イタリアの南部バジリカータ州にある「カステルサラチェーノ」。ナポリから車で2時間ほど、人口1000人ほどの小さな町です。この町では今、過疎化に対抗しようと、持続可能な観光のベンチマークとなることを目指して変革が起こっているといいます。その秘策は、「橋」と「若者」にありました。
山岳渓谷を結ぶスリル満点のつり橋
カステルサラチェーノは、「ポッリーノ国立公園」と「ルカーニア・アペニン山脈ヴァル・ダグリ・ラゴネグレーゼ国立公園」に挟まれた山間部の町で、有名な観光地では味わえないローカルな本物の体験を求める人々にとって最も魅力的な目的地の一つです。
カステルサラチェーノの町並み
狭い路地や石造りの家々には、南イタリアの農村生活の様子が垣間見えます。この町の歴史は、中世にさかのぼり、「ンデンナ」という木祭りなど、ユニークな伝統が現代にも残っています。町の歴史地区では、職人の工房や何世紀も前に建てられた教会を散策して、楽しめます。
伝統料理などグルメも欠かせません。伝統的な技法で作られる地元チーズ、手打ちパスタ、生ハム・サラミも味わいたいところです。
つり橋「ポンテ・トラ・イ・ドゥエ・パルキ」は町の宝石としても名高い
2021年、町の新たな名所として長大なつり橋「ポンテ・トラ・イ・ドゥエ・パルキ」が開通しました。山岳渓谷を結び586メートルの長さを誇るこの橋は、スリル満点! バジリカータ州の豊かな自然を体験できることもあり、冒険好きな旅行者やサステナブルツーリズムを求める人々にとって、欠かせない目的地になっています。
ほかにも、トレイルや、ハイキング、マウンテンバイク&サイクルツーリズム、と自然を満喫できる旅の場所としても、魅了される人が多いといいます。山岳風景や時が止まったような静寂な雰囲気は、どこか日本の山間部の村にも似て、自然への敬意が日常生活と融合して、心を落ち着かせる理想的な隠れ家のようです。
若者が活躍する「再生の物語」にも注目
歴史と豊かな自然――魅力あふれるように見えるこの町ですが、じつは衰退の問題を抱えていました。過疎化に対抗し、この地域を再び「住み、働きたくなる場所」として魅力あるものにしようと、内陸部における持続可能な観光のベンチマークとなることを目指す取り組みを行っています。
スリル満点な「ポンテ・トラ・イ・ドゥエ・パルキ」橋
転機となったのが、「ポンテ・トラ・イ・ドゥエ・パルキ」橋の開通でした。この橋はイタリア各地から多くの観光客を呼び寄せ、年間平均15,000人が訪れています。さらに新たな雇用機会も生み出され、17人の若者に仕事も提供しているといいます。
カステルサラチェーノを訪れる理由は橋だけにとどまりません。現在町では、エコ・グランピングやデザイン性の高い分散型ホテルなど、宿泊施設の整備が進められています。また、若手建築家やデザイナーを対象にした国際公募も近く実施される予定です。
カステルサラチェーノには、様々な背景を持つ若者が暮らしています。休暇で訪れたこの町に魅了され、そのまま移住を決意した人や、ローマから移住し、この地域の文化遺産と環境を保護する活動をしている人、大都市でのキャリアではなく、この町での生活を選んだ人も。国際的な経験を積んだエンジニアで、故郷に戻ってバジリカータ州の伝統的な農産物の魅力を広めるプロジェクトに携わる人もいます。
彼らは単なる観光客ではなく、地域再生の主役として期待されています。
DMOチーム
こうした動きから、カステルサラチェーノは、もともとの観光資源だけでなく「再生の物語」でも訪れる人々を魅了しています。若者たちが主導して観光戦略を立案・実行するカステルサラチェーノの観光管理組織は「最年少のDMO(デスティネーション・マネジメント・オーガニゼーション)」と呼ばれています。
さらに、持続可能な地域開発とデスティネーション・マーケティングの推進者であるエマ・タヴェリ氏がDMOにコーチとして加わり、持続的な学びの場としても発展させ、各方面の専門家とも協力する計画だといいます。
内陸部の衰退に歯止めをかけ、地域再生の新たな道を切り開こうとするカステルサラチェーノ。自然や歴史、グルメと、魅力満載の小さな町の今後にも、注目です。
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