定額減税について講師の説明に耳を傾ける県内企業の担当者ら(21日、横浜市中区で)定額減税について講師の説明に耳を傾ける県内企業の担当者ら(21日、横浜市中区で) 政府が経済対策の目玉に据える「定額減税」が6月から始まる。所得税と住民税の減税で消費拡大につなげる狙いだが、県内でも実務を担う企業や自治体の担当者には煩雑な事務作業の負担がのし掛かり、対応に苦慮している。(井美奈子)

 「6月以降に入社、退社する人は減税対象ですか」「来年以降はどう対応するのでしょうか」 定額減税のスタートを前に、県中小企業団体中央会が21日、横浜市内で開いたセミナーには県内企業の税務担当者ら約40人が詰めかけた。終了後も質問の列ができ、参加した男性の一人は「まいった、ややこしいですね」と頭を抱えていた。講師を務めた平塚市の税理士、近藤多賀志さん(60)は「広報も不十分で準備期間も短い。定額減税が始まることすら知らない企業もあるのでは」と心配する。 定額減税は昨秋、岸田首相が税収増の還元策として打ち出した。6月以降、納税者とその扶養家族について、1人あたり所得税3万円、住民税1万円を減税する。納税額が少なく、減税しきれない人には差額を1万円単位で現金給付する仕組みで、給与収入が2000万円超の人は対象外だ。 住民税や所得税の非課税世帯には、1世帯あたり10万円を給付し、子育て世帯には18歳以下の子供1人あたり5万円を上乗せする。減税に給付を組み合わせ、低所得者の生活を下支えする。 企業は6月1日以降に支給する社員の給与や賞与から、天引き(源泉徴収)される所得税について減税分を差し引く。引き切れない場合は翌月以降に順次、繰り越す作業が発生する。政府は減税を実感してもらうため、企業には減税額を給与明細に明記することも義務付けている。 県中小企業団体中央会の担当者は、「今春は運送業などでの残業時間の規制強化が始まり、インボイス制度の導入後初めての納税時期でもあった。6月は賞与支給のタイミングが重なり、企業担当者の負担は膨大だ」と話す。 住民税を徴収する自治体も準備に追われている。納税者の年収や扶養家族の居住地確認、減税しきれない対象者の把握や給付などの事務作業の負担が生じるためだ。納税者が会社員、自営業者、年金受給者かによって、減税の時期など実施方法が異なることも作業を複雑化させている。 県内のある市では、通常なら1年以上かけて準備を行う税制システム改修を、減税開始に間に合わせるため、昨年末から半年弱の急ピッチで完了させた。市の税務担当者は「通常の業務と並行しながら、ギリギリで準備を間に合わせたが、効果はどの程度あるのだろうか」とこぼした。

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