福井県、小城市、福山市の防災・減災自治体事例

近年、気候変動の影響により気象災害が激甚化・頻発化し、南海トラフ地震等の大規模地震は切迫しています。また、高度成長期以降に集中的に整備されたインフラは老朽化しており、適切な対応をしなければ負担の増大のみならず、社会経済システムが機能不全に陥る恐れがあります。
このような危機に打ち勝ち、国民の生命・財産を守り、社会の重要な機能を維持するため、防災・減災、国土強靭化の取り組みの加速化・深化を図る必要があります。

そこで、内閣官房 国土強靭化推進室が5か年加速化対策全123項目について、災害時に効果を発揮した事例等を幅広く調査し、関係府省庁より報告があったものを取りまとめた「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策による取組事例集」より、自治体が実施した事業を抜粋して紹介します。

今回は、福井県、小城市、福山市の防災・減災自治体事例です。

停電時も環境放射線モニタリングを継続|福井県

福井県は災害時に活用する情報サービスが機能停止し、情報の収集・伝達ができずに避難行動や救助・支援が遅れる事態を防ぐ放射線監視体制の機能維持に関する強化対策として、アルミパネル観測局無停電電源装置更新を実施しました。
停電時に放射線測定装置等への電力供給を行う無停電電源装置を更新したもので、令和4年8月の大雨による停電の際に電力供給を行い、装置の停止を回避。環境放射線モニタリングを継続しました。

地域の概要・課題

環境放射線モニタリングは原子力施設等からの放射線、放射性物質による住民への影響を確認するために実施されており、災害が起こった際には原子炉施設等からの放射線や放射性物質の放出を検知し、対策に供する役割をもっています。
そのため、災害時も継続して稼働することが求められており、停電の際に放射線測定装置等への電力供給を行う機器を整備することが必要でした。

事業の概要

原子力施設周辺の環境放射能等を24時間連続監視するために設置している「環境放射線監視テレメーターシステム」の放射線観測局において、商用電源の停電時に測定を継続するために設置している、無停電電源装置21台を更新しました。

なお、停電時の電力供給のため、無停電電源装置と非常用発電機を設置しており、無停電電源装置は非常用発電設備が起動するまでの対策、非常用発電機は長時間の停電への対応のため設置しています。

福井県の環境放射線モニタリング体制

効果

無停電電源装置と非常用発電設備により、令和4年8月の大雨による災害において商用電源が断絶した際に、放射線測定装置等の稼働停止を回避し、環境放射線モニタリングを継続することができ、周辺住民の安全を確保できました。

再エネ設備導入で災害に強い防災拠点・避難施設を整備|小城市

佐賀県 小城市は、電力供給ネットワークの長期間・大規模にわたる機能の停止に備えた災害時に役立つ避難施設防災拠点の再エネ・蓄エネシステムに関する対策として、小城市庁舎への再エネ設備等の導入事業を実施しました。
市庁舎、保健福祉センターに太陽光発電設備や蓄電池を導入したもので、災害時には市庁舎は防災拠点として、保健福祉センターは避難施設として各機能を維持することが見込まれています。

地域の概要・課題

近年、台風等の災害が頻発化しており、全国各地で大きな被害をもたらしています。また災害に伴う停電も各地で頻発しています。
行政機能を維持し、迅速に対応するためには、災害時に機能を発揮する拠点(避難所や防災拠点)の非常用電源の確保や停電時に自立可能な再生可能エネルギー設備の導入が非常に有用です。

事業の概要

地方公共団体の防災計画において、小城市庁舎は災害時の防災拠点、保健福祉センター(三日月保健福祉センター)は避難所として位置づけられています。小城市本庁舎西側と南側の駐車場エリアにおいて、太陽光発電設備や蓄電池を導入し、それぞれの建物まで、系統に接続せずに電線を敷設しました。

〈導入した再エネ設備と蓄電池〉
・太陽光発電設備:552kWp
・鉛蓄電池:3,456kWh

見込まれる効果

台風、地震や大雨などの災害が発生し、停電により系統からの電気が遮断された際にも、今回導入した太陽光発電設備や蓄電池から小城市庁舎・三日月保健福祉センターへ電気を供給し、空調や照明設備を継続して使用することが可能となり、市庁舎は防災拠点として、保健福祉センターは避難施設として72時間機能を継続することができます。

管路耐震化で工業用水の安定供給体制を確保|福山市

広島県 福山市は、用水供給途絶に伴う生産活動への甚大な影響を防ぐ工業用水道の施設に関する耐震災害性強化対策として、福山市工業用水道強靭化事業を実施しています。
老朽化した工業用水の管路を、大規模地震動に耐えうる管路に更新しているもので、災害時においても工業用水の安定供給体制の確保が見込まれています。

地域の概要・課題

福山市工業用水道事業については、南海トラフ地震防災対策推進地域に指定されていることや、施設の老朽化が進んでいることから、これまで以上に耐震化対策や災害発生時のバックアップ体制の強化を図る必要があります。
福山市の製造品出荷額1.7兆円/年を支える鉄鋼業、機械工業などの主要製品の製造に欠かせない工業用水の安定供給を図るため、令和9年度完成へ向けて災害に強い耐震管の布設を順次進めています。

事業の概要

安定的な工業用水の供給を継続するため、2018年度(平成30年度)に策定した「福山市工業用水道事業 更新・耐震化計画」に基づいた管路の耐震化対策を実施しています。
また、災害時でも上下水道と合わせて工業用水道機能を維持し、早期復旧を円滑に進めるため、福山市全体の地域防災計画とは別に、個別の「福山市上下水道局業務継続計画」を策定し、危機管理体制の確立に取り組んでいます。

見込まれる効果

既存の管路は耐震性を有しておらず、大規模地震動に耐えうる管路に更新することで、管路全体の耐震性を強化し、災害時においても福山市全体の工業用水の安定供給体制を確保できます。

〈参照〉内閣官房 国土強靭化推進室「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策による取り組み事例集」