【ソウル=依田和彩】北朝鮮が30日、短距離弾道ミサイル十数発を発射したのは、在韓米軍や韓国軍の基地を打撃する能力を誇示する狙いだったとみられる。27日に軍事偵察衛星の打ち上げに失敗した後、韓国に対する挑発行為を強めている。 十数発の短距離弾道ミサイルは30日午前6時13分頃、首都平壌の北部からほぼ一斉に発射されたとみられ、日本海方向に約350キロ・メートル飛行した。韓国に向けて発射すれば、米韓両軍の主要な基地が射程に収まる。多数のミサイルが同時に飛来すれば米韓の対空ミサイルでも迎撃は難しくなる。ソウルで30日、資料映像で北朝鮮のミサイル発射を伝えるニュース画面=AP 韓国軍では、飛行の特徴などから北朝鮮が「超大型ロケット砲」と呼ぶミサイルとの見方が出ている。北朝鮮が戦術核兵器として開発したもので、3月と4月にも発射訓練を行った。
韓国軍によると、北朝鮮はミサイル発射の約1時間半後の30日午前7時50分頃、海上の軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)の北側から黄海に向け、全地球測位システム(GPS)の妨害電波を発信した。 NLLに近い韓国の離島周辺の海域で操業する漁船の航行をかく乱して緊張を高める狙いとみられる。聯合ニュースによると、仁川沖合を航行中の旅客船と漁船が使用するGPSが一時誤作動を起こしたことが確認された。GPSの妨害は29日にも行われたという。 北朝鮮は28日から、ゴミや汚物の入った袋をぶら下げた大型風船を韓国に向けて飛ばした。韓国軍などによるとソウルを含む韓国各地で200以上落下した。ソウルの韓国外交省庁舎や在韓日本大使館が入居するビルの屋上にも落下した。
金正恩(キムジョンウン)
朝鮮労働党総書記の妹の
金与正(キムヨジョン)
党副部長は29日、韓国在住の脱北者らが北朝鮮に向け、反体制ビラを風船で飛ばしたことへの対抗措置だと主張した。
韓国統一省の当局者は30日、一連の挑発行為について「偵察衛星の打ち上げ失敗で面目を失った正恩氏が、失敗を挽回するため緊張を高めようとしている」と分析した。