グローバル・ウルフ・モーターズの軍用スクーター「モスフィラ」がウクライナで実戦投入されている。YouTube/Global Wolf Motorsウクライナ軍は、ラトビア製の電動キックボードを用いて、素早く、静かに、森の中のオフロードを移動している。このキックボードを使えば、ロシア軍の前線背後への潜入がしやすくなり、オートバイのような騒音が出ないので、接近するドローンのプロペラ音がかき消されることもない。この小型で機動性の高い車両の実戦投入は、戦場で新たな機動力が求められている現状を象徴している。
ウクライナの特殊作戦部隊や前線部隊は、ロシア軍の前線背後への潜入、物資の輸送、ドローンの回避といった任務に、意外な乗り物を使用している。
それがラトビア企業、グローバル・ウルフ・モーターズ(Global Wolf Motors)が製造する軍用キックボード(スクーター)「モスフィラ(Mosphera)」だ。通常のキックボードの約2倍のサイズで、オートバイ用タイヤを装着していると同社の創業者兼CEOであるクラーヴス・アシュマニス(Klāvs Ašmanis)がBusiness Insiderに語っている。

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モスフィラは機動性の高いオフロード電動キックボードであり、最高時速100km、1回のバッテリー充電で最大300kmの走行が可能。重量はわずか約74kgと軽く、重いオートバイよりもコンパクトで扱いやすい。
アシュマニスによれば、前線への物資輸送、ロシア支配地域での偵察、軽傷者の迅速な搬送など多様な任務に使用でき、すでにウクライナで実戦投入されている。
ラトビアでのドローンカンファレンスで展示されたモスフィラ。Business Insider/Sinéad Baker
この一風変わった軍用キックボードは、あらゆる地形を静かに移動できる。しかし現時点では、ウクライナで多数導入されているわけではない。
北大西洋条約機構(NATO)加盟国で、ロシアと国境を接し、ウクライナにとって重要なパートナーであるラトビアが、2023年に他の装備とともに4台のモスフィラを寄贈した。その後追加寄贈もあり、現在ウクライナは11台を保有しているとアシュマニスは説明する。部隊からはさらなる要望が出ているが、今後追加で供給されるかどうかは不明だ。
Business Insiderはラトビア国防省に今後の供給計画についてコメントを求めたが、回答は得られなかった。
モスフィラは、もともと軍事基地内での使用や国境警備、偵察用として設計されたが、ウクライナでの使用により、実戦においてさらに幅広い用途があることがわかったという。「予想を超える性能に、我々は非常に驚かされた」とアシュマニスは語る。
ウクライナ兵士はこれを前線やロシア占領地域にまで持ち込んだ。
アシュマニスによれば、モスフィラには戦場で使われる他の車両にはない利点がある。例えば、従来の車両より小型かつ軽量で、ドローンのプロペラ音をかき消さず、緊急時にはすぐに降車できる。また、モスフィラを使えば、他の任務用の装備を積んだ車両を危険にさらすことなく、迅速かつ大胆な行動が可能だ。
特に森林地帯で真価を発揮するとアシュマニスは言う。
「電動スクーター型のホイールベース(車輪間の距離)のおかげで、木々や細い道の間を縫うように走ることができる。重量も74kgしかないため、万一スタックしてもオートバイよりはるかに引き出しやすい」
さらに使用していないときは、茂みや枝の下などに隠すのも簡単だ。
グローバル・ウルフ・モーターズが公開した動画には、兵士がモスフィラを運転する様子が映されている。YouTube/Global Wolf Motors戦闘に適したキックボード
このような戦闘用キックボードを使用しているのはウクライナ軍だけではない。ロシア軍も電動キックボードを用いて迅速かつ分散した「キックボード突撃」を展開している。ロシア軍がこうした攻撃を仕掛けることで、ウクライナ軍がドローンや砲撃で一度に多数のロシア軍部隊を壊滅させるのは困難になる。しかし、この戦術が完璧というわけではない。
アシュマニスは、モスフィラは通常の電動キックボードよりも戦闘向きだと語る。「キックボードとオートバイの中間に位置し、通常のキックボードよりもオートバイ並みに大きな車輪を備えている」と強調した。
戦闘用キックボードの活用は、戦争が大きく変化したことを反映している。両軍とも、従来の戦闘車両を補完するため、小型で高速かつ柔軟性の高い車両を必死に確保しようとしている。兵士たちは戦車や歩兵戦闘車両に加え、民間用ピックアップトラック、全地形対応車(ATV)、オートバイ、スクーターなど、さまざまな車両で戦場に向かっている。この戦争では、兵士が自転車に乗ることさえある。
キックボードは、比較的安価で容易に取り換えることができ、隠すのも簡単なため、戦場での有用性が高い。大型で高価かつ騒音の大きい車両だとすぐに発見され、破壊されてしまう状況では特に重要な特徴だ。
