同氏率いるネビウスはその直前、メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)から計算資源へのアクセス料金として今後5年間で最大270億ドルを受け取る大型契約を発表したばかり。AIインフラへの巨額投資、建設ラッシュについて質問をぶつける上でまたとないタイミングとなりました。

以下では、ヴォロジュ氏への取材内容を「超」要約して紹介します。

AI市場の変化を示す「四つのC」とは?

AI分野にはいま頭文字「C」から始まる四つのボトルネックが存在する。昨年とは状況が異なる。

Capacity(容量):変圧器やガス発電機など必須の構成要素が決定的に不足し、データセンター需要に追いついていないCapital(資本):昨年のAIインフラ市場では数十億ドル規模の資金調達でも話題になったが、いまや市場の10%を獲得するのにも推定4000億ドルが必要。規模感の拡大が著しいChips(半導体):昨年はデータセンター向けのGPU(画像処理装置)確保が最大の課題だったが、シリコンウェーハやメモリチップなど不足や制約の範囲は拡大しているCustomers(顧客):昨年はAI需要そのものに疑念の雲がかかっていた。今年はすでに需要の存在が明確で、供給を上回っているネビウスがAI計算スタックを何もかも自社開発する理由は?

アマゾン(Amazon)やグーグル(Google)、マイクロソフト(Microsoft)に続く「第4のハイパースケーラー」を目指そうとすれば、計算容量の卸売業者ではいられない。

サーバーやラックを自社設計することで中間業者を省いて利益を確保できる。また、自社保有により容量を効率的に配分することで、大企業顧客のニーズに的確に対応できる。

エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは今年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の壇上で、AIのスタック(層状構造)を「5層のケーキ」と表現したが、それに従って説明するなら、ネビウスは第1層の土地・電力・建屋、第2層の計算ハードウェアだけでも(自社設計により)15〜20%のコスト削減を実現している。

データセンター建設に対する批判的な意見にどう対処するのか?

ハイパースケールのインフラ構築についてはヤンデックス時代から10年、20年の実績を持ち、物理的な制約に対処するノウハウの蓄積が社内にある。

土地や建設許可の取得、電力契約も外部に委託することはない。地域コミュニティとの関係構築は直接の対話による信頼関係構築を重視し、住民が誇りに思えるようなインフラを目指して複数のプロジェクトを進めている。

「ダークGPU」問題とは?

遊休状態の計算資源をそう呼んでいる。顧客企業は所定の料金を支払っているにもかかわらず、計算能力を運用する側がそもそも最大稼働率を実現できるよう設計していないため、効率的に資源を使えない競合インフラも多い。

ネビウスはワークロードの管理やワークフローの調整(オーケストレーション)を通じて、顧客企業が利用可能な実質容量を常時把握できるようにしている。

メタと締結した5年270億ドルの巨大契約は「コアビジネスではない」と聞いたが?

ネビウスのコアビジネスはあくまで「マルチテナント型」AIクラウド。スタートアップなどの顧客企業が必要とする柔軟性の高いインフラおよびソフトウェアを提供するためのインフラ整備を急ぎたい。

非常に高い水準を要求されるメタとの協業は素晴らしい機会であり、ネビウスの企業としての信頼性や技術力の高さにお墨付きが与えられたとも言えるが、それもコアビジネス推進のための燃料と位置づけている。

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気になる動き

ここ1週間のニュースの中から気になる2本を取り上げ、ポイントを絞ってご紹介します。

バンク・オブ・アメリカ、メモリ関連株の急落は「行き過ぎ」と指摘。

グーグルがデータ圧縮アルゴリズム「TurboQuant(ターボクアント)」を発表。推論処理時のメモリ使用量を6分の1以下に削減できるとの触れ込みで、メモリチップ不足も解消されるとの見方からメモリ関連株に売りが殺到。マイクロンテクノロジー(Micron Technology)など2桁の下落を経験した銘柄も。

