一歩外に出ると世界はこんなに広く、そこには多彩な暮らしがある。そう思わせてくれる南紀の旅は、国道42号線沿いから始まった。白浜町、すさみ町、串本町、那智勝浦町。海沿いの4つの町を訪ねると海と密接に結びついた、美しく豊かな人びとの暮らしがあった。

ラストとなる今回は、「那智勝浦町」の魅力をお届けする。

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自然との距離がいい塩梅で新たな生き方も見つかる移住者が半数を占める町

ゆかし潟
入り江が海と切り離された海跡湖。緑多い静かな湖畔は絶好の散歩コース。
東牟婁郡那智勝浦町湯川

那智勝浦には淡水と海水が混ざる周囲2.2kmの汽水湖「ゆかし潟」がある。かつて、詩人・佐藤春夫が愛した場所だ。文豪たちが好んだ湖畔沿いをそぞろ歩くと、近くに熊野詣の湯垢離場で栄えた湯川温泉を発見。歩いて汗をかいたら、ひとっ風呂浴びるのもいい。

茨城県つくば市から移住し、歴史ある老舗旅館を譲り受けて工房兼ショップに改装。ショップの奥にはライブラリールームも備わり、読書会や手仕事の作品の受注スペースになることも。

ゆかし潟から徒歩7分の場所に〈manufact jam〉は静かに佇む。ここは木工作家の古橋治人さんの工房兼ショップだ。廃業して30年経った大きな旅館を一級建築士の資格も持つ古橋さんが改装した。

「以前は茨城のつくば市に住んでいたんですよ。でも、もっと人が少ない自然のなかでものづくりがしたくて、縁もゆかりもない那智勝浦に来ました」。

「定期的に行っていた展示会をいっさいやめたことで、自分のペースや季節の流れに沿ったものづくりができるようになった」と古橋さん。

この地にすぐ順応し、庭で畑を耕したり、大自然を満喫している古橋さん。さらにこちらに来てから動物の解体技術を習得。店頭にはさまざまな動物の骨が並んでいた。木工以外の技術が、この地でどんどん身についたというから面白い。

和歌山はかつて「紀伊国」と呼ばれていた。木の国が転じたものとされている。昔から木が多く、いまも県土の75%以上が森林だ。県南部は温暖多雨な気候で、木々が健やかに成長する。

「ここでは都会とは見える階層が違う。これからは木以外の素材も扱いたい」と古橋さん。まさに、環境が彼らを新たな生き方に導いたのだ。

manufact jam
木工作家・古橋治人さんが手がけるキャンドルホルダーやカトラリーに加え、全国からセレクトした生活用品が並ぶ。店の奥にはニワトリが行き来する、のどかな工房。
東牟婁郡那智勝浦町湯川1085
http://manufact-jam.com

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