丸紅ギャラリー(東京都千代田区)で、「マックス・トゥーレ: 知られざるポスト印象派の画家」が3月17日から開催されます。本展は日本で初めてのマックス・トゥーレ(1872-1963)の個展です。エンジニアとしてのキャリアも輝かしいものがありますが、画家としても才能を発揮した人でした。
彼の作品は第二次世界大戦中のドイツ軍によるオンフルール港占領中に数点は消失したものの、それ以外の約350点は今日まで拡散することなく娘や孫たちによって保存されてきました。画家マックスは生存中に1点も売ることはなく、もっぱら楽しみのために絵を描くことに専念する人生を送りました。
マックス・トゥーレは新たな絵画の潮流を築いたわけではありませんが、1920年代に影響を受けた分割主義あるいは点描主義などの理論を厳格に学び、応用した画家の一人でした。
2019年にノルマンディーのオンフルールにあるウジェーヌ・ブーダン美術館が彼の作品5点を収蔵し、続いてドーヴィルのフランシスケーヌ美術館が入手するまで、彼の作品は今まで長い間公開されたことはありませんでした。出身地のフランスでも個展が開かれたのは、それから4年後の2023年、ウジェーヌ・ブーダン美術館でのことでした。
マックス・トゥーレ: 知られざるポスト印象派の画家
会場:丸紅ギャラリー(東京都千代田区大手町1-4-2 丸紅ビル1F)
会期:2026年3月17日(火)~5月23日(土)
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:日曜・祝日
入館料:一般 500円(高校生以下は無料)
※丸紅ギャラリーの入館料は全額、社会福祉法人丸紅基金へ寄付されます
アクセス:
東京メトロ「竹橋駅」3a出口より徒歩1分
東京メトロ・都営地下鉄「大手町駅」C2b出口より徒歩6分
詳細は、丸紅ギャラリー公式サイトまで。
展示作品の一部を紹介
マックス・トゥーレ《オンフルール、ビュタンの浜辺》制作年不詳、個人蔵
マックス・トゥーレが「ラ・マルトゥルネ」と名付けた彼のヴィラから海岸に向かって坂を下ると、クロード・モネ(Claude Monet, 1840-1926)やジョルジュ・スーラ(Georges Seurat, 1859-91)らが描いたオンフルールで最も有名な場所の一つ、ビュタンの浜辺に出ます。
《オンフルール、ビュタンの浜辺》と題するマックスの絵は、そのピュタンから西側に灯台を望んだ一枚で、海岸線が大きな斜めの軸となる特徴的な構図となっています。
マックス・トゥーレ 《小舟で遊ぶ子供》制作年不詳、個人蔵
農家の庭に流れる水辺で遊ぶ子供の姿を印象派風のタッチで描いています。小品ながら非常に情感あふれる作品で、まるで可愛い孫が小川に手づくりの小舟を浮かべて一心に遊んでいる姿を思い浮かべながら、画家が愛情を込めて描いているようです。
マックス・トゥーレの風景画には、本作のように日常的な生活の場面が、描かれている人々への優しいまなざしを通して描写されているものが数多く残っています。
マックス・トゥーレ 《コードベック・アン・コーのアンリIV世ホテル》1909年、個人蔵
1909年制作の本作は第一次世界大戦以前に描かれました。この時期は対象物を明瞭な輪郭を刻み込むような描き方をしており、1920年代の作品に見られる筆のタッチの断片化による分割描法や、点描画法を試みた時期と様式上の差異が識別されます。
マックス・トゥーレ 《ムーア様式の宮殿で日本使節団を迎えるカルルV世》制作年不詳、個人蔵
マックス・トゥーレは新奇なテーマで歴史的シーンも描いています。たとえば、最晩年に描いたこの《ムーア様式の宮殿で日本使節団を迎えるカルルV世》や彼自身がアメリカとの長いかかわりをもったことを想起させるような作品「インディアンの使節団」シリーズなどがあります。ちなみに日本の仙台藩主伊達政宗がスペイン国王とローマ教皇・パウロV世のもとに派遣した慶長遣欧使節がスペイン国王に謁見したのは1615年で、カルルV世(1500-1558)でなくフェリペIII世の時代。本作の主題は画家の想像によるものかもしれません。
エンジニアとしての顔を持ちながら、生涯にわたり「描く楽しみ」を追求し続けたマックス・トゥーレ。彼の手元に大切に保管されていた約350点の作品群は、近年に至るまで一般に公開されることがありませんでした。1920年代に彼が深く傾倒した点描技法の繊細なタッチや、歴史への想像力を膨らませた壮大な構図、そして身近な人々へ向けられた優しい眼差しなど、見どころあふれる“知られざるポスト印象派の画家”の作品群が日本で初めて披露される貴重な機会です。ぜひお見逃しなく。(美術展ナビ)