マイクロンテクノロジー(Micron Technology)の株価推移。マイクロンテクノロジー(Micron Technology)の株価推移。Investing.com/Naomi Buchanan/Business Insider

しかし、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)はあらためて「AI支出ないしAI需要の存在を証明するのは究極的にはAIへの設備投資であって、効率化技術(の逐一の動向)ではない」と指摘。

さらに、2025年1月に中国ディープシーク(DeepSeek)ショックで株価が急落した時のように「無根拠な」恐怖心がファンダメンタルズを上回り、劇的な下落を引き起こしたと分析しています。

グーグルの新たなAIツール「Agent Smith」に大反響、アクセス制限も。

グーグルがコーディングなどのタスクを自動化する新たな社内向けAIツール「Agent Smith(エージェント・スミス)」を年初から提供開始したことが判明しました。ノートパソコンを携行していない場合でも、スマートフォンから指示を出してタスクを進行可能とか。

共同創業者のセルゲイ・ブリン氏は3月上旬の社内ミーティングに参加した際、グーグルにとって今年はAIエージェントが大きなテーマになると強調。AIエージェント「OpenClaw」のようなツールを社内開発中だと明かしたそうです。

今週の「勝ち組」と「負け組」ネイバン(Navan)の株価の推移。ネイバン(Navan)の株価の推移。Markets Insider

勝ち組:法人向け出張・経費管理ソリューションのネイバン(Navan)株価が43%の急上昇。3月25日に発表した第4四半期決算(2025年11〜26年1月)で、第1四半期および通年の売上高見通しが市場予想を大幅に上回ったことが好材料に。原油価格の上昇は出張費の上昇につながるため、同社の収益をさらに押し上げる可能性。

ウエスタンデジタル(Western Digital Corporation)の株価推移。ウエスタンデジタル(Western Digital Corporation)の株価推移。Markets Insider

負け組:メモリチップ株が急落。グーグルがデータ圧縮アルゴリズム「TurboQuant(ターボクアント)」を発表。ウエスタンデジタル(Western Digital Corporation)やマイクロンテクノロジー(Micron Technology)などメモリチップ関連株が軒並み下落。

テック業界の労働環境従業員一人当たり売上高の主要企業比較(非公開企業の数字は推定)。太字は最近レイオフを実施した企業。従業員一人当たり売上高の主要企業比較(非公開企業の数字は推定)。太字は最近レイオフを実施した企業。levels.fyi/Monsicha Srisuantang/Business Insider

「従業員一人当たり売上高」が、テック業界の実態を映し出す最も有用な指標の一つとして、あらためて注目を浴びています。

ブルームバーグ(Bloomberg)を経営していた時代のマイケル・ブルームバーグ氏(のちにニューヨーク市長)はこの数字にこだわったそうです。

そのロジックはいたってシンプル。従業員一人ひとりが稼ぎ出す売上高を守るべき規律とすることで、採用はビジネスの実質的な成長と連動し、目に見える形で収益に貢献しないポジションは厳しい目にさらされることになります。

しかし、パンデミック期のテックブームでそうした規律は緩みました。テック企業は積極採用に走り、従業員数は企業のモメンタム(勢い)とほぼイコールと見なされましたが、成長曲線が正常化する頃には実態とのかい離が鮮明に。結果として、大規模な人員削減が相次ぎ、いまだに当時の過剰採用の後始末を続けている企業も少なくありません。

そしていま、急激な進化を遂げるAIがこの揺り戻しを加速させています。コーディング支援ツールはその代表例で、数千人のソフトウェアエンジニアを追加採用すべきかどうか、どの企業も頭を悩ませているところです。

上のチャートは業界の報酬分析を手がけるLevels.fyi(レベルズ・ドット・エフワイアイ)の最新データ。テック企業の競争軸はもはや従業員数ではなく効率に移っており、成長は従業員一人当たり売上高で評価されるようになっています。