国益がぶつかる温暖化交渉の舞台では、「途上国」扱いの中国が巧みに主導権を握りつつある。

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 地球温暖化問題は経済問題であり、地政学的な問題でもある。筆者は経済産業省で温暖化国際交渉に関与し、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)に過去19回出席してきた。その経験に照らせば、地球温暖化交渉は各国の国益が正面からぶつかる武器なき経済戦争であり、温暖化を巡る国際政治の中で最もうまく立ち回っているのは中国である。

 中国は世界最大の排出国、石炭消費国、石炭火力発電国である。にもかかわらず、「地球温暖化対策の進展を遅らせている国」に環境NGOが贈る「化石賞」を日本が何度となく受賞している一方、中国が化石賞を受賞した事例は聞いたことがない。

 人権NGOは中国から追放されているが、環境NGOと中国政府の関係はすこぶる良い。中国が世界最大の再生可能エネルギー技術生産国、再エネ電力発電国でもあり、中国製の安価な太陽光パネル、風車、バッテリー、EV(電気自動車)は世界市場を席巻しているからだ。

石炭火力を“輸出”

 日本を含む先進国が遮二無二推進してきた再エネ導入の恩恵を最も受けたのは中国であろう。近年、米国や欧州はアンチダンピング関税、相殺関税、不正競争調査などで中国産品の流入を制限しているが、その分はアジア、アフリカ、南米などの市場に流れていくだけであろう。2023年のCOP28において世界の再エネ設備容量を30年までに3倍にするとの世界目標が設定されたが、これは中国製再エネ産品に市場を保証したようなものだ。

 石油の中東依存や天然ガスのロシア依存はエネルギー安全保障上の脅威であるとされている。中国はクリーンテクノロジーの市場支配を強めているのみならず、クリーンテクノロジーに不可欠な重要鉱物の精錬プロセスにおいても圧倒的なシェアを有している(図)。更に今後の重要…



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週刊エコノミスト

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