SNSやAI(人工知能)、仮想空間などにより、デジタル社会が広がる。その影響や現代人のあり方について、霊長類を長年研究してきた総合地球環境学研究所(京都市北区)所長、山極寿一さん(73)に聞いた。 (山口景子)
■今の社会をどう見るか。
やまぎわ・じゅいち 1952年、東京生まれ。京大理学部卒。京大大学院理学研究科教授、同研究科長、理学部長などを経て、2014~20年に第26代京大学長。専門は人類進化論。21年から総合地球環境学研究所所長を務める
サルは相手の心をそれほど読まず、相手とどちらが強いかで判断して行動する。共感力を発揮せずに付き合うわけで、人間社会もそうなりつつあるように見え、私は「サル化する人間社会」と呼び、懸念している。
■人間の共感力は低下してしまったのか。
人間が作る集団の限界は150人といわれる。SNSは情報をより多くの人と共有し、民主主義の世の中を広げると予想したが、全く違った。科学的に信頼できるデータではなく、「こうあってほしい」という願望を共有する人だけで集めている。
現代人は150人を大幅に超える社会で生きていると思われがちだが誤解がある。情報を共有できる人数は増えたが、信頼して共に生きる人の数は縮まっている。これでは世界で「分断」が起きるのは当然だ。
■今の京都はどうか。
世界的に昔と違って未来が不確かになってきた。自然災害は増え、社会的な混乱も予想外に広がり、戦争は終わらない。
京都は少し違って1200年の歴史があるから、人々が大きな不安を抱かずに済む。伝統にすがり、昔の人はこう生きていたという暮らしをなぞれば、幸福な暮らしが可能だと思える。
ただ、それが揺らいできた。観光客の増加などが影響し、暮らしの端々に今までと違ったものが見え始めている。
■打開策はあるか。
人間が生きる上で必要なことは「出会い」と「気づき」。その二つを成し遂げられる社交を充実させるべきだ。
京都にはまだ多くの社交の場が残る。顔見世や初釜、歌を詠んだり、お茶をたてたりと伝統的なもの。催しで人々がつながれ、信頼関係を醸成する。
ネットワークを維持するには、実際に会って一緒に何かするのが一番。食事や音楽演奏、スポーツなど何でもいいが、暮らしの中にたくさんちりばめていくことだ。
効率化を求めず、じっくり相手と向き合い、気持ちを読んで付き合う。社交や遊びに時間をかけることが重要だ。
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