岩城滉一が26年ぶりに映画で主演し、市井の高齢男性に
扮(ふん)
した「ラストターン 福山健二71歳、二度目の青春」が公開中だ。直近の出演作「
土竜(モグラ)
の唄 FINAL」で演じたヤクザの会長役に象徴されるような、世間に浸透するワイルドなイメージとは正反対の役柄。だが、「今、やっておかないといけない」と感じ、挑戦したという。(松田拓也)
福山健二(岩城滉一、右)は市のコミュニティーセンターで出会った橋本(田山涼成)と友好を深めていく福山健二(岩城滉一、右)は市のコミュニティーセンターで出会った橋本(田山涼成)と友好を深めていく 福山健二(岩城)は定年退職後、認知症を患った妻(宮崎美子)に先立たれ、一人静かに暮らしていた。最近では物忘れに不安を覚え始め、息子家族らに迷惑をかけずに余生を過ごしたいという思いも強まるばかり。そこで健康維持のため、市のコミュニティークラブに参加、社交的な橋本(田山涼成)と知り合う。

 30代の記者が、将来の親との関わり方について考えさせられたという感想を伝えると、「年寄りだけのための映画ではなく、若い人も『ああ、親ってこんな気持ちなんだな』というふうに感じるところもあるはず。何か考えるきっかけになれば、それはそれで、すてきなことだと思う」。しみじみと語った。 一方、「今でもバイクに乗るし、レースにも出ている」というように、自身の活発なイメージとはギャップのある健二を演じる上では、意外にも「役作りなんていう、バカなことは何も考えなかった」。もし妻が先に亡くなってしまったらどれほど悲しく、大変なことになるのだろうか。久万真路監督の脚本を読み、そんなことを想像した上で、撮影に臨んだという。近しい人物から「なぜ、じいさんの役をやるのか。格好良くない」と言われたという。「本当の男の格好良さを知らないヤツらがモノを言う時代で、だからやぼったいんだ。人間、哀れな時の格好良さもある」と言い切る=安川純撮影近しい人物から「なぜ、じいさんの役をやるのか。格好良くない」と言われたという。「本当の男の格好良さを知らないヤツらがモノを言う時代で、だからやぼったいんだ。人間、哀れな時の格好良さもある」と言い切る=安川純撮影 「皆さんが抱くイメージは、俺にとってはすごくダメージなんだ。周囲からはむしろ、今回の映画を見て『普段と変わらないね』と言われるぐらい。だから俺たちの商売は飽きられずに長くやっていけるのかな、とも思うんだけどね」 健二は橋本と友好を深めていくうち、水泳教室に誘われる。全く泳げない健二だったが、橋本の「出来ないことを出来るようになるのは愉快じゃないですか」との言葉に背中を押され、参加を決断。夢破れた若きコーチと出会い、次第に水泳に打ち込んでいく――。 演じた当時は、健二と同じ71歳だった。「これがもし80歳のタイミングだったら、もう少し元気のいい映画に出ている。あまりに年がいっちゃうと、悲壮感が出てしまうから。今が旬だと思った」と引き受けた理由を明かし、「寂しいけれどもう一回、頑張って生きていこう、という映画が出来た」と手応えを語った。 来年で俳優デビューから50年。「残り少ない人生だから、生かされている間は一生懸命やっていきたい」と意気込む。「またタイムリーな作品の話が来たら、監督とケンカしながら、ホン書き屋さん(脚本家)とも『これ、違わないか?』とか話しながら、やれたらいいなと思うけれどね」