2026年2月25日 午前7時30分

 【論説】高齢ドライバーによる交通事故が社会問題化する中、福井県でも対策の検討が迫られている。ブレーキとアクセルの踏み間違いなどによる事故は多発し、県内でも高齢者が運転する車が建物に突っ込むなどの事故が起きている。自治体は高齢者の免許返納を支援するが、代替交通手段が乏しい県内では、返納は生活の縮小に直結するだけに十分に進んでいるとは言い難い。

 福井県内の65歳以上の免許自主返納者は2018年の2551人に対し、19年は3161人で23・9%増加した。これは、19年4月に東京・池袋で起きた、当時87歳の旧通産省工業技術院長が運転する乗用車が暴走し、母子2人が死亡した事故が大きく報道されたことが要因とみられる。その後は伸び悩み、24年は2813人にとどまった。

 県警によると、高齢ドライバーがより過失の重い「第1当事者」となった県内の事故は24年に275件あり、全体の28・5%を占めた。19~23年をみても事故全体に占める割合は3割前後で推移しており、高齢ドライバー対策が喫緊の課題であることは明らかだ。

 自治体は免許返納者に対し、交通系ICカードの提供やコミュニティーバスの利用無料証交付といった支援を展開するが、実生活を支える水準には達していない。本紙連載「ドキュメントふくい」で紹介した80代男性は「車がなければ暮らせない街をつくっておきながら、免許返納せよと言われても」と語った。返納が生活基盤を揺るがす決断であることが伝わってくる。

 一方で、高齢者講習の実車運転では、アクセルを踏んでいるつもりが左足でブレーキを踏み込むなど極めて危うい操作が少なからず見られるという。自動車学校の教習指導員が、運転を控えた方がよいと感じる高齢ドライバーが2、3割いると打ち明けたことは、重く受け止める必要がある。

 痛ましい事故を抑止するには、高齢ドライバーの免許更新制度について、一歩踏み込んだ見直しが必要ではないか。記憶力や判断力が低下している高齢者でも、同乗者がいる場合は事故リスクが下がるとする研究もある。「同乗者あり」といった条件付き免許や、農作業など生活維持に不可欠な移動に限って認める「エリア限定免許」など、安全と生活を両立させる制度設計を国に求めたい。

 車の運転をやめて自由に移動する手段を失った高齢者は、運転を続けている人に比べ、要介護状態になるリスクが2・2倍になるとの研究結果もある。免許返納や規制強化が、高齢者の健康や社会参加を損なう結果になっては本末転倒だ。社会全体で持続可能な解決策を導かねばならない。