
これに対し、「本質的解決にならない」「不法就労ではないかという疑いの目を持たせ、不当な偏見を生む」として、弁護士会や人権団体などが反対声明を発表している。
「通報奨励金制度」とは。経緯を振り返る
茨城県によると、この通報奨励金制度は、県内で深刻化する外国人の不法就労への対策。
県内の不法就労者数は4年連続で全国最多で、県民からは「不法就労が治安の悪化の温床となっているのではないかとの不安の声もある」と、県は対策の必要性を主張している。
これまでも、事業者への個別訪問による不法就労防止の啓発や調査などを行なってきたが、「成果が限定的」だったとして、「根拠がある情報」には奨励金を伴う通報制度を開始する。
通報をめぐっては、事業者に関するものに限定し、「外国人個人に関する情報は一切受け付けない」としている。また匿名での通報はできず、連絡先などを提供する必要がある。
県は「提供された情報は個人情報保護等に配慮しつつ、情報提供者への聴取や事業者への個別訪問などを通じて確認を行った上で県警に提供する」と説明している。
「県が密告を奨励」「本質的解決にならない」反対声明、相次ぐ
同制度に対しては、3月ごろから反対声明が相次いで発表されている。
茨城県弁護士会の遠藤俊弘会長は会長声明で、「不法就労問題の本質的解決にならない」とし、以下のように指摘した。
「一般市民に対し、外国につながる人びとが就労しているだけで、不法就労ではないかという疑いの目を持たせることになり、外国につながる人びとに対する不当な偏見を生み、社会に差別と分断を生じさせることになる」
「茨城県における不法就労者は農業分野が多くを占めており、これは農業分野の深刻な人手不足からくるものである。また『不法就労』となる外国人の中には、技能実習生等がパワハラや性的搾取、劣悪な労働条件、労働環境などを理由に逃げ出した者も少なくない」
その上で「なぜ不法就労が生じているのか原因を分析し、原因を解決するための合理的な方策が取られるべき」と主張した。
国際人権NGO「アムネスティ・インターナショナル日本」は声明で、通報が報酬制という点も問題視し、「経済的インセンティブを付与することにより、市民による通報行為を積極的に誘導する構造」だと批判。
また、特別な知識などを有さない一般市民による通報を奨励する危険性も危惧した。
「非正規就労の判断には高度な法的専門性が求められるため、通報者に十分な判断能力が担保されない場合、結果として通報対象の特定が外見、言語、国籍等の属性に依拠して行われる『レイシャル・プロファイリング』を誘発する可能性も否定できません」
NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」や「外国人人権法連絡会」などの11団体は共同で反対声明を発表し、同制度の創設に強く反対。
「通報に対して報奨金を支払うということは、県が『密告』を奨励していることを意味」し、「人びとが互いを疑いの目で眼差す、相互監視制度に他なりません。いたずらに人びとの間に不信感を植え付け、外国籍者など外国につながる人びとを不安に陥れる愚行です」と強く批判した。
これらの批判に対し県は、「排外主義の助長や国籍・人種等を理由とした外国人の差別などにつながるといった一部の批判については、まったく当たらない」と反論。
大井川和彦知事は4月2日の定例会見で「不法就労者の是正は人権侵害どころか人権保護そのもの」「是正措置を行うことが差別や偏見を生む、これは全く成り立たない批判」と話した。
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