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2025.03.06 15:24
塚本直樹、田中好伸(編集部)
国際宇宙ステーション(ISS)に滞在している宇宙飛行士たちは、ISSがすでにその役目を終えたとするSpace Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)のElon Musk(イーロン・マスク)氏の主張に異議を唱えている。海外メディアのSpaceNewsが報じた。
Musk氏は2月20日にX(旧Twitter)で「ISSはその役目を果たし終えた」と発言。「追加の価値はほとんどない。可能な限り早く起動離脱(デオービット)すべきだ」とし、2年以内の退役を提案した。NASAは2030年までの運用を計画している。
It is time to begin preparations for deorbiting the @Space_Station.
It has served its purpose. There is very little incremental utility.
Let’s go to Mars.
— Elon Musk (@elonmusk) February 20, 2025
米国時間3月4日に軌道上で開かれた記者会見でNASA宇宙飛行士のSuni Williams(スニ・ウィリアム)氏は「私はむしろ、今がISSの最盛期だと考えている。電力も設備もすべて稼働していて、研究が活発に進められている」と述べた。「このステーションを最大限に活用し、納税者の利益を確保するとともに、国際的なパートナーシップの義務を果たすべきだ」
Butch Wilmore氏は、Musk氏が最近主張した「昨年秋、バイデン政権に2人の早期帰還を提案した」ことについて「政治的な影響は全くない」と述べた。ほかのISS滞在クルーも同じ考えとWilmore氏は説明した。
Williams氏とWilmore氏は、米Boeingの宇宙船「Starliner」の有人飛行試験(CFT)としてISSに搭乗。Starlinerに2人を乗せて帰還するのはリスクがあるとNASAは判断。2人は、ISSの宇宙飛行士送迎ミッション「Crew-9」で帰還することになった。そのため、当初1週間前後の予定だった2人のISSでの滞在期間は9カ月となっている。両氏はもともと万一に備えて長期ミッションの訓練をしていたという。
Wilmore氏は、早期帰還をホワイトハウスに提案したというMusk氏の主張について「事実としか言いようがない」と発言。「何が提案され、何が提案されなかったのか、誰に提案されたのか、そのプロセスはどうだったのか。それは単に我々が持っていない情報だ」(Wilmore氏)
Williams氏とWilmore氏を昨秋に早期帰還させるようホワイトハウスに提案したという主張を裏付ける証拠をMusk氏は示していないとSpaceNewsは指摘している。
当時NASA副長官だったPam Melroy氏は、Musk氏がホワイトハウスに提案したことは知らなかったとBloombergに語っている。Bloombergは、早期の救助活動の試みが当時の大統領であるJoe Biden氏が率いるホワイトハウスが阻止したというMusk氏の主張に疑問を投げかけるものとなったと表現している。
ISSに滞在しているWilliams氏とWilmore氏を予定より早く帰還させるというMusk氏の申し出をNASAが「きっぱりと拒否した」とXに2月21日に投稿。「彼らはTrump氏を支持する人物に対する好意的な報道を望んでいなかった」
Price was never even discussed! They flatly refused. We would have made it work within the annual budget.
The real issue is that they did not want positive press for someone who supported Trump.
That’s it. End of story.
— Elon Musk (@elonmusk) February 20, 2025
(出典:Elon Musk氏公式Xアカウント)
Melroy氏は、仮にMusk氏が申し出について誰かと話しても、それはNASAの幹部ではないとBloombergに話している。「彼が誰と話したのかは分からない」「Bill(Nelson氏、当時のNASA長官)でも私でもない。上級幹部でもない」
Melroy氏はホワイトハウスはNASAの意思決定に介入しないことが多かったとBloombergに語っている。「ホワイトハウスは、安全に関する決定を我々に任せ、NASAの専門家に任せることに非常に積極的だった」
NASA長官だったNelson氏は、Williams氏とWilmore氏を乗せずにStarlinerを帰還させるというNASAの決定に政治は関係していないと2024年8月に発言している。Musk氏は当時のBiden政権との関係が対立を深める中で、なぜNASAに提案を持ちかけずに、ホワイトハウスに申し出たのかを説明していないとSpaceNewsは指摘している。
記者会見に参加した3人。(左から)Butch Wilmore氏、Nick Hague氏、Suni Williams氏。記者会見はCrew-9がISSから離れる前に3月4日に開かれた(出典:NASA / YouTube)
関連情報
記者会見動画
SpaceNews
Bloomberg
